No.13
北側の町には小さな山がある。
そこにはオレンジ色の大きな城が建っている。
カールに聞いたところビクラム城という名前らしい。
今は城を掃除する使用人しかいないらしいく、
所有する貴族も年に数回帰ってこないだそうだ。
その際有名な冒険者や、お抱えの騎士をつれて転々としているらしい。
街の外の貴族と交流を主にしているが、
周辺に増えすぎた魔物を間引きできるといった利点もあるようだ。
ゾクゾクと男心をくすぐるお城に見惚れながら、
目的地の水辺に行くため、北側の検問所をくぐる。
北側検問所はあまり人通りが少ない。
道は馬車が通れるようにと、お気持ち程度に舗装されている。
遠くに見える、水鏡のように煌めく湖に向かう途中、
視界の端になにかがうつるようになった。
時折森の中から動物が様子を伺いにきていた。
鹿やリスなど、小動物たちがチラチラと木々の中から顔を出しては隠れる。
僕に興味が湧いたのか動物たちはゆっくりと追いかけてきていたのだ。
僕が立ち止まるとあの子たちも警戒するように立ち止まる。
楽しくなっていった。
かわいいな~と、のほほんと顔をだらしなく崩していると目的地の湖についた。
湖を見てみると、最初はなにもいないようにも思えた。
しかし、ゆらゆらと上下に小さく揺れる湖のほとりに、プカプカとクラゲのように浮かぶものがあった。
「あれは、スライムだよね?」
そこらへんに落ちていた木の枝で突こうとする。だが、当たる直前で水の中に潜ってしまった。
やはり本物のスライムだった。
逃げちゃった。そう思っていたら水面に影がうつった。
スライムが再び水上に姿を現した。
音を立てずにゆっくり泳ぎはじめる。
スライムは陸へ上がって来た。
ドプンドプンと、風船に入った重たい水を引きずるような音を鳴らして近づいて来る。
慌てながら剣を抜くが、
スライムがのそのそとした動きで這ってくる。
意外と可愛いかもしれない。危険な魔物だけど、これは憎めないな。と、思っていたら、急にその場で固まってしまった。
スライムは変な動きを始めた。
スライムは柔らかい体をドンドン圧縮していく。
後ろのお尻だと思われる場所を大きく上げる。
それはまるで獲物を捕らえようとする…、
「猫みたい」呟いた。
ドボンと水の跳ねる音を鳴らす。
加速しながら勢いよく飛びかかってきた。
半身で、スライムの攻撃を避ける。
刃を滑らすよう、すれ違いざまに斬った。
バシャーンと水風船を割った時のような音がした。
スライムは一撃であっけなく倒れてしまった。
「ふぅ…で、これが魔石でいいんだよね」
スライムからは黒寄りの青色の石が採れた。
これが依頼達成に必要な魔石というものらしい。
「一撃で倒したし、あんまり強くないのかも?」
案外、何とかなりそう。もしかすると楽勝かもな~。
ほんとはもう少し厳しいと思ってた。
昇格に必要なら、辛い依頼かと思って身構えたよさ。
__バシャバシャ! 音は湖からだった。
みると思わずゾッとする光景があった。
およそ20匹のばかりのスライムの塊が、ウヨウヨとここに向かっていた。
「わぉ…多すぎ」
というか、全員なんとなく顔つきが違う。
スライムも人間のように容姿に違いがあるのか?
それとも種類が違うとかか?
いや、たぶんそれはないだろう。
ギルドから聞いた話では、スライムはナワバリ意識が強いと魔物だと聞く。ナワバリに入るやつは容赦なく叩きのめすそうだ。
であればきっと、種族が違うスライムが入ろうとすればミンチになるだろう。やっぱり見た目が違うだけで同種なのかも。
「お、おっとっと…!」
のんびり考え込んでいるとこを、スライムは一斉に襲い掛か って来た。
自分もミンチにされないように、一対一を意識する。
予想どおり、怪我を負わず倒しつくした。
少し疲れながらスライムから落ちた魔石を拾っていると、
木々から顔だけを覗かせていた動物たちが一斉に駆け寄って きた。
僕に寄ってきてる?
モフらせてくれるのか!
と思ったら、倒したスライムの体液をなめた。
水かも分からないものをチロチロと舌を出して舐めていた。
僕も思わず固まった。
魔物だったものをペロペロと舐めて大丈夫なの?
魔物になったり、体調を崩さない?
そう心配していたが、体調を悪くしたり、いきなり魔物になってしまう事はなくて一安心しながら見ていた。
動物たちに癒された後は草食型の魔物を倒すべくその場から離れた。
湖のほとりに沿って適当に歩いていると案外早く草食型だと思われる魔物に出くわすことができた。
見た目は恐竜で、だいたい2メートルぐらいの体に羽毛がついており、細い足と長くしなやかな尻尾がゆらゆらと揺れている。
その姿はまるで、前足と尻尾がある。
ダチョウだった。
のんびりと湖の水をゴクゴクと飲んでおり、気づかれないようにして背後へ回り込むのだった。
そーっと足音を消してもう少しでという所で、ポッキっとした音がし、足元を退けてみると長い枝が折れていた。その音は決して大きいものではなかったが目の前の恐竜には十分響く大きさだった。
心臓の鼓動がドキドキと早くなり、こちらへトカゲのような顔を向けてきた。
「キュアー!キュアー!」
甲高い鳴き声をそこら中へ響かせて僕へと威嚇してきた。鋭い爪を地面に食い込ませ、羽を大きく広げた。
ダチョウに見られない草食動物の歯が見える。
口を大きく開けて交戦の意を示した。
飛びかかってくるかもしれないことを予想して、半身になりながら剣を下げて構えた。
威嚇にビビッて逃げられたら困るからね。
できるだけ早く倒したい。
甲高い声を出しながら二本の短くて鋭い前足を構え、鋭い爪を持つ足で飛び跳ねる。
焦らず剣で相手の攻撃を受け流す。そして相手の背後を取った。
だが、ダチョウは体を黄色に変化させると、羽根を飛ばした。魔法をつかったのだ。
とっさに木の後ろへ逃げ込むが、一向に止む気配はない。
木や地面には羽根が刺さって、まるで生えているかのようになっていた。
約10秒、羽根を飛ばす攻撃を耐えているとようやく止まった。
攻撃が止んだ瞬間、手にもっていた泥団子をなげる。
ダチョウを挟むように、左右に一つづつだ。
【視界遮断】
そして中央にいるダチョウにスキルを放つ。
ダチョウに命中する。
体が大きな相手に正々堂々と戦う気はない。
だから先に目を潰した。
「キャーキャー!」と、いきなり目が見えなったことにダチョウは驚いていた。
そんな状況でも敵を仕留めるために尻尾をブンブンと振りながら、どこに敵がいるか足音を聞こうとしていた。
大きく振り回す尻尾に向けて剣を振り下ろす。
切り落とすとまではいかないかもしれない。だが、力一杯剣を振り下ろした。
ズパンッと音と共に、予想よりも柔らかい尻尾を斬り落とす。
しかしその直後、体が緑色に光り出した。
すると、傷ついた尻尾を癒した。
血が止まり、傷口を塞いだ。
そして再び、目がまた見えるようになってしまった。
口から漏れ出す呼吸が落ち着き、威圧感が増した。そして目が血走り始めた。
だが今までとは違いスピード感が無くなり、動きが鈍くなっているのは誰が見てもわかるほどだった。
オーバーヒート。
恐竜は魔法のつかいすぎて熱暴走を起こしていた。
動きが鈍くなってるのには僕もすぐに気が付いた。
こっちに意識が完全に向いていないうちに飛び出す。
敵が気付いた時にはもう剣を振り下ろしていた最中で、すでに避ける時間はなかった。
「はあぁあ!」
鋭い剣が風を切る音を出しながら、頭を斬り落とす。
ダチョウはその大きな体をドサリと音を立てながら倒れるのだった。




