No.12
早朝。
まだ日も登らない時間に、アニエスは起きた。
今日はギルドに行く予定があった。
アニエスは眠たい目を擦りながらゆっくりと起きはじめ、今日から依頼を受けに行くために宿屋の食堂で、パイや野菜の多めの食事を食べて宿屋を飛び出した。
ギルドへ行くとすでに冒険者が中で集まっており、何やら少し大きな紙が貼られているのを大勢の冒険者が見つめていた。
何事かと近づいてみると冒険者が困ったように話していた。
「南側の森にマンティスが出たのか~、これじゃ他の狩場に人が集中しすぎて大変なことになっちまうよ」
「山岳方面は人はあまり来ないが、如何せんあそこは魔物が強いもんな~…」
でも仕方ねーよなー、と残念そうに話していた。
昨日の検問所のおじさんが偵察をさせると言ってたが、本当にすぐ送ったのだろう。
仕事が速いおじさんだ。
山岳方面は危険らしいし、あっちの森もだめだからどこかいいとこがあるだろうかと掲示板に歩き出した時、受付のお姉さんから呼び止められた。
「やっほ〜アニエスちゃん!覚えてる?」
「おはようございます、リアさん」
「うんうん、おはよう。ちゃんと覚えててくれたね、ところで今時間空いてる?」
「…そうですね、今は大丈夫だと思います」
「おーけー!実はね、私の上司がアニエスちゃんと話をしたいって言うの」
なんと、ギルドマスターから直接会って話があるそうだ。
しかも、もしかしたらとってもいい物も貰えるかもしれないという話もでてるらしい。
どうしてだろか。まあとりあえず行くしかないみたいだし。
もしや、とっても面白いことが待ってるかも。
「今から会う人は優しい人だから安心して大丈夫よ?
頑張ってね!」
リアさんは満面の笑みを僕に向けると、手を繋ぎながら誘導された。
上の階へ続く螺旋階段を上り、立派な扉の前に立つとリアさんがゴンゴンとノックをした。
すると中から図太い男の声がして、中に入ってもいいと返事が聞こえるとリアさんは扉を開いた。
キョドりながらリアさんに続いて中に入った。
少しオドオドしながらギルドマスターがいる部屋へ入る。
「わぉ」
固まった。
中にはライオンがイスの上に鎮座していた。
いや、正確にはライオンの顔をした人が普通に座っていたのだ。
僕はドアの目の前で固まっていた。
「こら入れ。別に取って食ったりはせん」
座れ、そう着席を促された。
僕は大人しく座る。きっと誰からみてもカッチコチだろう。
ライオンの顔をした人は困った顔で見てきた。
「この町のギルドマスターをやっているロードだ、よろしく」
「ッ!…アニエスです、よろしくお願いします」
ここに来る途中、偏見だがギルドマスターだからきっと逞しい体つきの人だと予想はしていた。
けど、まさかの獣人でライオンだとは思わなんだ。
ロードがリアさんに仕事に戻っていいぞと言い、リアさんはすぐに部屋から立ち去った。
この状況にやっぱり食べられちゃうじゃと思っていると、なにやら机から紙を取り出して見せてきた。
「このマンティス出現の紙をみたか?君がマンティスがあの森に出たと連絡が来たときは驚いたよ。新米冒険者がマンティスを倒したことを含めてね」
あのおじさんは僕がマンティスを倒したっていうことも報告したようだ。本当に真面目な人だ。
「今回はその件について呼び出した」
そういうと机の上に、青色のプレートを見せてきた。
「これはⅮランク冒険者が持つことができるギルドカードだ。これを君に上げようと思ってるんだが、一応マンティスを倒したか確認したくてね」
【収納】のスキルを持ってるって聞いたんだが一回見せてくれと言われた。
【収納】ではなく【黒箱】なのだが。
そのことは無闇矢鱈に教えない方がいいだろう。訂正はしなくてもいいはず。
「本当にマンティスのようだな」
ぐっちゃっとしてて気持ち悪い。
けど、中で腐って無くてよかった。なんか嫌な言い方だけど、まだ新鮮。
「もういいよね?」
「あぁ」
ほんの少し見たらすぐに直していいと言われた。
どうやらライオンでもカマキリは苦手らしい。
僕も苦手だ、一緒。
「今日、ほんとうはギルドカードを渡す予定だったんだがな、すまんが今は渡せない」
「ギルドカードは貰えないというですか?」
「今はまだな。とりあえず仮カードを渡しておく」
「ありがとうございます」
「で、渡したいと思うんだがな」
聞いてみると、一つ条件があると言い出した。
まだ最近冒険者になったばかりの奴が、依頼の一つも達成しないでⅮランクにするのかとギルド内で議論があったらしい。
依頼についてはギルドからの直接的な依頼で、マンティスを倒すための材料を取ってきてもらいたいとのことだった。
あまりギルドに在庫が無くて困っていたと同時に、
じゃあついでに任せちゃおうっ!といった提案がされてそれに決められたみたい。
依頼の内容は、マンティスが出た森とは反対側の水辺にすむスライムと草食動物型の魔物を一匹でもいいから倒して納品するというものだった。
「いつ町のほうに襲ってくるかも分からんからできれば今日中に向かって欲しい。決して難しいものでもないが、気を付けていってくるんだ」
「わかりました」
無理はするんじゃないぞ、と言って入り口まで見送ってくれた。
ロードが善意で見送ってくれるのは嬉しいのだが、他の冒険者にジロジロと変な目で見てくるのは勘弁してほしかった。
ちなみに今持ってたマンティスは一階の解体場でお金に換えてもらった。
正直真っ二つになったカマキリをずっと持ってるのもなんだし。
僕は換金してからギルドを離れた。




