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No.11


すでに自身が泊っている宿屋に帰り、買った鎖帷子を出窓の空いたスペースに置いて、剣を壁に立てかけベットに腰を下ろした。


それにしても今日は頑張った。

魔物の討伐は命からがらだったけど、まだ命はある。

服と身体はぼろぼろになりはしたけど、まだまだ精神的には余裕が残ってる。


そうだ。明日は依頼を受けに行こう。


優しい匂いのするブレスレットを優撫でながら掛け布団の上へ大の字に、んーっと体を伸ばしながら寝っ転がりながら大きく息を吐いた。「ふぅ」とちょっとの昂りを吐きだす。


一気に眠気が僕を襲い、瞼は重くなりだした。だんだんと意識が遠のくのがわかる。遠くより響く陽気に声が、遥かに、ぼんやりと霞んで行く。

僕はようやく、そこで意識を手放した。


➖ー➖ー➖


真っ白な空間にいた。突然のことではあったが、何となくそれが何処なのか理解する。

昨日とは違う。それでも、エスの世界だろうと思っていた。


「やっほっ!」


予想通り、近くにエスが現れた。実に、心臓に悪い登場は勘弁だが、おちゃめにみえて可愛さがそれを圧倒した。


「今日は随分と色んなことがありましたね。カマキリと戦ってるときは思わず応援しちゃいましたよ!」


とうとう、と言いながらカマキリの真似をする様子は、とっても子供っぽくて癒される。それが、エスなのだろう。

もう半日前の話なのに、いまだ熱が冷めない様子で話しかけてきた。


「まさかいきなりあんなのと戦うとは思わなかったよ」

「そうですね、私も強そうなカマキリが見えた瞬間さすがに肝が冷えました。でも無事でよかった、かっこよかったですよ」


思わず困ったように笑ってしまった。昨日「大丈夫なはず!」って言っていたことは覚えているけれど、エスを責め立てようとは思わない。


最後の決めポーズが決まってくれればもっとカッコよかったんですけどね~と言われた。

これには思わず顔を真っ赤にしてしまった。

やっぱりみていたようだ。


「そう言えば聞いてた?検問所の人の話」

「カマキリですか?」

「うん」


カマキリで思い出したけど、実はあんまり想像したくないことを聞いてみる。


「検問所の人は群れを作って行動するって言ってましたもんね。あのカマキリははぐれちゃったんですかね?」

「たぶんそうかも、何かの偵察って感じじゃなかったみたいだし」


やっぱりエスも、その事について考えていたみたいだ。


「そうですね、あっちの森は一時近づかないほうがいいですね、はぐれだとしてもかなり町の近くに来てるのは間違いないですから」


でも冒険者として依頼をクリアしにも行きたいですし、困ってしまいました。早くチートな能力を手に入れて、なにかやっちゃいました?というのを見てみたいです!

と変なこと言う。僕に変なことを求めないでほしいと笑う。


「そういえば、カマキリを倒したらJobのレベルが上がったんだけど普通のレベルが上がららなかったんだよね」


まだ解放はできないの?と今日明日で解放できないと思いながらも聞いた。


「実はもうすでに解放はできるのですが、同時にスキル選んでもらいたいのですよ。

ですが、これがまた変なものばかりでアニエスちゃん自身に選んでもらおうと思いまして...」

「スキル?」

「はい。どうぞ」


そういうとスキル何個か並んだものが見ることができる画面を見せてきた。


スキルを見る。


【疾風怒濤】(バーサーカー)発動したら永遠に理性を失い暴走するが、ステータスを20倍も上昇させる。


【百発百中】(ホーミングマジック)魔法で攻撃をすればどこに飛ばしても必ず命中させる軌道で飛んでいく。持続時間はレベル10ごとに1秒ずつ増える。現在最大持続時間5秒。


【一刀両断】(クロススラッシュ)自分よりステータスが低く対象に、確実に倒せる斬撃を放つ。


最初のスキルは絶対に取らないな。

ステータスを数倍にできるのは確かに強くて魅力的だ。

だが理性を失って暴れまわり、同じ人間に討伐される未来しかみることができない。

で、僕はザ・エンドってね。


次に百発百中は魔法の攻撃をすると敵に必ず命中する軌道を飛ぶというかなり強そうなスキルで適当に撃つだけでフェイントかけることができるが、レベルが上がってない僕が使おうとしても正直持ってたところで意味はないような気がする。


牛刀割鶏はステータスが低い相手に、一撃で倒せる攻撃を出すことが出来るらしいが、この差がどれくらいの基準で設定されてるのかは詳しく書かれていない。


どれにしたらいいだろうかと僕は悩みに悩んだ末に【百発百中】を選ぶことにした。


最初は牛刀割鶏が一番強そうだと思ったが、ステータスにどれくらいの差があれば発動できるのかも分らないし、それが落とし穴にしか見えなかったのだ。


「【百発百中】にするよ、闇魔法と相性がいいかもしれないし」


適当に撃っても追尾して対象に当てることができるのならば、ブラックアウトのような遅い攻撃でも防がれたり急に避けられない限りあまり弱点が少ないスキルだと思えた。


エスはわかりました。手を出してくださいと言う。

すると、今度は赤色の光がエスから出てきて僕の中に吸い込まれていくのだった。

まあ相変わらず近づいてくると真っ黒になるのだが。


「聞くのを忘れてたけど、代償って何を払ったの?」

「今回払ったのは経験値でした。せっかく倒したカマキリの経験値がリセットすことになってしまいましたが、その代わり念願のレベルが解放することができましたよ」


レベル。

これからはステータスが上がっていくことだろう。



「明日はギルドに依頼を受けに行きましょう、きっと面白いことが私たちを待ってるのかもしれません」


実に楽しみですね~とワクワクとした様子で目を輝かせていた。


「ではまた明日一緒にお喋りだけでもいいのでここに来てくださいね、ここは一人だからちょっと寂しいんですよね~」

「うん、もちろんだよ」


寝ると会えるみたいだしね。

それだったら毎日会うことができるだろう。


そう約束したら真っ白な明るい世界が黒い影に飲み込まれるようにして、僕も夢の世界から姿を消していくのだった。


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