第14話『火葬とこれから』
「ほれ、急ぐんじゃ! もたもたしてると夜が明けてしまうぞい」
戦いが終わった後、血の海になった酒場前を元に戻すべく、村人たち総出で後始末を始めた。
むせかえるような血の匂いをそのままにしておくわけにもいかないし、死体を放っといて腐乱されても困るからだ。
村人は川からバケツリレーで水を運び、舗装された道に付着した血を洗い流している。
その村人の中にはすでにニッキも交っていた。
「うぅ〜、腕がパンパンになってきたっス……」
「ニッキよ、大丈夫かの。交代しながら休み休みでええからのう」
「あ、はいジード村長。でも俺は他の人より余計に働かないといけないスから」
「ふむ、良い心がけじゃ」
「そうだそうだ。こういうところで頑張って地道に村人の信頼を得ろ」
「王子も一緒に運びましょうよ」
「一国の王子がバケツリレーなんて聞いたことねーだろ。俺はやらん」
「一国の王子が大虐殺ってのも聞かないっスけどね……」
「何か言ったか? 口よりも手を動かせ」
「な、何もっ!」
「ジード、薪は集まったか?」
「ええ。言われたとおりに井桁を組み、村中の薪を集めましたですじゃ」
「その薪で死体を燃やして骨にして埋めろ。もしくは川に流してもいい」
「何と……すべて燃やしてしまうのですか?」
「クルト王国では土葬が一般的だろうが、この島と気候も違う。感染症防止の観点から燃やす方がいい」
「分かりました」
村人一番の医者がいなかったことから、ここには医者が一人もいない。
もし罪人たちが何かの病気を持っていたらまずいし、そのまま埋めて腐敗菌が発生するのもまずい。
もちろん燃やすには大量の薪が必要になるが、土壌を介して何かの菌に感染するよりはマシだ。
そんな訳で、バケツリレーで血を洗い流した後は村の隅で火葬を行った。
大きな材木を組んで死体を燃やすのはなかなか見ごたえのある光景だ。
ジードが死者を弔う鎮魂の祈りを捧げ、それを見守る村人はみな神妙な顔をしてる。
「ふぅ……これで何とか済みましたのぉ。もう夜中ですじゃ」
「ご苦労さん」
「後は、村人で交代で行いますじゃ。王子どのは休んでくだされ」
「明日、ジードの家に行く。何か予定はあるか?」
「いえ、予定は特にありませんが……」
「これからの事を話し合いたい。放っといたら罪人たちはまた誰かを寄こしてくるだろうし、その前に手を打たないとな」
「ふむ、確かにのう」
「だから、こちらから向かうのがいいと思う。良い機会だから、相互不干渉の条約でも結んでおこう」
「相互不干渉ですか?」
「そうだ。ネーフェの村は罪人どもに貢ぎもしないし、何の協力もしない代わりに罪人どもの生活の邪魔もしない」
「うぅむ……果たして聞いてくれるものかどうか分かりませんが」
「もうこういうことは終わりにしようぜ。交渉決裂なら、罪人を一人残らず殺すだけだ」
「た、頼もしいですのう」
「本当にやりそうなのが恐ろしいっスね……」
「帰るぞ、ニッキ。さすがに疲れた」
「あ、はいっス」
「ちょうどええ。申し訳ありませんが、エミリアたちも送って行ってやってくださらんか」
「分かった」
今日の夜は大勝利に終わったが、罪人どもとの因縁は始まったばかりだ。
明日に備えてしっかりと体力を回復させておくのが吉だろう。
俺は従者となったニッキを連れ、エミリアたちと共に家へと戻った。




