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経験も装備もだ、士気の面では若干こちらが高いだろう。綿密な地形調査などもしてきているので、そのあたりの情報面でも有利に立てるようにはしてあった。
翌日、伝令がまた駆け込んでくる。顔色が悪いので凶報だと覚悟して聞く。
「報告します、『曹』『大都督』『擁』『涼』『上』の軍勢十万が別に現れ漢中に向かっております!」
「曹真か! 十万……漢中は持ちこたえるだろうが、補給が途絶えるな」
――これほどまでに早く二十万を発してくるとは、魏の国力を見誤ったか……。
動くのは一か月以上先だろうと読んでいたのが、即応してくるのは誤算だった。それを認めて戦略自体を見直す。
勿体ぶっている暇はない、出来ることを次々やっていかねば追いつかない。戦場は加速した。
「楊将軍は元は地方豪族、これを引き抜く。馬将軍、兵一万を預けるゆえ行って参れ」
「御意」
雲南から喪の使者として首都に戻ると留め置かれ、そのまま幕に連なっていた。馬将軍が幕から出てゆく。
南蛮での経験が生きているようで、出征前より使いやすい将軍にと成長していた。
戦争開始から一ヶ月、寝返った三箇所の地方にも動揺が広がる。魏の大軍に蜀軍が負ければ処罰を免れないと。そうなる前に魏に戻ろうという意見が上がってくる。
――このままではジリ貧になる。何とかして敵を討たねばならぬ。