ルール確認と始めてのモンスター召喚
「まずは手札を揃えましょう。リングの宝石に手をかざしてください」
「うん」
説明されたとおり、バトルリングに備えられた宝石に手をかざす。
すると宝石が光り、中からカードが現れた。
「カードが出てきた。これが初期手札だね」
「そうです。バトルのルールはご存知とのことなので、説明は不要ですね」
「うん、大丈夫だよ」
話を聞けばやり方は違えど、バトルのルール自体は元の世界と同じだった。
とはいえこちらに来ての初バトル。おさらいしながら始めよう。
グランデュエラーズは、対戦者が交互にターンを回しながら戦うオーソドックスなカードバトルだ。初期手札は6枚。ライフは5つ。カードを駆使して相手のライフを0にした方の勝ちだ。
「それじゃあ先攻は私が貰うね。スタンバイ、ドローフェイズは無し、と」
ターンはいくつかのフェイズに別れていて、それぞれのフェイズごとに出来る行動がある。
まずは始まりを告げるスタンバイフェイズ。
次に来るのがデッキからカードを引くドローフェイズだ。だけど先攻はドローがないからここではカット。
「チャージフェイズ。私は手札を一枚チャージゾーンに置くよ」
続けてチャージフェイズ。ここでは手札のカードを、フィールドのチャージゾーンと呼ばれる場所に1ターンに1枚ずつ置くことが出来る。ここに置かれたカードは、一部の特殊なカードを除いてカードとしての効果を失い、他のカードを使うためのコストとして参照される。
その時カードの向きは縦向きで、スタンド状態といわれる状態だ。
カードにはそれぞれコストとなる値が設定されていて、コスト1のカードならチャージゾーンにカードを1枚横向きにタップする(寝かせる)ことでコストを支払い使用が可能となる
コスト3なら3枚、コスト5なら5枚と必要な枚数が増えていくわけだ。コストの高いカードを使うには、どれだけ早くチャージゾーンにカードを並べられるかが肝だ。
ちなみに横向きになったカードはレスト状態といってこのターン使用済みであることを示す。次のターンのスタンバイフェイズで再びスタンド状態になるまで使うことは出来ない。
「そしていよいよメインフェイズ! 私は……1コストを支払って、コスト1のピコドラを召喚するよっ!」
そして待ちに待ったメインフェイズ! ここでやっとモンスターの召喚が出来る。
私はチャージゾーンのカードをタップして、手札のモンスターを高らかに呼び出した。
バトルボードの前面、バトルゾーンにカードを置くと、カードが光り、目の前に小型犬ほどの小さなドラゴンが現れた。
・ピコドラ:ドラゴン族 コスト1 AP500
召喚したドラゴンの頭上に半透明のウインドウが現れ、名前とステータスが表示される。
ピコドラはピコピコと音が鳴る短い尻尾を振って、「クワー!」と鳴き声を上げた。
初めてのモンスター召喚に思わず感動してしまう。
「うわあ、うわあ! 私のモンスターが本当に出たよ! すごい! かわいい!!」
私は召喚したピコドラに駆け寄ってその身体に触る。ワニの皮みたいな手触りがリアルに感じられた。いやワニの皮とか触ったことないんだけど、多分こんな感じだろう。
夢中になって背中を撫でる私に、ピコドラはきょとんとした目を向けてくる。そういう反応もしてくれるんだ? かわいい!
「あー、ごほん。聖女様。興奮するお気持ちは分かりますが、バトルの途中であることをお忘れなく」
「ふえっ? あっ、ごめんなさい!」
モランドさんに注意されピコドラから離れる。
見物している人達の中から、クスクスと笑う声が聞こえてきた。笑っていたのはお姫様だった。
「聖女様は意外と可愛らしいお方なのですね」
恥ずかしいなあ……みんなが見てるんだから、浮かれすぎないようにしなきゃ。
「1ターン目はバトル出来ないから、このままターンエンド」
先攻1ターン目にはバトルフェイズが無いので、私はエンドフェイズに入ってターン終了を宣言する。
リセ:ライフ5 チャージ0/1 手札4
《フィールド》
・ピコドラ:ドラゴン族 コスト1 AP500 スタンド状態
これで私のターンは終わり。手番が移ってモランドさんのターンとなる。
「いきますよ! 私のターン! スタンバイ、ドロー!」
モランドさんがバトルリングの宝石に手を翳すと、カードが現れて手札に加わる。なるほど、ドローはああやるんだ。私も早くやってみたい。
「チャージフェイズ、カードを1枚配置! そしてメインフェイズに私はキャットメイジを召喚する!」
モランドさんが召喚したのは、魔女のような三角帽を被った白猫だった。
「猫ちゃんだ! 可愛い!」
くりっとした青い目に、身体に対して大きな帽子がなんともアンバランスで可愛い。撫で撫でしに行きたいけど、またお姫様に笑われたら嫌なのでぐっと堪える。
後で触らせて貰おうっと。
・キャットメイジ:魔導族 コスト1 AP400
猫ちゃんの頭上にもステータスが表示される。
対戦テーブルと違って相手のカードは見えないから、こうして表示されるのは便利だね。
「さあ、バトルフェイズ! といいたいところですが、私のキャットメイジでは貴女のドラゴンには勝てません。ここはターンエンドとさせていただきましょう」
モランドさんもバトルフェイズを飛ばしてターンを終了した。
バトルフェイズではターンプレイヤーが相手フィールドのモンスターか相手プレイヤー自身を選んで、バトルゾーンのモンスターで攻撃することが出来る。プレイヤーへの攻撃が通れば相手のライフを一つ削り、モンスター同士でバトルを行う場合、お互いのAPを比べて勝敗を決める。APの低いモンスターが高いモンスターに破壊されて捨て札となるのだ。
いまの状況だと、私のピコドラの方がモランドさんのキャットメイジよりもAPが高いので、特別な効果でも持っていない限りモランドさんからバトルを仕掛ける利点はない。ピコドラへの攻撃してもやられるだけだし、プレイヤーである私を直接狙っても、私はスタンド状態のピコドラをタップすることで、その攻撃を防御することが出来る。するとモンスター同士の対決となり、結果は同じとなる。
よってここはなにもせずにターンエンドが一番無難な手なのだ。キャットメイジを立たせていれば、次のターン私の攻撃に対しての壁になるしね。
モランド:ライフ5 チャージ0/1 手札5
《フィールド》
・キャットメイジ:魔導族 コスト1 AP400 スタンド状態
フィールドでにらみ合うモンスター達。
低コストの小さなモンスターだから、なんだか可愛いね。