妖精女王ティターニア
エルマ姫との戦いは続く。妖精族モンスターと常駐マジックのコンボで翻弄してくるエルマ姫の戦い方は、ビートダウン型の私のデッキとはちょっと相性が悪い。
気を引き締めて挑まなくちゃ。
そうして迎えたエルマ姫のターン。
「私のターン。スタンバイ、ドロー。……さあ、いよいよお見せしましょう。私のデッキのエースモンスターを」
そういってエルマ姫はカードを高々と掲げた。ついに来るんだ、切り札カード!
「森羅万象を統べる精霊の王よ。その気高き威光にて世界に蔓延る闇を照らせ! 妖精女王ティターニアを召喚!」
エルマ姫のフィールドに現れたのは、雪のように白い肌にきらびやかな純白ドレスを纏ったきれいな女性型モンスターだ。プラチナブロンドのストレートヘアーを靡かせ、柔らかな風と共にフィールドに降り立つ様はまさに王の品格を感じさせる。
一目で今までのモンスターとは別格だと分かるモンスターだった。
・妖精女王ティターニア:妖精族 コスト5 AP2000
コストの割にAPはちょっと低めだ。ブレード・ドラゴンで相討ちが取れる。
だけどエースモンスターというからには、なにか強力な効果があるに違いない。油断は禁物だ。
「いきますよ、バトルフェイズ! サラマンドラでブレード・ドラゴンに攻撃!」
「えっ! サラマンドラで!?」
エルマ姫の行動に私は思わずぎょっとした。
サラマンドラとブレード・ドラゴンじゃAPはこちらが上だ。むざむざやられに来るようなものだ。なにか手があるの?
「ここでティターニアの効果を使用します。1ターンに1度、妖精族モンスターがバトルする場合、相手モンスターのAPを半減させることが出来ます。よってブレード・ドラゴンのAPは半分に。エレメンタル・ディスチャージ!」
ティターニアが手を翳すと、その手のひらから柔らかな青い光が放たれた。ブレード・ドラゴンはその光に包まれ、苦しげに項垂れる。頭上に表示されたAPが2000から1000に下がってしまった。
「ブレード・ドラゴン!」
「これでAPは逆転ですわ。さあサラマンドラ、その燃え盛る炎の牙で、聖女様を守護する竜を討つのです」
サラマンドラは口を大きく開けてブレード・ドラゴンの首筋にかぶりついた。突き立てた牙から炎が燃え上がり、ブレード・ドラゴンは一瞬にして炎に包まれる。
そのまま倒れて光になって消滅した。
「ああっ! ブレード・ドラゴンが……」
「サラマンドラの効果発動! このモンスターが自分のコスト以上のモンスターを破壊した場合、デッキからカードを2枚ドローできます」
バトルリングからカードが飛び出し、エルマ姫の手札に加わった。
なるほど。この効果を使うためにサラマンドラはブレード・ドラゴンを攻撃したんだね。本来なら返り討ちにあうスペックだけど、ティターニアの効果を活かして勝敗を逆転させた。互いをシナジーさせた上手いコンボだ。
「ふむふむ、このカードが来たのなら……このままバトルを続けましょう。シルフ、ノームで攻撃!」
ドローしたカードを確認したエルマ姫は、風と土の妖精も攻撃に向かわせた。
「ピコドラでシルフを防御! ノームの攻撃は通すよ! 」
私はスタンド状態のピコドラに命じてシルフの攻撃を防がせる。シルフとピコドラは空中で ぶつかり合ってパシュンと消えた。
その間にノームはズカズカと私に歩み寄ってきて、棍棒を振り上げる。……しまった。ノームのほうを防御してれば良かったかな? 相討ちで数を減らしたほうが盤面的には正しいけど、実際に攻撃を受けるならノームよりシルフのほうが痛くなかったかも……。
後悔していると、ノームは私の横っ腹を棍棒で叩いた。
「ふぎゃん!」
だから痛いって!! もういい加減に泣くよ!?
「これで終わりですね。ティターニアで聖女様に攻撃です!」
エルマ姫が勝負を決めにきた。最後の攻撃を宣言する。
だけどここがチャンスだ! 私はすかさず手札のマジックを切った。
「そうはいかないよ!! マジック、リカバリーオーラを発動! レスト状態のアイリスをスタンド状態に戻すよ!! そのままアイリスでティターニアの攻撃を防御!!」
膝をついて待機していたアイリスが立ち上がり、ティターニアを迎え撃つ。モランドさんも使ってた防御マジックだ。今はエルマ姫のターンだからコストの踏み倒しは出来ないけど、こうやって不意をついて使うことで相手の意表を突くことも出来る。けっこう汎用的なカードなんだよ。
ティターニアの効果は1ターンに1度だけ。AP勝負でアイリスが勝てば、SPの効果でお姫様のライフを0に出来る。これで私の勝ちだ!
だけどエルマ姫は不敵に笑って見せた。
「さすがに抜け目がありませんね。ですが私もこういった場合への備えは持っています。コスト2のマジック、バトルリターンを発動! 戦闘を無効にしてお互いのモンスターをスタンド状態に戻します」
「なっ……!?」
アイリスとティターニアが激突する寸前、ま
るで時間が巻き戻ったかのように二体が引き離された。
二体は戦う前の対峙した状態に戻る。
「ふう、危ないところでした。バトルが成立していたら私の負けでしたわ。サラマンドラには感謝しませんとね」
「くっ……」
あんな切り札を隠し持っていたなんて……。最初にサラマンドラでブレード・ドラゴンを破壊したときの効果で引いていたんだね。
「危機を回避したとはいえ、このままでは次のターンに聖女様がモンスターを一体召喚するだけで私の負けとなってしまいます。なのでここは私もリカバリーオーラを使っておきましょう。サラマンドラをスタンド状態に」
さらにリカバリーオーラを使って、防御を固めてきた。
これでエルマ姫の場はスタンド状態のモンスターが二体。いま私の手札は0だから、次のドローでモンスターを引いても、手数で押し切ってライフを奪うことは出来なくなった。
「これにてターンエンドです」
《ターン終了時》
エルマ:ライフ1 チャージ0/7 手札0
《フィールド》
・妖精女王ティターニア:妖精族 AP2000 スタンド状態
・炎精サラマンドラ:妖精族 AP1200 スタンド状態
・土精ノーム:妖精族 AP800 レスト状態
果たして私は、この布陣を突破出来るのか?