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お姫様の妖精デッキ

 またまたやって来ました、カードバトル修練場。

 聖女である私とエルマ姫が急にやって来たせいで、訓練していたカードバトラーさん達はすごく慌てていたけど、二人でバトルをしたいことを伝えると快く場所を提供してくれた。それどころか私達が対戦すると訊いて、その場にいない人達まで呼びにいったくらいだ。 また王様達もやってきてすごく賑やかになった。


 ……おかげでゾラさんにもバレて叱られそうになったけど、そこはエルマ姫がとりなしてくれた。 ゾラさんは渋々だったけど認めてくれたので、安心してバトルが出来る。


「聖女様! 終わったらすぐにレッスンの続きですからね!」

「わ、分かってるよう……」


 バトルが終わったら、また辛い特訓が始まりそうだけど……。

 いけないいけない。今は目の前のバトルに集中だ!


「それでは始めましょう。聖女様」

「うんっ! いくよ、お姫様!」

「バトルリング、起動!」

「グランデュエラーズ!」

「スタンバイレディ、ファイト!!」


 対峙した私達はバトルリングを掲げ高らかに叫ぶ。

 リングの宝玉から光盤が展開して初期手札の6枚が飛び出した。ついでに私の服もバトル用の衣装に変わる。久々の変身だ。お城で貸してくれてるドレスも素敵だけど、この格好も可愛くって好きだ。くるりと回ってポーズを決めてみたり。


「おお、聖女様が舞ったぞ!」

「バトル前に行う異世界の儀式かなにかか?」


 ……って周りにたくさん人がいるんだった。恥ずかしい。

 かあっと赤くなる私を見て、エルマ姫はクスクスと笑った。


「可愛らしいですわ、聖女様」

「うう~。言わないでぇ」

「先攻はお譲りしますわ。聖女様からどうぞ」

「ありがとう。それじゃ私のターン! チャージフェイズで1チャージ! メインフェイズに1コストでピコドラを召喚!」


 気を取り直してバトルを開始だ!

 私の1ターン目の動きは安定の一手。召喚出来るコスト1モンスターの中で一番高いAPを持つピコドラを出して相手の攻撃に備える。

 召喚されたピコドラはやる気まんまんの様子で「クワーッ」と鳴いていた。


「よろしくねピコドラ! ターンエンド!」



《ターン終了時》

リセ:ライフ5 チャージ0/1 手札4

《フィールド》

・ピコドラ:ドラゴン族 コスト1 AP500 スタンド状態




「私のターンですわね。スタンバイ、ドローさせて頂きます」


 ターンを回すとエルマ姫はぺこりとお辞儀してカードをドローする。 ゆったりとした動きでありながら、優雅な演舞のように洗練されたその仕草は、同性の私でも見惚れるほどに美しかった。

 なんというか、カードを摘まむ指先とか、ふわりと揺れる髪の動きとか、一つ一つの仕草に気品を感じた。

 すごい。これが本物のお姫様なんだ。


「チャージフェイズで1チャージ。さらにメインフェイズ。風精シルフを召喚します」


 エルマ姫が召喚したのは白い小鳥のような姿をしたモンスターだった。




・風精シルフ:コスト1 妖精族 AP500




「妖精族だ。お姫様って妖精使い?」

「ええ。私の愛する妖精達の戦いをとくとご覧あれ」


 シルフはエルマ姫の言葉に答えるように翼をはためかせる。

 お姫様と妖精の組み合わせってなんだか神秘的ですごく絵になる。

 とはいえステータスで見ればシルフのAPは私のピコドラと同じで完全に互角。盤面は負けていない。


「私はこれでターンエンドです」



《ターン終了時》

エルマ:ライフ5 チャージ0/1 手札5

《フィールド》

・風精シルフ:コスト1 妖精族 AP500  スタンド状態




 エルマ姫はシルフを立たせたままターンを終えた。慎重な出だしだ。

 

「私のターン! スタンバイ、ドロー! チャージフェイズで1チャージ追加!」


 第3ターンで私の手札は4枚。チャージ値は2。

 向こうが慎重に動くなら、こちらは少し大胆に攻めてみよう!


「メインフェイズ! コスト1で2体目のピコドラを召喚! さらにコスト1のミニザードを召喚するよ!」


 コスト1ドラゴンの連続召喚だ。お馴染みピコドラと小さなトカゲのようなドラゴンをそれぞれフィールドに出す。

 前のターンに出したピコドラと合わせて、私のフィールドには低コストの小型ドラゴンが3体並んだ。




・ピコドラ:ドラゴン族 コスト1 AP500

・ピコドラ:ドラゴン族 コスト1 AP500

・ミニザード:ドラゴン族 コスト1 AP300




「まあ可愛らしい。小さなドラゴンさん達の揃い踏みですね」


 エルマ姫は私のドラゴン達を見て楽しげに笑う。

 たしかにみんなちっちゃくて可愛いけど、盤面は一気にこちらが有利になった。


「バトルフェイズいくよ! 2体のピコドラでシルフとお姫様にそれぞれ攻撃!」


 私の号令でピコドラ達がそれぞれ駆け出す。

 シルフに向かったピコドラは、シルフが翼をはためかせて放った突風に煽られながらも、力強く猛進して体当たりを食らわせる。そしてお互い光になって消えた。APが互角なので相討ちだ。


 一方、エルマ姫に向かったピコドラは、初めはもう一体と同じく勢いよく突進していたものの、エルマ姫が優しく笑いかけると手前でピタッと立ち止まった。そして彼女が屈んで差し出した手に、お手をするようにちょんと前足を乗っける。それだけでライフがひとつ減った。


 なにそれ!? そんなのってアリなの!?


 私がモランドさんと戦ったときは、猫ちゃんに頭突きされたり、雷に打たれたりしてすごく痛い思いをしたんだけど!!


「えー、なんか不公平……」

「どうかなさいましたか?」

「なんでもないよ。ターンエンド」


 ちょっとふてくされながらターンを終了する。

 ミニザードは防御の為に待機だ。

 ピコドラも相手がお姫様だから空気を読んだのかな? 私もエルマ姫みたいに上品に振る舞えば,手加減して貰えるのかなぁ?



《ターン終了時》

リセ:ライフ5 チャージ0/2 手札2

《フィールド》

・ピコドラ:ドラゴン族 コスト1 AP500 レスト状態

・ミニザード:ドラゴン族 コスト1 AP300 スタンド状態




 エルマ姫のターンだ。


「私のターン。スタンバイ、ドロー。チャージフェイズに1チャージ追加。……私のモンスターとライフを的確に奪いつつ自身の防御も固めておく。ふふ、思った通り、聖女様とは楽しいバトルが出来そうですわ」


 前のターンの私の攻撃に怯んだ様子もなく、エルマ姫は楽しげに笑ってみせる。


「いきます。メインフェイズ、コスト2で土精ノームを召喚。さらにコスト1の風精シルフを再び召喚です」


・土精ノーム:妖精族 コスト2 AP800

・風精シルフ:コスト1 妖精族 AP500


 私がライフをひとつ奪い、チャージフェイズに追加したことでエルマ姫のチャージ値は3。それをフルに使って2体のモンスターを召喚してきた。

 一体はさっきも出した風の妖精シルフ。そして2体目は土色のずんぐりした身体に大きな棍棒を抱えたゴブリンっぽい姿のモンスター、ノームだ。

 RPGの雑魚モンスターってイメージが強いけど、海外のお話とかじゃゴブリンも妖精の一種なんだっけ。


「バトルフェイズです。シルフでミニザードに攻撃!」


 シルフがミニザードに向かって飛んでくる。APで劣るミニザードはその翼が巻き起こす突風にあっさりひっくり返され、パアッと消滅した。

 やられちゃったけど、それは想定内!


「ミニザードの効果発動! このモンスターが相手に倒されたとき、私はカードを一枚ドローするよ!」


 ミニザードがやられると同時にリングからカードが飛び出して手札に加わった。ミニザードを残していたのはこのためだ。


「あら、そんな効果を持っていらしたなんて。これはまんまと誘われてしまいましたか?」


 困ったように笑うおエルマ姫。ちょっと悔しそうだ。

 ライフを守りつつ、手札を補強できる。APは低いけれど、結構頼れるモンスターなんだよ、このミニザードは。


「乗せられたままでは癪ですので、聖女様のライフも頂きましょう。ノームで聖女様を攻撃!」


 ずんぐりノームが私に向かってくる。

 この攻撃は防ぎようがない。

 あの棍棒で殴られたら痛いだろうなぁ……い、いや、大丈夫だ。さっきのエルマ姫みたいにすれば痛くしないでくれるかも。

 私はこの一週間で身に付けた礼儀作法をフル活用して、たおやかな仕草でノームに笑いかけてみせた。

 ノームはそんな私のお腹を棍棒でドスッと突いた。


「ごふっ……!」


 ……何でぇ!? なにがいけなかったの!? 

涙目でお腹を押さえながら、棍棒を肩に抱えて戻っていくノームを恨めしく睨み付ける。


「大丈夫ですか、聖女様?」

「う、うん……平気」


 実体化していてもモンスターは魔力の塊で、その攻撃で実際に身体が傷つくわけじゃないから、痛みは後を引かない。この痛みだって魔力によって与えられた衝撃が魂に影響して現れるものらしい。 ……余計心配な気もするけど、深く考えないでおこう。


「ターンエンドです。これでライフは並びましたね」



《ターン終了時》

エルマ:ライフ4 チャージ0/3 手札3

《フィールド》

・土精ノーム:妖精族 コスト2 AP800 レスト状態

・風精シルフ:妖精族 コスト1 AP500 レスト状態




 一旦リードしたけど、戦況はほとんど互角まで巻き返された。やっぱり強いね、エルマ姫。

 楽しくなってきた!


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