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カードの導き

新連載。オリジナルカードバトルものです。

 この日、カードバトルスタジアムはたくさんのお客さんで賑わっていた。

 ここではグランデュエラーズの交流対戦会が開催されている。

 グランデュエラーズとは、大人から子供まで、世界中で大人気の対戦型TCG(トレーディングカードゲーム)だ。その人気たるや、全国各地に専用のバトルスタジアムが設立され、公式非公式問わず毎週のように大会が開催されているほどだ。

 今日もスタジアムに集まった腕に覚えのあるカードバトラー達が、豪華商品を賭けて熾烈なバトルを繰り広げていた。


 私、月花梨瀬(つきはなりせ)もその参加者の一人だ。テーブルが並べられたバトルスペースで、高校生くらいのお兄さんと対戦している。

 

「よぉし、これで決めるぜ!! うおおお! バーニングバイソンで、ブレード・ドラゴンに攻撃だァァァ!!!!!」


 戦局はまさに佳境といっていいだろう。お兄さんが高コストの強力なモンスターユニットを召喚して、勝負をしかけてきたところだ。

 喉を枯らさんばかりに叫び、大袈裟な身振りで攻撃を宣言するお兄さん。まるでアニメの主人公が勝負を決めにいくときのようなハイテンションだ。

 しかし私は怯むことなく手札のカードを切る。


「マジック、パワーオーラを使用するよ。ブレード・ドラゴンのAPをプラス500。これでバーニングバイソンは返り討ちだよ」

「な、なんだってぇ!? ぐわああああ!!! 俺のバイソォォォーーーーン!!!! あっ、ターンエンドです」

「ふふふ、攻め時を見誤ったね! 私のターン。スタンバイ、ドロー。このままバトルフェイズで総攻撃!」

「ぐっはああっ!! ま、まいったあぁぁぁああ!!!!!」


 お兄さんは私の攻撃を防ぎきれずライフが0に。椅子ごと後ろにひっくり返った。


「おお、またあのちっちゃい子が勝ったぞ」

「マジかよ。相手はシニアクラスのシルバーランク。“赤の猛牛”こと牛島マコトだぞ。まぐれでもジュニアクラスのガキに負けるような奴じゃあないぜ」

「ただ者ではござらぬな、あの娘……」


 後ろで見ていた人達がざわざわと沸き立っている

 まさか私みたいな子どもが勝つなんて誰も思っていなかったみたい。大番狂わせだと騒いでいた。

 この大会はジュニアクラス(※15歳未満のプレイヤー)もシニアクラス(※15歳以上のプレイヤー)も一緒くたになって戦うフリーバトル方式だけど、やはりシニアクラスの人達の方が勝率がいいみたい。

 そんな中でまだ13歳の中学生でありながら、連戦連勝を続ける私はけっこう注目されているみたいだ。


「へへ、お前強いな……この俺が負けるなんてよ」

「お兄さんも強かったよ。バトルしてくれてありがとう!」


 起き上がったお兄さんと握手を交わし、互いの健闘を讃える。

 勝っても負けても恨みっこなし。正々堂々と戦った後は親睦を深め合うのがカードバトラーの流儀だ。


「お嬢ちゃん、次は俺が相手だ! 牛島を倒したお前に勝てばハクが付くってもんだぜ!」

「バーカ、アイアンランクのお前じゃ相手にならねえよ。さっさと負けて席を譲れ」

「その娘に勝つのは拙者なり。手の内さえ分かれば、我が忍術パーミッションデッキで封殺してくれよう」


 私の対戦席に次々と人が集まってくる。

 私はデッキをシャッフルしながら、皆を出迎えるように笑った。


「なんでもいいよ。さあ、バトルしよう!」





 大会は終わり、私はスタジアムを出て帰路に着く。

 その手には銀色に輝くカードパックが一袋。

 見事上位入賞を果たし、賞品のレアカードを手に入れたのだった。


「あはっ、楽しかった~! 入賞も出来たし、満足満足!」


 賞品も嬉しいけれど、それよりなにより色んな人とたくさんバトルが出来たのが楽しかった。

 戦略と運、知恵と気迫のぶつかり合いがグランデュエラーズの醍醐味だ。ビートダウンにパーミッション。ロックデッキにフルバーン。バトラーの数だけ様々なデッキがあり、戦い方も多種多様だ。

 そんなたくさんのライバルとの戦いはハラハラワクワクの連続。

 だから私は色んな人とバトルするのが大好きだ。


「次の大会も勝つために、もっとデッキを強化しなくっちゃ。せっかくレアカードも手に入ったんだからね」


 バス停で帰りのバスを待つ間、私は待ちきれなくて賞品パックを開封した。

 大会の賞品は強力なレアカードが多い。世の中にはプレミアを狙ってパックを開けず転売する人もいるけれど、私は実戦で使う派だ。新しいカードはデッキに入れて一緒に戦いたいもんね。


 だけど私は出てきたカードを見て首を傾げた。


「あれ? なにこのカード。聞いてたのと違うよ」


 賞品の内容は事前に告知されていた。だけど中から出てきたのは、見たこともないカードだ。

 もしかして大会スタッフさんが間違えた? それとも間違って封入されたエラーカード? どうしよう、こういうのって、戻って頼めば取り替えて貰えるのかな?


「竜騎士アイリス……知らないカードだ。一応レアリティはハイレア……じゃなくてなにこれ? ゴッドレア!? こんなの聞いたことないよ!!」


 全てのカードプールを把握しているわけではないけれど、ゴッドレアなんてものは今まで聞いたことが無い。

 グランデュエラーズにおけるカードのレアリティは、ハイレアが一番上で、その下が順にレア、アンコモン、コモンの4種類の筈だ。もしかしたら別のゲームのカードかもと思ったけれど 、この装飾は間違いなくグランデュエラーズのカードだ。

 どうしよう? もしかしたら、情報解禁前の新カードが間違って流通してしまったのかもしれない。

 このまま貰っちゃっていいのかな? それともちゃんと話して返したほうがいいかな? そもそもこのカードって公式戦で使えるの?


 出てきたカードを手に迷っていると、急にカードが白く光りだした。


「ふえ? うわわわ!! な、なにこれ!?」


 光はどんどん強くなり、目を開けていられなくなる。やがて光が収まり、ゆっくりと目を開くと、そこには見知らぬ光景が広がっていた。


 ………………………………えっ?



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