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せっかちななまけものてんせい  作者: n.a.o
序章
2/6

転生

意識を失った男が目覚めたのは、日常なのか。はたまた、それも夢なのか。今日も男の日常が始まるはずだったが……

「ん……そろそろ朝か」


太陽の光はカーテンに遮られているが、それでも薄い日光が瞼を刺激するがわかる。いつもの感覚。


「あれ……」


「身体が……動かない?」


おかしい。どうしてだ。確かに、意識はここにあるはずなのに、身体が動かない。それどころか、目も開かない。手も、足も、指先も、そこに意識を集中しているはずなのにピクリとも動かない。


「おいおい、よしてくれよ。なんだってんだ。これじゃ朝を満喫できないじゃねえか。金縛りか?」


 自由に巡らせられる意識とは裏腹に、身動ぎのできないその塊は、もはや生を感じさせない。


「なんだか暑いな。今は初冬だぞ。朝からこんな暑いなんてどうなってんだ。いや、熱い……?」


 男の瞼を刺激するその光が朝日ではなく、メキメキと勢いを増す赤い光であることに男が気付くまで、数秒とかからなかった。


「はっ!」


 こうして男の意識は再び途切れたのであった。



ーーー「チッ。寝覚めの悪い夢だ。朝からどうして……」


いつも通り、目を開けながら身体を起こす。


 しかし、飛び込んできたのは、普段の日常とはかけはなれた神秘的な景色であった。


緑。森か?いや、そんな言葉では形容しきれない。生を感じさせる巨大な空間。見たことのない異質な形の木に囲われている。


いや、そんなことはどうでもいい。それよりもまだ夢が続いているのか。いい加減目をさましたいんだが……って、あれ。俺、今完全に意識あるよな。というか、さっきのだって、到底夢とは思えないほどリアルだった。生きたまま、焼きつくされる感触。


確かにこの身にその感覚は刻まれている。何が起こっているかも理解できず、ただひたすらに痛い。息ができない。全身に釘でも打たれたかのような痛みが走る……


しかし、理解できない。あれほど現実じみた感覚には違和感を抱くが、夢と解釈しなければ到底納得などできない。これが夢じゃなければなんだというのだ。


「あの……」


いやまて、というかなんだこの感覚は。目の前の景色にばかり気をとられていたが、どうも身体の様子がおかしい。思うように動かせない。一体、どうなっているんだ。


「すみません……」


それよりも。身体を起こして目を開けたはずなのに、動かせない。顔も視界も何もかも。自分が呼吸をしているのか、それすらも分からない。


確か俺は……


 その時、勢いよく視界が切り替わる。と、同時に上に下に、左に右にガクガクと視界が乱れ始める。


なんだ、これは……


 次々に起こる理解不能な現象に呆気にとられながらも、思考を巡らせる。


確か昨日、俺はいつも通り家に帰って、いつも通りの流れで床についたはずだ。それから……


そうだ。時間について、その重要性を噛み締めていたはずだ。それから……


 目を閉じることもできないまま、なんとか思考を巡らせていたその「塊」は突如左頬とおぼしき場所に鈍痛を覚える。


「痛っ!!」


わからん!一体、どうなっているんだ!!


 意味不明の状況に苛立ちを覚え始めた茶色い塊は、何とかして身体を動かそうと試みる。


「って。声が、出る……?」


さっきまで喋ろうとしても一切声が出なかったにも関わらず、声が出せるようになったのか。


「あのう。誰か、いますか」


 それでも身体は未だ動かず、辛うじて、ピクピクと痙攣するかのようにその塊は震えていた。


「あ、喋れ……すね。じゃあ、こっち……すか?」


ん、何か聞こえ……る?そういえば、さっきから何か音が聞こえているような。


「えっと……誰かいますか」


喋れているのか?そういえば、自分の声も自分の耳にはうまく届いていない。自分が何を口に出しているのか分からない。どうにか伝わっているのだろうか。


「んー、まだよく分かんないすね。一旦、持ち帰るっすか」


 そういって形を変えた「女」は、茶色い塊を持ち上げてその場を後にする。

朝から理解不能な状況を体験するその塊。一体、何が起こったというのか。そして、彼を持ち帰った彼女とは……?

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