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Difference  作者: えも
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尼ケ崎 冴恵 [結末]

あれから半年が過ぎ、私と美麗ちゃんは今だに仲良くしている。

いい子で素直なあの子を見ていると、私も私の事をよく考えないと行けないと思ってしまう。


私、尼ケ崎 冴恵は何故絵を描きたいと思ったのか。

そこからまず、考えてみることにする。

否、私は絵を描きたい訳では無い。

私は何故絵を描いている?

そこが分からない。

では、何故絵を描いていた?

私が絵を描いた発端は小学生の頃、美術の授業で

人より才能があったからだ。

それだけじゃ薄い。

ここまで成長できた「なにか」があるはずだ。

私は絵を描きたいと思っていない。

だが描いてきた。

小学生の頃、美術の授業で人より少し才能があっただけで

世界1位の座を取れるだろうか?

いや、なにか相当に努力しなければならない「何か」があったはずだ。


それはなんなのか。


人より少しの才能。そこで生まれるのは何だろう?


そこで私はなにを見ることが出来た?


人からの嫉妬、劣等感、憎悪、虚無感。


私は絵を描いて、その先になにを望んでいたのか。


人は何か目的が無いとそこまで努力しようとは思えないはずだ。


目的があってこその努力。


そうか・・・。

私は絵を絵を描きたいと思っていない。

しかし、描いてきた。

何故か?人より劣るのが嫌だったから?

違う。

人を見下したかったから?

違う。

人の上に立ちたかったから?

違う。


私の目的は、人の悔しそうな顔を見るのが好きだったからだ。

やっと思い出せた。絵を描こう。と思えた理由。ここまで上がってこれた理由を。


小学生の頃、美術の授業で私は、絵を書いていたのだ。

そして、私の隣の席で描いていたクラスメイトが絵を書くのが好きで、自分の絵の上手さをよく自慢していた。


クラスメイトはその絵を褒めたたえ、絵を書くのが好きなクラスメイトは満面の笑みだった。


だがしかし、その授業で私の方が絵が美味かったのだ。

その時のクラスメイトの悔しそうな顔を見て、

私はエクスタシーを感じてしまった。


振り返ってみると、そんな事が多々あった事を思い出す。


初めてエクスタシーを感じたのは、そのクラスメイトの悔しそうな顔。

2度目は、専属スタッフの悔しそうな顔。


そして3度目。神崎先生を2位に落とした時の顔。

あれは本当にエクスタシーを感じていたのを思い出す。


これで納得できた。私が美麗ちゃんを見てモヤモヤした気分を味わった事に。

3倍近くの実力の差を見せつけたのにも関わらず、

あの子は悔しい顔を一切しなかったのだ。

それどころか嬉しそうな顔していた程なのだから。


だから私はモヤモヤしていたのだろう。


その事に気付いた時、私は絵を描くのをやめていた。


だが、まだやるべき事がある。

美麗ちゃんだ。あの子に絵を書かす訳にはいかない。


私が死ぬまで気持ちよくなるために

あるいわ生きている間のエゴのために。

美麗ちゃんに二度と絵を書かすわけにはいかないのだ。

それ以上上達してしまうと、私にはどうにもできなくなってしまう。


そう思い、私は行動に移った。


美麗ちゃんと一緒に暮らそうとそう伝えた。

そして、私を支えてくれと。


あの子は私と違い、自分の為に行動する事に意味を生さない。

何故か。あの子は人に頼られてエクスタシーを感じてしまう子だからだ。

半年前、あの子に聞いたあの事件。

あの子は自分の才能なんて物は気にせず人に頼られてこその

自分だと考える子なのだから。


神崎先生は親バカで、娘が幸せならそれでいいと

あの子を任せてきていた。


勿論、あの子の素性を知った上で。

私の素性は知らないが、利害は一致していたのだ。

ただそれだけの話なのだ。


だが、画家はどこか頭がおかしいのだと思えてしまった。


そして私はその日破瓜の痛みを経験した。




それから半年後、私はすっかり思ったように絵を書けなくなっていた。

だが、それは発想力や想像力の問題で、技術は健在だ。

それを知り、画家を引退したのだった。


そして、やるべき事、したい事をする為に私は絵画教室を開いたのだ。

生徒を集めるのに苦労はしなかった。

私は世界1位の画家だったし、いろいろな人が宣伝してくれたからだ。

政治家、有名な画家、大統領や市長。

応募してきた候補生の中から私が逸材を選び、

そこで私の生徒たちは、私の絵をベースに、

色んな所に絵を出店し、色んなところで賞を貰っていく。

この生徒たちは私のエゴ為に絵を描き、自分の為に絵を描いている。


そして、悔しそうにする他の画家を目指している少年や少女や青年や老人の悔しそうな顔を見る度、私は再びエクスタシーを感じるのであった。

これこそが私の本来やりたかった事なのだった。



「ただいま美麗」


そして美麗が待つ家に帰り、美麗にご飯を作ってもらい、それを食べ、美麗が必要なのだと、毎晩言っていたのだった。


「おかえりなさい!冴恵!今日は腕にヨリをかけて晩御飯つくりました!とても頑張りました!」


「わあ、これは美味しそうね。私のためにありがとう美麗」


「えへへ」

尼ケ崎冴恵編。

書き終えました。

少し長くなってしまったかなとおもったのですが、

小説って書いてると自分の頭の悪さが際立って嫌になってきますね。笑

これからも、いろいろな価値観をもった人生をひとつの物語として書いていきます。

次は、神崎美麗編を書こうと思ってますので、よろしくお願いします。

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