野宿小話
風を操る特訓を始めて数分。
「もっと強く!素人で大した量は操れないんだから微風を出そうとするな!竜巻を操り、目の前の岩を押し出すのをイメージしろ!」
軽い様子から一変、ジーハは、『実力はあるけど人格は破綻してる』という評価が付くような態度になっていた。
一方アレアはと言うと、当初の意気込みは何処へやら…
「これ…以上は…無理……ですよぉ…」
と、疲れきり、肩で息をしていた。
「しょうがない。休憩…」
そこまで言ったところで辺りを見ると、すっかり暗くなっていた。
「…いや、もう今日はやめにする。」
「賛成…です。」
「仮に反対された場合こっちが困る。」
ジーハは特訓が終わった途端に元の口調に戻り、
「じゃ、荷物番しててね。」
と言って魔方陣を描いて結界を作った。
*野原→結界内部
「はい。干し肉のスープとパン。さっさと食べて寝な。明日も早くから始めるから。」
「ありがとうございます。」
二人が食べ終わると、アレアがジーハに聞いた。
「一つ気になったことがあるんですけど。」
「何?」
「体が魔力でできてるなら、直接周りから取り込めないんですか?」
「何でそんなことを聞くんだい?」
「なんとなく。気になっただけです。」
「ふぅん…まあ、取り込むことはできるけどね。だけど、制限してるんだ。」
そこで一呼吸おき、ジーハが脅すように言った。
「無制限に取り込んじゃったら…風は起きないし湖は干上がる。炎もつかない。音もない、自分の手さえ見えないほどの暗闇になるし、それを解決するために私に攻撃することさえ叶わなくなる。しかも仮に攻撃できたとしても、急激に元に戻したらどうなるとおもう?流れる力が強すぎて崩壊しかねない。」
「規模が大きすぎてよくわかりませんが…要は…すごく危険って事ですか。」
「そう。しかも私は、この体が成る時に軽いものではあるけどそれを経験してるからね。」
「え?」
アレアに他の疑問が生まれたが、ジーハが手を叩き
「さて、今日はそろそろ寝よう」と提案し、この話は一度終わった。