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暴漢撃退

翌日。


「学校長、折り入って頼みがあります。」

「なんだね。ジーハ君。」

「私の元生徒にこの手紙を持っていってください。…よろしければ、読み上げていただければ幸いです。」

「『元』…ねぇ…君、昨日は受け入れると言っていたが本当に良いのかね?」

「政府から直々に届いたものですしね。それにもう荷物は詰め終わりましたし、鍵も管理人に返してしまいました。」

「そうか。…達者でな。」

「ご心配なく。」

それだけ言い残すとジーハは授業に出向くときの様な微笑をたたえ、学園をあとにした。


*学園→街中


街中を歩いていると不意に叫び声が聞こえ、住民が飛び出してきた。

「邪魔だなぁ…あー…大気の精よ…えぇいめんどくさい。先の声の主が今どこに在るかを見つけ、我をその場に運びたまえ…詠唱を怠るのは本来御法度だが致し方あるまい…」

その後すぐ、ジーハは叫び声の主を襲おうと飛び掛かる暴漢の前に現れた。

「うおぉっなんだ貴様っ!」

「近づきすぎる野次馬。といったところだ。むしろそっちのがなんだって話だ。」

「俺か?そこのガキが因縁つけてきたんだよ。だから世の中の厳しさをわからせてやるんだ。」

「ご丁寧にどうも。」ジーハは後ろを振り返り、問う。

「それで、本当なのかい?」

「因縁…というか狭い道なのに無理矢理通ろうとして人を突き飛ばしてたのを見てちょっと睨んだだけです!」それを聞き、ジーハは男の方を向く。

「なるほど。それもどうかとは思うが、子供の方を私は味方するべきだろうね。それで?襲いたいんだろ?なら私を押し退けてからだ。かかってこい。」

「てめぇっ…」

暴漢が殴りかかるような動作をし、突進するが、ジーハは暴漢の腕を掴み足を踏み張り、その体を壁に打ち付ける。

「…重すぎるな。経験者かな?…地の力使ってなきゃ一緒に吹っ飛んで…」などと、しばらくブツブツと文句を垂れた後に、ジーハは振り替える。

「…忘れかけてた。大丈夫かい?少年。」

「少年?………あぁボクの事か…ってそんなことより…」

「うん?」

「あの!さっきのって地の魔術ですよね!それにボクの目の前に突然現れたってことは…」

「そんなことって君、そこはまず礼を言うところじゃないの?」

「あぁ、そうですね…すみません…あの、ありがとうございました!」

「よろしい。して先程話しかけていた用件は何だい?…いや、ここじゃこいつが目覚めたときに面倒くさい。そうだな。ちょっと歩くけど食い物屋にでもいこう。ちょうどお昼時だし。」


*暗がり→食堂


「あ、茶とサンドイッチで。同じでいいかい?」

「はい。」

「じゃ、二つずつでお願いします。」

「かしこまりました。」店員が退くと同時にジーハが話すように促すと、少年は語り出した。

「ボク、魔術師志望なんですけど…貧乏なのでアカデミアを目指すどころか普通の学校にも兄がたまに行って先生の話を全部覚えて、帰ってきたときに話してくれるくらいなんですよ。」

「ふむ。それはまた極端な話だね。」

「父は今でこそ呑兵衛のろくでなしですが昔はそれなりに活躍してたんです。それに、母も予言者として名を馳せていました。つまり、遺伝的に見れば兄も僕も才能はあります。」

「ここまでの自信家は初めてみた。」

「…魔杖と最低レベルの魔術師試験にはそれなりに上位で合格とれました。」…最低ランクとはいえこの若さでほとんど勉強もしてないで取ったとなったら才能はあるのだろう。

「でも、父の操術能力が大幅に落ちてから我が家は変わりました。父は、公的機関の役職の中でもそれなりに良い地位にいたんですがそのせいで必要性を落としてクビになり、さっき言った通りに呑兵衛になりました。母に暴力こそ振るいませんが家計を圧迫しているのは確かです。」

「ほう。それで?」

「母は必死に働いて、なんとか兄が上学校に行ける程度にはお金があります。ですが、ボクの分は…」

「なるほど。君の長話を聞いて思ったのだが、君はどうしたいんだ?」

しばらく顔を伏せた後、少年は顔をあげ、打ち明ける。

「…単刀直入に言います。ボクを弟子にしてください!家のために煙突磨きとかいろいろしてきたので使いっ走りにもそれなりに役立てると思います!」

話を聞き、ジーハは袖を捲る。すると腕には追放者用の罰印が刻み込まれていた。

「俺はこれ《犯罪者扱い》だぜ?ほんとに良いのか?それで。」

「…あなたはボクを助けてくれましたよ。過去に何をしたかなんて知りません!」それを聞くとジーハはニヤリと笑いこういった。

「ただの気紛れだったら?明日には君がバラバラになってあの辺に住んでる動物の餌になってるかも知れんぞ?」

「…あなたはそうじゃないと信じます。だから、お願いします。」

「だが君の家はどうする?君、食い扶持を君が稼いでるような言い方をしていたじゃないか。」

「嫌なら嫌とハッキリ言ってください。諦めがつくので。」

「…なりたいのか?」

「もちろんです。」

「そうか。なら基本は教えるが、自分で見て盗めよ。」そういうと少年は笑顔になり、「ありがとうございます!」と頭を下げた。

「ああ、そうだ。君の将来を見込んで先払いで、しかも小分けではあるが給料を払う事も考えている。親御さんが反対するならそれで押し通せ。」

「失礼ですけど、人の足元見てません?」

「当然だ。世の中金だからな。」

「…隠さないんですね。」

「だって君わかってるだろ。そんなことは。」

「まあ、そうですけど…でも…」

「おまたせしました。サンドイッチとお茶です。」だらだらと喋っているところに注文品が届いた。

「ああ、そうだ。いまさらだが私はイメド・ジーハだ。君は?」

「アレア・ルディです。」

「そうか。じゃあリウル君、一時休憩といこうじゃないか」


*食堂→アレア家帰路


「ご馳走さまでした。」

「別にたいした出費じゃない。」

二人は黙々としばらく歩いた。

「あ、ここです。」

「小さいな。」

「悪かったですね。」

ルディはため息をつくと、

「いいですよ。事実ですし。」と言った。


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