頭蓋骨に飼われた林檎の虫
国会議員の名鹿瀬は焦っていた。国民が騙されかけている。
至急東西新聞社の社会部次長の章田に連絡を取らなくては。重度身障者の二人は単なる障害者ではなく日本の国政を混乱させるために送り込まれた「魔族」であり、二人の身元がおかしいと前から踏んでいた内閣調査室と公安部が調査した結果、「クロ」と判断したのだった。
なぜ、ここまで新党海和の邪心を許したのか、それは新党海和の党首の名田がある旧財閥系の財主の私生児に当たり中国の財界筋から強烈な政界への後押しがあったとされている。
名田自体には問題をこれだけ広げてしまったという意識は毛頭なく、いつもの白痴ぶりを明るく病的に展開していただけなのだが、さすがに名田が講談社の現代ビジネスという雑誌に答えたインタビュー記事は名田の政治音痴ぶりを露呈させてしまった。
「今後は国会運営は二人の障害者のペースに会わせて、強行採決などはなしにゆったりとしたペースで行われるべきだと思うんですよね」
これではみんなが思っている「可哀想な」障害者による国会の事実上のハイ・ジャックではないか・・・
過ぎた人権意識は却ってみんなの政治の前に進む力を削ぐ場合がある。アメリカで主流を占めているアファーマァティブアクションが日本国内の様々な団体や個人の意識において導入、浸透していない訳がここにある。
今度の2020年に行われる予定の東京オリンピック・パラリンピックは謂わば「高度に政治化されたメディア劇場」であり、朝鮮有事などで、いざとなれば、「可哀想な」障害者の人たちがいる、だから国のために戦争へ行け、そして、サブマシンガンの銃弾などを受けて「可哀想な」障害者のために血、赤き血と黒き血を流し、頭蓋骨に林檎の虫を飼いながら死んでこいと言っているようなものである。
障害者自身に罪はなく、この様な事態が容易に想像される現実を私は特に憎む。
この小説はフィクションであり、登場する個人、団体は全て仮称です。




