第3話 神様が暇なのは平和な証拠ってことでよろしいでしょうか
目を開けると、そこは天国だった。
7年ぶりに見るその光景は、懐かしさは感じることなく、ただただ幻想的な光景で、一目見てここが天国なんだと感じさせる、理屈よりも感じろ的な光景だった。
「え、なに?僕また死んだの?」
「いえいえ!わたしが意識だけ召喚したんですよ!あなたの身体はまだベッドの上。マコト様にかかれば、この程度のこと簡単です」
声が聞こえて振り向くと、そこには女神様がいた。
7年前から変わらぬ姿。
こうしてみると、神という肩書きにふさわしい美貌。見た目の年齢的には美女というよりは美少女。髪は肩ほどで、色はオレンジ。あまり女性の髪型とか詳しくないけれど、ボブカットっていうの?ふんわりと弾むような髪を肩程度で綺麗に揃えられている。
その身を包むのはなんだろう、羽衣っていうの?本当語彙力が足りない。カーテンを巻きつけているようにしか見えない。言えることはエロい。
キリッとした目をしているけど童顔で、スタイルはとてもいい。ボンキュッボン。ただ、見た目ではカップ数とかはわからない。僕はおっぱいソムリエではない。この美貌を表現できない女経験のなさが恨めしい。美少女として生きていれば、そのうち変われるだろうか。
「ちなみに、ここはわたしが作った精神の世界であり、ここではあなたの考えは筒抜けです!女神様のことを色目でみるなんて、ダメな信徒ですね!」
「いやいや、僕は別に女神様の信徒とかじゃないですし」
え、ここって心の声聞こえちゃうの?めちゃくちゃ危ないんだけど。
「なんですかー?わたしの胸の大きさが知りたいんですか?んー、そんなに大きくないですよ。君の知っている知識で答えると、アンダー65のFカップですね。まぁ、大事なのは形だと思うので。わたしの自慢です」
「教えてくれるんですか……どうもありがとうございます」
Fカップ……響きは大きいように聞こえるんだけどな。
イメージができない。
まぁ見たままか。
これがFカップということを、この目に焼き付けておこう。
「はいはーい、どんどん見ちゃってください。信徒に大して恥じらいを覚えるような感性はわたしは持ち合わせておりません。目に焼き付けておくといいでしょう。それより!今日ここに来てもらった理由についてお話ししましょう!」
あぁ、そういえば7年ぶりとなる女神様との会合。
7年が長いか短いかは議論が分かれるところだけども、何か大事な用事があるのだろう。
「まぁそんなに構えなくてもいいですよ。主な理由は暇だったからです」
「あ、そうなんですか」
まぁ、美少女でもある女神様に呼ばれることは全く嫌ではない。
どんどん呼んでもらって結構。
身も心も女となりつつある僕だが、女でも美少女と話すのは気分がいいんだな。
「それでも全く話題がないわけではありません。今日入学式でしたね!どうでしたか?」
「楽しかったですよ。ルーシーちゃんって可愛い子と知り合えましたし」
「それはよかったです。楽しい学校生活になりそうですね。他には何かありましたか?」
「んー、あ、そういえば。魔力測定をしましたよ。女神様が魔法の才能を付与してくれていたので、測定結果が無双になるかと思ったのですが、よくわかりませんでした」
「ほほう。どんな結果が出たんですか?」
「水晶石が黒くなって粉になりました」
「あー、それはやってしまいましたね」
「え?僕なんかやらかしました?」
「はい。今の下界の人間には何が起こったのか理解できないかもしれませんが、気づかれたらやばいです」
「ど、どうやばいのでしょうか」
「それはちょっと説明できません。いわゆる禁足事項ですね。ここで教えてしまえば、あなたは下界の人に伝えてしまうかもしれません」
そういってうつむきながら首を横に振る女神様。
今日はそのことを話に来たのだろか。
詳細を教えてくれないなら、そんなことわざわざ教えてくれなくてもいいのに……。
「わたしがあなたに言えることは、これだけです。もし誰かに何をしたか聞かれたら、何も知らない、何もしていないと答えるのです」
「き、気を付けます」
「わたしはいつもあなたを見守っています。何か困ったことがあったらわたしに祈ってください。お願いします!助けてください!マコト様!そう祈ればきっとわたしがあなたを助けてあげます」
なんて慈悲深いっ!
これが女神。無償の愛。なぜこんなに僕によくしてくれるのだろうか。
「理由は簡単です。暇だからです。わたしのことを知っている人間って、かなり限られてくるんですよ」
「神様って暇なんですか?」
「退屈ですよー。もう、退屈って感じないくらい退屈です。あなたと話をして、退屈っていうことを思い出した感じです」
「暇つぶしで神様から助けてもらえるなら僕は満足ですよ。ぜひよろしくお願いします」
「はい。あーそれと、前から言っていますが私のことはマコトと呼んでください」
「はい、マコト様。またよろしくお願いします」
「それじゃ私の用事はこれだけです。ついでに私に何か用事とかありますか?」
「特にないです。そうですね、それじゃせっかくなんで好きなものを教えてもらってもよいでしょうか?」
「ほう、好きなものですか。そうですね、美少女は好きですよ」
「食べ物とかじゃないんですね。とりあえずわかりました。それじゃせっかくなので、マコト様の満足するような美少女を僕は目指します」
「ぜひよろしくお願いします。ではこの辺で」
そういうと、マコト様は軽く指を鳴らす。
その瞬間、僕の視界はブラックアウト。
目覚めの時は近い。