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美少女になれば幸せになれるとこの時は信じていたんだ  作者: 草壁輝美
第1章 女神のような美少女爆誕までの物語
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第1話 その時歴史は始まった


先ほどまで天国にいた僕だが、次に目を覚ました時は、なんというかまともに周りが見なかった。

人の意思とはどのタイミングで稼働を始めるのか。

母体から出た瞬間なのか、目に光を入れた瞬間なのか、そもそも物心がついてからなのか。


極めて謎であり、それを証明できるのは赤ん坊しかいないわけで、実質それは証明不可能と同義だと思う。

そう思っていた時代が僕にもありました。


「……ぎゃぁ!おぎゃぁ!」


……ん?なんだ?

赤ん坊の声が聞こえる。


「■■■!■■■■!」


なんか人の声が聞こえるな。だがなんだ?何言っているのかわからない。


「■■!■■■■■■■■!■■■■■!」


うーん、周りが明るいってことはわかるけど、なんだろう。

身体がすごく小さくなっている気がする。


くっそ、目も見えない。

とりあえず目の前に何か、とてつもなくでかい何かがいる。

ってうお!


「■■■!■■■■■■!」


いきなりそのすごくでかい人に持ち上げられた。

巨人といっても差し支えない。

初めまして自分より数倍でかい存在に捕らわれる恐怖。


……いや?特別でかいわけではない?

自分の身体が小さいのか?


あぁ、これあれか。

本当に転生したのか?もしかして。

夢かと思ったが、夢じゃなかったのか?

まさか真実だというのか?

まだ夢の可能性はなくはないけど。


「……ぎゃぁ、ぎゃぁ!」


さっきから聞こえる泣き声。

これ僕の口から出ているのか。

気づかなかった。

泣き声って無意識で出ているのか。本能みたいなものかな。


泣いている自分の身体を感じながら、自分の相棒がないことに気付く。

とりあえず、自分の性別はメスのようだ。

女神にお願いしたことの第一条件は突破したということか。


これで僕は絶世の美少女に生まれたということか?

……全く実感が湧かない。

成長するのを待つしかないのか。


……赤ん坊か。考えてみれば貴重な体験だな。

自覚をもって赤ん坊の時期を生きれる人はめったにいないだろう。

ひとまずは、赤ん坊という時期を楽しみにしているか。


―――――――◆◆◆―――――――


「はーい、エリスちゃん!ごはんの時間ですよー!」


「わーい!」


はい、というわけで私はあっという間に3歳になりました。

これまでの時間はひどく退屈。

私のお母さんは、私が美少女を希望したことが起因しているのかとても美人。

そんなお母さんから授乳してもらえると考えると、一瞬興奮するかなと思った時もありました。


しかし身体が女だからでしょうか。そもそも子供だからでしょうか。

性欲みたいなものは感じませんでしたね。

かといって男に興奮するわけでもないので、人類として何か大切なものを失ったように感じます。


3歳になるまでの間は、寝て起きてをただ繰り返している。

ていうかほとんど寝てる時間ばかりだったからなんかあっという間だったなと。

あと赤ん坊の学習能力ってすごい。あっという間に言語を聞き取れるようになりました。

まだ練習させてもらえてないから読み書きはできないけど、日常会話はできるようになった。


「今日はハンバーグよ!」


「やったー!ハンバーグ大好き!」


この世界の文化は転生する前と大差ありません。

お父さんが働きに出て、お母さんは家で専業主婦をする。

金持ちだったら家政婦のようなものを雇う、そんな家庭もあると思うけど、私の家はごく一般的な家庭のようだ。


「おいしいー!ママおいしいよハンバーグ!」


「ふふ、喜んでもらえて、ママも頑張って作ったかいがあったわ!」


私はエリスという名を付けられた。

前世ではよく聞いた名前です。

美少女となる輝かしい未来を持つ私としては、まぁ美少女っぽい名前に聞こえるかな?と思えてそこそこ気に入っている。


「ふぅ、ごちそうさまー!もうお腹いっぱい!」


食器を流しに持っていく。

そのあとは自分の部屋にいってベッドの上にごろごろする。

文化というものはある程度収束するのだろうか。

台所もあればベッドもある。

元の世界と比較的変わらない生活を送っている。

電気らしきものも一応あるらしく、電灯なんかも存在している。

この世界にエジソンはいないはずだが、どの世界にも頭のいい人はいるものだ。


ただこの世界には保育園や幼稚園はないらしい。

もう3歳になるのに、入園式を経験する機会はなかった。

というか、学校ってあるのかな?

一応文字らしきものがあるのは見たことがあるから知っているけど。


学校へ行かないと、近い年齢の人と知り合う機会がある気がしない。

近所のお友達なども見たことがない。

そもそも家を出た記憶もあまりないけど。

このままでは人生が退屈だぞ。


教育は国が成長するためには欠かせない要素であり、電気まであるのだから学校もあることを期待したい。

せめて読み書きを学ぶ機会は欲しいなと思う。

文字が読めないと、人生が退屈で仕方がない。

学校があるかは知らないが、読み書きを学べる機会が来るまでは惰性で毎日を過ごすとしようか。


―――――――◆◆◆―――――――


はい、そんなわけで入学式です。

学校はありました。7歳で入学だそうです。

これでやっと私も読み書きを学べます。

といっても、本に目を通す機会は得ていたので、なんとなくですが、ある程度は読むことはできるのですが。


7歳まであっという間でしたね。

毎日同じことの繰り返しだったからでしょうか。

最初は知らない世界ということで見るものの何もかもが新しく感じました。

しかし、似たような文化で兄弟もいない、テレビもない環境では本当に変わらない日々でした。

途中から心が死んでいたといっても過言じゃありませんね。

そもそも寝てる時間がほとんどでしたが。


それでも、寝る子は育つといいますか、私はみるみる成長していきました。

もちろん発育がよくなったというわけではないですが、身長は伸びております。

どうですかね、だいたい120センチくらいでしょうか?

小学1年生と考えるとかなり高い方だと思います。

すでに、私が将来美人になる気配が感じられますね。


「初めまして、エリスです。これから皆さん、よろしくお願いします」


「はい、エリスさんですね。よろしくお願いします。では、次!」


校長先生のありがたい話がおわり、今は教室で自己紹介タイムです。

だいたい人数は30人くらいでしょうか。

みんな同じ7歳ともあって、可愛い子たちばかりです。


小学生だった頃、どのようにして私は友達を作っていたでしょうか。

全く覚えておりません。


はたして私は友達を作ることができるでしょうか。

小学生といえば、足が早ければ人気者になれるイメージですが、それは女の子にも通じるのでしょうか。


「エリカちゃん!初めまして!私の名前はルーシーっていいます!よろしくお願いします!」


「はい、初めまして。丁寧にありがとうございます。私の名前はエリカじゃなくてエリスです。これからよろしくお願いします」


自己紹介タイムが終了し、前の席に座っていた女の子が話をかけてくれました。

名前を間違えられたけど、初対面ではそれほど気にすることではありませんね。

それより、話しかけてくれたことに感謝です。


「私、学校に通うのすごく楽しみにしてたんだー!エリスちゃんが初めての友達!これから仲良くしてね?」


そういって満面の笑みをこちらに向けるルーシーちゃん。

うっ、眩しい……!これが児童の笑顔ですか。

前世で汚れた私の心が清められていくのを感じます。

前世では子供ができる……それどころか恋人ができる前に死んでしまったので、子供の笑顔を見るのは本当に久しぶりです。

私はこんな綺麗な笑顔を浮かべることができるのでしょうか。


「はい、これから仲良くしましょう。私、学校で友達ができるか不安だったのです。ぜひよろしくお願いしますね」


思い返せば前世では笑う機会が少なかったような気がします。

特別不幸だったわけではないですけどね。

こんな笑顔に満たされた人生を歩む。

とりあえずはそれを目標に生きていきましょう。

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