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美少女になれば幸せになれるとこの時は信じていたんだ  作者: 草壁輝美
第1章 女神のような美少女爆誕までの物語
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第18話 ケモ耳幼女が襲われるのはあまりにもテンプレ

アーレンパレスを目指して旅をするものの、位置を特定することができない。

魔族領に侵入するところまではよかった。

できる限り街へ寄らないようにしながら森をメインに旅をする。

アーレンパレスは魔族領の最奥にある。

その知識のみを頼りにシルバーウルフやゴブリンなどの魔物を相手にしつつ、奥へ奥へと進む。

しかし当たり前だけど、そんな知識だけで進んでもアーレンパレスは見つからない。

アーレンパレスの場所を魔族に聞けたら楽なんだけど、街を避けて旅をすると決めたし、もし聞けたとしても人間である私に場所を教えてくれる魔族がいるとも思えない。


結局彷徨うしかない。

この一か月間、魔物を倒して食事をして寝る。

それをひたすら繰り返している。


イライラする。

魔族の気配にあてられているからだろうか。

常在戦場な環境が私の精神を研ぎ澄ます。


「grrrrr……」


もう聞きなれた獣の声がする。

この声はシルバーウルフかな。

どこだろう。


魔獣を殺すことにもなれてしまった。

はじめは生き物を殺すことに多少抵抗があったけど、ちょっと指を振るえば消し飛ぶ存在に対して、気を使い続けるのは難しいことだ。


相手をしなくてもいいんだけど、なんだろう。

見つけたらせっかくだから狩っておこうと、そんな気分になってしまう。


「キャァーッ!!助けて―!!」


「!?」


これは……少女の声?!

どこから……もしかしてシルバーウルフに襲われている?

勇者としての血が騒ぐ。

この声の少女はきっと魔族だろうけど、そんなことは関係ない。

いざ姿を目にすれば別の意味で血が騒ぐかもしれないけど、見て見ぬふりはできない。

なぜこのようなところに少女がいるのかはわからないけど、声の元まで全速力で駆ける。


「gggrrr!!」


見えてきた!

シルバーウルフはまさに魔族の少女へ跳びかかる直前。

もしくは跳びかかった後。

地面からは脚を離し、あとは勢いに任せて少女へ向かうだけの状態だ。

まだかなり距離はあるけど、私の速度ならシルバーウルフが少女へ辿り着く前に追いつき、迎撃が可能だ。


いつもの通り、右手の指先から光の剣を出す。

そして、そのままの勢いでシルバーウルフを切りつけた。


「guxx!?」


返り血がかかると面倒だからね。

胴を2つに割った後、シルバーウルフのそれぞれの半身を蹴りつける。

わたしの蹴りと同等のスピードでシルバーウルフははじけ飛んでいき、森の木にぶつかりそのまま血がはじけ飛んだ。


その光景をみて青ざめる少女。

私はもう血をみるのになれてしまった。

心が汚れてしまったものだ。


「あ……あの……」


「きみ、大丈夫?」


「ひぃっ……!!」


魔族の少女に対してわたしは手を差し伸べた。

だけど、その手を取ってくれることはなく、腰を抜かした様子で震えながらこっちを見ている。

狼の耳を持つ獣人だ。

人狼族だろうか。

人狼族はシルバーウルフを使役していると聞いたことがある。

もしかしたら、あのシルバーウルフはこの子が使役していたのかもしれない。

それだったら、悪いことをしたかな。


「……っ!あ、あの……助けていただいて、ありがとうございました……」


「気にしなくてもいいよ。わたしはルーシー。君は?」


「私は、ウルフィといいます」


「……変な名前だね」


「そ、そんな!」


人狼だからウルフィなのかな。

まぁ覚えやすい名前だとは思うけど。


「でも、ちょっと呼びにくいから、友達からはウルって呼ばれます」


「そうなんだ。それじゃ私もウルって呼ぶね」


頭の後ろがチリチリする感覚がある。

魔族を目にして、私の殺人衝動が刺激されている。

今のところ相手が子供だからか強い衝動はおきていないけど、あまり長い間一緒にいると危ないな。


「ウルはなんでこんなところに?」


「私の一族は、10歳になるとシルバーウルフを1体使役する掟があって、それをすれば大人として認めてもらえるって……。それも1人でしなくちゃいけなくって、私はシルバーウルフがいるこの森でシルバーウルフを探しに来たんです。人狼なら、シルバーウルフを血によって使役することができるから心配いらないって言われて……」


「そっか。大変なんだね」


10歳か。

この子、わたしと同い年なんだ。

全然そうはみえないな。

まぁ、たしかにわたしは10歳にしては身長が高い方だとは思うけど。

でも一般的に10歳の女の子ってこんなものなのかな。


「ルーシーお姉さんは……人間だよね?どうしてこんなところに?」


「わたしはちょっと人探しをしていてね。旅の途中でこの森を通り抜けようとしていたんだ」


「そうなんだ。どこへ向かっているの?」


……どうしよう。

アーレンパレスに向かっていることをウルに言ってもいいだろうか。

元魔王の城へ向かっていることが、ウルはともかく他の魔族に知られるとまずいかも。


「私はアーレンパレスと呼ばれている場所に向かっているの。そこに友達がいるらしいんだ」


考えたけど答えることにした。

現在、道に迷って前に進めない状態であるし、もし場所をウルが知っていれば教えてくれるかもしれない。

知らなくて、さらにそれを他の魔族に知られたとしても、最悪皆殺しにすればよい。

できれば避けたいとは考えているけど、別にそれも必須じゃない。

ここで内緒にしても、話しても、どちらでもさほどデメリットはないから、もしかしたら情報が得られるかもしれないから正直に答えることにした。


「アーレンパレス……」


「知ってる?」


「それはもちろん、魔族でその場所を知らない人はいないと思う……でもあそこに人がいるなんてきいたことがないよ?」


「その場所は誰もいない場所なの?」


「よくわからない……私たちは近づいちゃいけないことになっているんだ。魔族の人はだれも近づかないようにしていると思う」


「それじゃ、そこに誰か住んでいて、わたしの友達もその誰かに連れていかれたのかもしれないね」


「うーん……一応昔話では魔王様がいなくなった後は吸血鬼が住んでいるって言われているけど……」


「吸血鬼……」


魔族の中でも最強の戦士として数えられる一族。

その総数は少ないけど、どの個体も不死性を持っていて、勇者の力をもってしてもその命を奪い尽くせない。

傷つけても再生は一瞬。

その力は途方もなく、腕を振るえば遠くに見える山も真っ二つ。

かつての人魔戦争では、その一振りで何万という兵が葬られたといわれている。

戦争時は相手の吸血鬼が飽きるまで勇者が戦ったことで退けたと聞いてる。

力では均衡していて、勇者も無尽蔵の生命力を持っているから訪れた結末で、まともな生物が勝てる相手ではないって言われている。

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