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04.異変

 俺が家に帰ってきた日、父さんに送ったメールには、日付を超えて、次の日の1時位に返信が帰ってきた。


『よく生還したな。うららちゃんを頼んだぞ。』


 短い文だったけど、多分気力体力共にそれが精いっぱいなんだろうって思う。こんな非常時だもんな。


 それからもメールのやり取りは2度程しかしていない。

 内容は2度共、「折角お前が無事だったのに忙しくてかまってやれなくてすまない」といった謝罪文のようなものが送られてきたのに気にしないで良いと返信しただけだった。



 で、今日はクリスマスイブだ。

 折角のクリスマスなのに、今年は例年と違い、街にも、テレビにも、ネットにも暗い空気が漂っている。

 街中でカップルがキャッキャウフフしている姿は全くない。当然だよな。日々の買い物でさえ、皆ビクビクしてるんだもんな。


 俺はコタとシンと一緒にスーパーに買い物に来ている。

 何を買いに来たかというと…数日分の食料品だ。あと今日はクリスマスパーティーをするのでケーキの材料も買いに来た。

 普段だったらおかんが買い物に来てる。でも、俺や双子は新型インフルにかかって治ったけど、俺たちの母親は両方ともインフルになってない。

 新型インフルは感染したら死ぬ可能性の方が高いヤバいヤツだ。


 幸い、新型インフルから生還した人がまた同じインフルになったって事例はいまだに報告されていないらしいので、家から外に出る仕事は俺たちがやるようになっていた。


「「っていうかさぁ…」」

 双子が口を開く。

「おかんが書いたこのメモ!」

「これが無かったら何買っていいかわっかんね~よな。」

「ってか書いてあってもさぁ」

「「どこに商品があるのかさっぱりワカンネーwww」」


「ガラムマサラって何物だよ!強そうな名前しやがって!」

「それよりバンガのスモークオイルサーディン、瓶のヤツってなんだよ!!」

「アラザンって何物だよ!アラジンの間違いじゃねーのか!?」


 そんな事を3人で言いあいながら、俺たちは広いスーパーをカートを押しながら、それぞれの母親から渡されたメモの商品がどこにあるのか探しまくっていた。



 スーパーにきて2時間半。ようやく食材を買い終えて会計を終え家路につく。


 俺たちが外に出る用事のほとんどをする事になったので、家に帰ったら、あとはおかん達が上げ膳据え膳をしてくれる。ありがたやありがたや。

 という事で俺と双子たちは、双子の部屋でゲームをしてまったりと過ごす。


 夕方になると甘いいい匂いが漂ってきた。


「うまそ~」

 思わずそう言わずにはいられない。

 すると双子も

「「早く食いてぇ!!」」

 と続く。


「うららちゃんのケーキ、マジで美味いからなぁ。」

「なんでパティシエじゃないのかね~。おっぱいボイ~ンのパティシエ…良いなぁ…甘そう…」

 なんて事まで言っている。


「あ~腹減った…ってか喉乾いたな。シン、あそこのペットボトル取ってよ。」

 いや、部屋の中、すぐそことはいっても立って取りに行くのはめんどくさいんだもん。


「やだよ~めんどい!イチが飲みたいなら自分で取りに行けよ~。」

「シンの方が近いだろ~!」

「やだよめんどいよ~」


 どうやら取ってはくれなさそうだ…。

 仕方がない…。


 そこで俺は両手を、某マジシャンのあのポーズをして、気合をいれてあのセリフを言う。

「キテマス!」

「「来るわけ…えぇぇぇっっ!!!!!」」


 …自分でもビックリだよ。

 本当にペットボトルが、俺の手に来てます!

 某生き残った男の子(古い)の映画でよく見るような、欲しいものが手にスッと引き寄せられる感じ。魔法なのか???

 ってか何故だ……。

 今の今まで至って普通な人間だったはずなんだが…。


「「今の…何やった?」」

 双子も、あまりにも驚いてそれ以上言葉が出てこないみたいだ。


「いや、わかんない。このペットボトルが欲しいと思ってキテマスって言っただけなんだが…。」


「イチ、オレたち兄弟みたいなもんだろ!」

「それなのに何で今まで隠してたんだよ!!」


「いや…隠すも何も、俺も今何が起こったのか、微妙に混乱してるんだけど…。俺、今まで普通の人間だったよなぁ?」


「普通かどうかと聞かれたら」

「オレたちはそれぞれ、普通じゃない方に一票入れるぞ。」

「だってなぁ。」

「ずるいよなぁ!」

「「おかんがあんなに可愛くて巨乳なのは許せん!!」」


 いや…それで普通じゃないって言われてもだなぁ…


「ってかこれ、夢じゃないよな?もっかいやってみるか…。」

 そう言って、右手を差し出し、今度はコタの横にあったテレビのリモコンに狙いを定める。

「来いっ!」

 そう言うと、パシッと心地よい音がして、右手の中にリモコンが飛んできた。


「マジか……。」

 俺は超能力者か魔法使いになったようだ…。でも何でだ?


「イチばっかずるい!オレもやる~~!」

 そういってコタがキテマスポーズをやるので、リモコンをテーブルの上に置く。


「キテマスッッ!!」




 あれ?何も起こらない…。


「んじゃオレがやってみる!」

 そう言ってシンも同じようにキテマスポーズをとる。


「きてますぅぅ!!」




 …きてね~な。


「「何でオレ達はできないんだよぉ!!」」


 知らんがな。

「イチ、もっかいやってみてよ」


 シンはそう言ってリモコンを自身の方に手動で引き寄せる。


「来てますっ!」

 俺がキテマスすると、思った通り、リモコンが俺の手に自動的に引き寄せられ収まった。

 なんなんだコレ。


 少なくとも、隔離される以前は出来なかった…。

 その後も色々双子と検証していると、階下からおかんに、パーティー始めるから降りてきなさいと声がかかった。



 ダイニングで俺とおかん、双子とおばさん、おじさんの6人で、乾杯をしてチキンやケーキを頬ばる。


 おかん達は料理の腕はピカ一で、生きててマジで良かったって実感する。

 お腹がパンパンになるまで食べて、生きてるって最高!と思いつつ皆でテレビを見てると、テレビの画面が急に神妙な顔をしたアナウンサーの物に変わった。



「番組の途中ですが、ここで緊急のニュースをお伝えします。

 只今政府から臨時の南海トラフ地震に関連する情報が発表されました。

 東海、東南海、南海地震の想定震源エリアにて同時にスロースリップ現象が継続的に観測され、数日中に南海トラフの連動型巨大地震が起こる可能性が著しく高くなったとの事です。」



 ホントつくづく、日本ってこれでもう終わりなんだな。


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