アリス婚約者選定闘技大会③~闘技大会決勝~
マコトと教授は大会関係者に賄賂を贈りルールを一部変更させていた。
「一部ルールを変更させて頂きます。決勝戦はより観客の皆様に楽しんで頂く為、勝ち抜き戦ではなく、1対1を3戦行い、先に2勝したチームの勝利となります!」
――よしよし。大人って素晴らしいな。
最終戦の組み合わせは
ハワード vs アクセル
マコト vs アレックス
エリオット vs ソウジ
となった。
「第一試合、ハワード選手・アクセル選手。リングへお越しください!」
「アクセルって強いんですか?」
「そうだな。数少ない全属性の使い手だ。」
……そっか。頑張れよハワード
ハワードを墓地へと送り出すマコトとエリオット教授。
一方のハワードは最後の悪あがきを行っている。
「いやだぁぁぁっ無理無理。絶対勝てないよ!」
「大丈夫だ。教授なら痛みなく回復できる。問題ない。」
「その通りだ。安心して死んでこい。」
「勝てませんよ! 痛いのは嫌なんです!」
「ナニを言ってるんだお前は。やられるのは得意だろ?」
「ほう? 噂は本当だったのか。貴様には触れたくないな」
「え? 触れない? 回復は触れないとできないですよね?? 嘘ですよね。嘘だと言ってくださいよ教授!」
「ばっかだなお前は。今のは教授ジョークだよ。安心しろって。」
「私は冗談が嫌いだ。貴様には触れたくないから回復できんな。」
……ハワードの目は既に死んでいるようだ。
「き、棄権します」
「うそうそうそ、冗談だから! 冗談だからね! 審判の方!!」
「冗談……冗談だ…。治してやるから」
「嘘だ! 苦しませながら回復させるつもりなんだ! 俺は騙されないぞ!!」
「ヘイヘイヘーイ? どうしたハワード。人を疑うのは良くないぜ?」
「ちっ…バレたか……」
「あの~ハワード選手早くリングへお願いします」
ハワードは泣きながらリングへと向かう。この2人には2度と関わらない事を心に刻んでいたという……。
「行ってきます…」
「「逝ってらっしゃい!!」」
笑顔で送り出すマコトとエリオット教授。鬼である。
「そういえば、教授ってこの世界で何番目位に強いんですか?」
「属性の相性があるから何番というのはないな。」
ハワードは戦っている。
「ところで教授。訓練の成果はどうでしたか?」
「ああ、お前は面白いことを考えるな。既に完成させたぞ。」
ハワードは必死に戦っている。
「流石ですね教授。学会には発表しない約束、忘れないでくださいね」
「当然だ。私は約束を守る男だぞ、ところで酸素と二酸化炭素の他に…」
…ハワードは敗北した。
「「おしかったな(ね)。勝負を分けたのは小さな運の差だったな(みたいだね)」」
「全く歯が立ちませんでしたよ! 本当に見てたんですか?! イタタッ…教授治してくださいよ!」
「ふむ。どれどれ超級ヒール」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「うむ。間違ったかな?」
……教授の地獄の回復魔法により悶絶するハワード。彼の髪は既に真っ白になっている。
きっと白髪の方が似合うから問題ないな。
「それでは第2試合を始めます!マコト選手・アレックス選手、リングへお越しください!」
「さて、次は僕の番ですね。教授、約束を忘れないでくださいよ。」
「大丈夫だ。私は約束を守る男だぞ。」
不気味に笑う教授。不安だ…。だがここで負けるわけにはいかない。リングで対戦相手のアレックスを睨む。が、アレックスはニコニコしている。
「おう!楽しみだなマコト、恨みっこなしだぞ!!」
「…ソウジの情報収集が目的だから第3戦のためにアレックスは棄権ですよね?」
「おう! 全力で戦うぜ!! 敬語はいらないぜ!!」
――ダメだこいつ。脳みそまで筋肉で出来てやがる。
マコトはこの大会の前、アレックスに鍛えて貰っていたが一度も勝つ事ができなかった。
アレックスは痛みを感じないのか、足や手を破壊しても狂々として襲い掛かってくる。
一度、2回分のオーラを纏めて放ち、下半身を消滅させてやったが
「おう!今のすげぇな!」――とか言って回復してまた襲ってきた。その姿はまるでゾンビ……この男には何をしても無駄なのである。
だが、僕は負けるわけにはいかない。必ず優勝する。どんな手を使ってもだ!
「それでは、試合開始!」
……マコトは小声でアレックスに囁きかける。
「アレックスさん、いつも通りに勝負を始めましょう?」
「おう! いいぜ!!」
――かかったな馬鹿め!
いつも通りの勝負とは、最初にお互い全力で拳を合わせてから始めるという習慣のことだ。一撃で決めてやるぜ……
オーラを全力で練る。
「いくぞアレックス!!」
次の瞬間互いの距離が0になり拳と拳が交わ――――――ることはなかった。
アレックスの拳でマコトは破裂していた。
「おう?」
アレックスと拳が交わる瞬間――マコトは全オーラを頭部へと移し、アレックスの一撃をまともに受けたのだった。
「ひぃぃぃぃ痛いよぉぉぉぉぉぉ」
首だけになったマコトにエリオット教授が速攻で近寄ってくる。
「おい審判! 明らかにアレックスの反則負けだ! 早く…早く判定しろ! 回復が間に合わなくなっても知らんぞ!」
「ア、アレックス選手の反則負けとなります! マコト選手の勝利です!!」
エリオット教授が涙を流しながら
「大丈夫か?! すぐに治してやるからな! 気をしっかり持て!!」
と臭い芝居をしている。
観客への効果はバツグンだ。
『おいおい、アレックスって鬼だな』
『あ、ああ。自分の生徒をあんなに笑顔で粉々に……』
『俺ちょっと偉い人に抗議してくるわ…あんな人が理事長やってる学校に子供預けられないよ…』
―――フハハハ!チームの誘いを断った事報いを受けるがいい! 裏切者は許さない。絶対にだ!
主人公は根っからのクズだった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
――フフフ、打ち合わせ通り迫真の演技だぜ。何せハワードのを再現した演技だからな。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
――それにしても治るの遅くないか? 痛みを軽減させると回復が遅くなるのか?
「あ゛あ゛……(ちらっ)」
「これは…素晴らしい……!!肉体の構造がまるで違う。なんだ! なんだこれは!! 凄い…凄いぞこれは!!」――――エリオット教授がフル勃〇して変態顔になっていた。
……こ、これはヤバイ。
「アレェェェェックス!! 回復! 早く!!!」
「必要ない! 私だけで十分だ!!」
「お、おう?! デミゴッドヒール。」
「や、やめろ! 治すな! もっとゆっくりだ、もっとゆっくりじゃないとダメだ! やめろおおおぉぉぉぉ!!」
観客への効果はバツグンだ。
『お、おい、なんか揉めてるぞ』
『エリオット教授は人格者だ! 早く治すと副作用があるに違いない…』
『おのれアレックス!!』
『あれ? エリオット教授なんか勃〇してね?』
『は? いやいや、してないじゃん。何言ってんだお前は?!』
『教授のあんな悲しそうな顔初めて見たわ…』
――――すまぬ…すまぬアレックス………。
無事|(?)に第2戦に勝利したマコト。
勝負はついに最終戦。エリオットvsソウジである。
「それでは最終戦を始めます!エリオット選手・ソウジ選手、リングへお越しください!」
いよいよ最終戦である。胡散臭いマジシャンの様な格好をしたエリオット教授と右手に包帯を巻いた中二病勇者がリングの上に上がる。
「やあ、会いたかったよソウジ君」
「その前に1つ聞きたいことがある。もしかしてあいつの名前、サイトウマコトなのか?」
「ん? そうだが?」
「そうか…見ツケタ……ミツケタゾ! サイトウマコト!!」
異世界でハーレムを作っていたのに……あいつのせいで何もかも失った…
エマ…レイラ…エミリー…シャーロット…リリィ――許せない!あいつだけは許せない!!
ソウジの体から魔力が溢れ出る。赤、緑、青、黒。混ざったものが一部茶色ではなく虹色になっている。
「素晴らしい…素晴らしいよソウジ君!! なんだ!なんだねその魔力は!! 同時詠唱かね?! どうやっているんだ!!」
「五月蠅い…この後大事な用事ができた。すぐに終わらせるぞ」
「あー、んー、ゴホン!その前に勝利条件に1つ付け加えないか?」
「五月蠅い…審判、早く始めてくれ。」
「ほう?受けないというのか。この闇の儀式を?」
「なん…だと……闇の…遊戯だと…」
「それでは試合開…」
「待ってくれ審判!おい…貴様…闇の…遊戯…だと…」
「そう…悪魔の契約……と言った方が分かりやすいかな?!」
「ぐああああぁぁぁ!!沈まれ…沈まれ俺の右腕……!! 貴様! なぜそのことを! まさか……まさか貴様は組織のものか?!」
「フフフ…知りたければこの契約にサインするが良い。なに、敗者は勝者に何をされても文句は言えない。絶対服従と書いてあるだけだ。サインは現代語で構わないぞ。」
「こ、これは! 失われし古代のメルホベット言語で書かれた文章! なぜ貴様がこの文字を?! こ、こいつは驚きだぜ。い、いいだろう、サインしてやる! 詳しくは勝った後に聞かせて貰おう! もちろん勝つのは俺だがな!」
(本当にちょろいなこいつ。マコトに言われた通りのセリフで契約しやがったぞ――メルホベット言語ってなんだ……辺境村の田舎言葉で書いただけなんだが‥)
「け、結構だ。始めようじゃないか。」
エリオット教授はドン引きしていたが襟を正し戦闘態勢に入る。
「そ、それでは試合開始!」
「うおおおおおおおおおぉぉぉ!!! デスウインドウフレィィイム!!!」
ソウジから出された炎の魔法がエリオット教授を包む。
『お、おい! 出たぞ!魔界の風と炎が!!!』
『そ、そんな! 魔界の風と炎を同時に出せるなんて……ソウジは悪魔の子だ!』
『イヤァァァ!! エリオット教授を殺さないでぇぇぇ!!』
観客が悲壮感に覆われる中、エリオット教授を包んでいた周囲の炎が消える。
「ふむ。なるほど。検証結果通りだな。」だがエリオット教授には傷1つない。
「な、なんだと! ま、まさかお前…2000年前のパラディノン神殿の闇の科学者の末裔か…? 馬鹿な……俺が……俺が絶滅させたはずだ!!」
教授は全身に雷魔法をかけ、一瞬でソウジの背後を取る。
「嗚呼、そういうのやってないんで大丈夫だ。」
エリオット教授がソウジの体に触れ「…15連ウインド」と呟くと、ソウジは全身から血を流し気絶した。
――マコトのお得意だった|体内発生魔法の改良版《毛穴から魔法流し込むVer》である
「そ、そこまで!!」
「ふむ。ではソウジの身柄は確かに預かった。サラバだ!」
既にエリオット教授はソウジを攫って何処かへ行った。
おそらくはどうせ研究所か何処かで解剖してるだけだろう!
……全く問題ない。やった! 優勝だ!
「お義父さん! やりましたよ! アリスさんを僕に下さい!」
「うむ! みごとじゃマコトチーム! よかったのアリス。あれ? アリスはどこじゃ?」
「ア、アリスお嬢様でしたら、ソウジ様の初戦が終わった後に付き人とトイレに行ったまま戻ってきませんが??」
「付き人ってアルフレッドの事かの? なぜ男女でトイレに行くんじゃ?」
……アリスとアルフレッドが見つかったのは10年後。辺境の村だった。その時2人の間には子供が3人いたという。
~間~
優勝したマコトは激怒した。命をかけて勝ち抜いたにも関わらずアリスが行方不明となってしまった。しかも男性と一緒にだ。
「貴族が約束破るなんて話聞いたことありませんよ? ふざけてるんですか。返答次第では僕は世界を敵に回す覚悟がありますよ。」
「い、いや…その…おかしいの~」
「この闘技場には多くの目撃者がいるんですよ。どう責任取るつもりなんですかミズーリさん!? 返答次第では、僕は絶対に貴方を許せませんよ!!!」
「いや~すまんの~、何か別の方法で褒美を与えよう。コレ、金貨を100枚ほど持ってまいれ。―――アリスが見つかり次第また連絡させて貰うからの…今はこれで手を打ってくれないか…?」
「(チっ…)今回はとりあえずこれで引き下がりますよ…」
既にアリスが駆け落ちした事実は変わらない。マコト金貨100枚で手を打った
――――と、闘技場にいる誰もがそう思った。
《5日後、ミズーリの町からダンジョンが消えた。》