アリス婚約者選定闘技大会②元勇者ソウジ現る
~大会開催前日・予選当日~
<朝・宿屋>
アレックスに修行を頼み込んで正解だったな…。なんとか戦闘力250まで上げる事が出来た。
どうやら肉体限界はLV100と同等までしか上げる事はできないらしい。その代わり応用力が増えるのが発見できたのはよかった。
「おばちゃん、新聞ちょうだい」
「アイヨ!!」
元勇者の情報が公開されている。
①元勇者ソウジ
②風・火・雷・闇の4属性魔法を操れることが確認されている。
③右腕の封印が解け始めると奇妙なことが起きる
…なんだよ奇妙なことって。新聞記者もっと取材しろよ。
新聞によると、大会に出場できるのはたった4組。予選参加者はなんと100名だ。
LV100が上限となった今、誰が優勝してもおかしくない。
元勇者チームはシードで出場のため、25名に分かれてバトルロワイヤルを行うようだ。
<予選会場>
予選会場はドーム状の建物で中央が円形の芝生、周辺は観客席だった。
本選では中央に岩のリングが用意されるらしい。
(本選はリングって…土属性排除されてんじゃん)
マコトは予選会場の入口で『零式』と名付けた技~戦闘力を0に偽装して存在感をなくす技~を使用して会場に入ると、隅の方へ移動する。
――よし、3人くらいに減るまで気配消して隠れてよう。
似たような事を考えているのか、何人かが土魔法で地面に隠れている。
「それでは、予選開始!」
~~名も無きモブ①~~
やったぜ…この勝負は貰ったな。なにしろ俺は風と雷属性だ。属性の組み合わせは最高に近い。勝負開始と同時に風魔法を発動する。高速での移動―――見切れまい。
~~名も無きモブ②~~
やれやれ…この勝負は貰ったな。なにしろ俺は風と雷属性だ。属性の組み合わせは最高に近い。勝負開始と同時に風魔法を発動する。高速での移動―――見切れまい。
~~名も無きモブ③~~
ふふふ…この勝負は貰っ…
開始と同時に皆が高速戦闘を始めた。参加者はほぼ全員風属性のようだ。
――はいはい。こうなると思ってました。なんか風属性って反則だよね。
風属性以外は自身に魔法を纏うと自滅する。と新聞に出てから『風属性最強説』が流れ始めていた。
過去に剛炎の魔女と呼ばれる女性が隕石魔法という魔法を唱えた所、跡形もなく消えてしまったそうだ。この世界の魔法は衰退し、殆どが禁忌魔法指定となっていた。
などどマコトが考えていると、既に残りは3人ほどになっている。
――そろそろいいか。
……この勝負貰ったな。何しろ僕は音速で動ける。なぜかアレックスには1度も勝てなかったけど。
お約束である『首トン』で勝負を決めてやるぜ!!
トントンっと気絶……しないだと………?。
対戦相手に『首トン』をしても痛がるだけだった。
3人目はオーラを手に溜め全力で『首トン』をする。
――これで残り2回か…どうだ?!――――クビちぎれた…やだぁ……。
「はやく!はやく回復魔法をお願いします!」
この世界は脳か心臓が残っていれば再生できる。だが瀕死の怪我をして一定時間が過ぎると死んでしまう―――その時間僅か10秒!!
「どなたか! どなたか回復魔法の使い手はいらっしゃいませんか!!!」
マコトは必死で叫ぶ。リングの中心で必死に叫ぶ。
「おう! デミゴッドヒール!!!」
「アレックス! さすがだぜ!! ここに来てるって信じてたぞ!」
アレックスに回復魔法をかけてもらった人が『グァァァアア』とか言ってる。
回復されてるのにメッチャ痛そう。怖っ…。回復魔法って絶対バグってるよね。
観客達はドン引きである。
『おい、あいつ殺そうとしたぜ…この大会って人殺していいのかよ?』
『ばっか、回復魔法があるからだろ…残りHPが1%未満は強制睡眠になって痛みもない…そういう話だったじゃないか』
『回復して1%超えたら痛みが出るって事なの…回復魔法エグすぎるよ…。もう見てらんない………』
フ―、間一髪だったぜ。――よし!予選を再開しよう。
「「「「「 棄権します!!」」」」」
地面に隠れていた人達も含めて皆が一斉に棄権した。
<大会当日>
決勝戦の組み合わせが発表された表を見ると、決勝まで元勇者ソウジと対戦しない事がわかった。
――2回勝ち抜けば脱DTか……。
ハワード、エリオット教授と合流したマコトは真剣である。
その顔は醜く歪んでおり、もはや主人公に見えない。
(1回戦からオーラぶっぱなして終わらせてやるぜ)
アリスのお父様らしき人が試合開始の挨拶をしている。
「ワシはミズーリ・コリンズじゃ。まずは強者が集まってくれたことに礼を言うぞ…(長々と挨拶をしている)………
最後に、一部ルールを変更するぞ。相手四肢を破損させた場合、瀕死にした場合、反則負けじゃ。。」
――さて、帰るか。
「おい! 何処へ行く貴様!私との約束を忘れたのか!」
「いやいや教授! 途中でルール変更とかズルくないですか? 汚い。大人は汚いよ…」
「まあ運営が間抜けなのは同意だ。雷魔法をうまく使えばほぼ痛みはないからな。全く…『人体実験をまるで行っていない』ようだな…。」
サラッとエリオット教授が『人体実験』とか言った気がしたが…。そういえば噂で………
「ま、まさか…最近ミズーリダンジョンで行方不明者が多いっていう噂の犯人は…」
「知らんな。さっさと行くぞ」
………間違いないな。今は闘技大会に集中だ。よし、忘れよう。
勝ち抜き戦だったので1回戦はエリオット教授に3人抜きしてもらった。
教授はなぜか雷を身に纏う事に成功しており楽勝だった。
「さて、元勇者の戦いを見学しますか教授。」
「ふむ。楽しみだな。右腕の封印とやらに非常に興味がある」
「あ、それ嘘ですから気にしない方が良いですよ。」
「なぜお前がそんなことを知っている」
「神様から聞きました。そんな事より、始まりますよ」
「それでは第1試合ソウジ選手VSモブ選手の試合を始めて下さい! 相手選手を気絶、もしくは10カウントで勝利です!」
初戦からソウジが出てきた。相手はダンジョン最下層を攻略しているモブだ。
~~モブ~~
俺はモブ。無属性魔術師だ。身体強化を中心にしていたが世界の異変のおかげでさらに2つの属性を手に入れた。
火と光属性。この世界では扱い辛いと言われている火属性だが、回復魔法と併用すると部分的にだが昔のように炎を纏うことができる。
この事実をエリオット教授に教わってから更に強さが増した。
足元を爆発させ瞬時にソウジの前へと接近する。圧倒的な速度で自慢の蹴り、考えうる最高の奇襲…捉えた。
だが、捉えたと思った蹴りは宙を切った。
既に迅速のアレックスと同等のスピートが出せるはず…。
モブの自尊心にヒビが入る。
――悪い夢でも見ているのか。
30程打撃を放つ、どの攻撃もソウジに届かない。
パワーを抑えスピードを重視した。
それでもモブの攻撃がソウジに届くことはない。
絶望的な力の差、相手はまるで消耗していない
--いいだろう。認めよう。スピードでは貴様がNo.1だ。
「攻撃だ!攻撃してこい!受けて立つ!!」
パワーであれば此方が有利なはず。即座に両手に炎を纏う。
カウンターで決めてやる。相手は圧巻のスピードではある。だが、攻撃直後であれば硬直ができるはずだ。
一撃だ。瞬間の隙間を縫って一撃で勝負を決める。
~~~~~~~
――ソウジは教授と同じく雷で身体強化をしているな。移動速度がおかしい。おそらくモブの負け。
ここからはヒット&アウェイで勝負を決めに行くだろう。
隣の教授も同じことを考えているようだ、珈琲の用意を始めている。
予想とは違い、ソウジの手から火が放たれる。モブの表面を『丸焼き』にするのを見たエリオット教授が
「悪手だな。同属性は耐性があるから火傷さえしないぞ」と解説してくれる。
モブの表面から炎が消えると……
モブは|立ったまま気絶していた《・・・・・・・・・・・》。
「勝負あり!勝者ソウジ選手!!」
「ば、ばかな…ありえん。」
「う、うそだろ…あれは…」
教授とマコトが驚愕している中、ソウジが小さく呟く。
「フッ…魔界の炎だ。」
「そ、それでは第2試合!ソウジ選手VSモブ2選手の試合を始めます 試合開始です!!」
続く第2戦。今度はソウジが速攻を仕掛ける。風魔法で相手の顔に一撃入れる…と………。
…なんと相手がそのままその場に倒れてしまった。
「フッ…魔界の風だ。」
――あ、あの中二病やろう……あれは確実にやってやがる。
とんでもない実力者じゃねーか。
ソウジはいきなり「くっ…これ以上は…ダメだ…、右腕の封印が…。」と言い始め第3試合を棄権した。
交代したアレックスが激闘の末に最後の1人を倒して決勝進出を決めていた。
教授はマコトが驚いてはいるがそれが自分の驚きとは違う事に気が付いていた。
「おい、お前あまり驚いていないな。何が起きたか教えろ。」
「あ、ああ。恐ろしいやつですね。まさかあの方法を使うなんて。」
「教えろ!今すぐにだ!」
…マコトは真顔になり、エリオット教授に真実を告げる。
「教授……酸素と二酸化炭素ってご存知ですか?」
~説明中~
「ま、まて。つまりこういう事か」
――フッ…魔界の炎だ。(酸欠だ)
――フッ…魔界の風だ。(圧縮した酸素で過剰摂取だ)
「あ、はい。そうですね。」
「ば、ばかな‥…そんな文献見たこともないぞ。しかし魔法を纏えなくなったのも…まさか……」
「恐らく…世界の異変による新しい事実かと…。」
次回~決勝戦~
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