アレンピック 残りの1チーム ハジメの場合①
初めてヒロインを登場させてみました。
転移7日目。
僕の名前はハジメ。異世界から来た勇者の1人だと思う。なぜか記憶がちょっと曖昧です。でもたぶん神様が僕の存在を忘れてたんだと思います。
なぜかって? それは僕が弱くて無名なボッチだったからさ。
この世界でもボッチである。『田舎から出て来たばかりでよくわかりません』というテンプレを元に1人でダンジョン探索者として生計を立てている。
僕が前の世界で無名だったのには理由がある。貰ったチートが最悪だったのだ。
神様から貰ったチートスキルは四聖召喚(強制)らしい。
メッチャ強そうでしょ? 僕もそう思った。強制召喚された四聖獣に襲われるまでは。僕のチートスキルはこんな感じです。
チートスキル解説
※四聖召喚(強制)
四聖が強制的に召喚され続ける。白虎は一定量の餌(現金)を与えないと召喚者を襲う。朱雀、玄武、青龍も召喚される。四聖獣が死ぬと召喚者も死ぬ。
フフッ……。そうです。強制奴隷スキルなんです。チートでも何でもなかったんです。
正直、最初は白虎をモフモフしながらのスローライフ系異世界冒険録だと思ってました。
でもいざ召喚された白虎を見るとヤバい。もうヤバい。超ヤバい。
言葉の通じない超デカい虎の化け物が僕の後ろにずっといるの。24時間ずっとだよ。
しかも聖獣は基本的にモンスターにしか見えない仕様になってんの。
あ、白虎が後ろで涎垂らしてきたのでダンジョンいきますね。
現在僕がいる街はクロエルっていう街です。ここにはダンジョンがあり、構造は入るたびに変わるらしいです。さっそく1階層に潜るとワイバーンが出てきました。
ワイバーンですよ…。ここ1階層なんだけど。このダンジョンはマジで鬼畜仕様ですよ。
「ガォォォオオオオ!!!!」
後ろで白虎さんが吠えてらっしゃいます。
今、白虎さんが戦ってくれると思いましたか?
残念です。
こいつはモンスター相手に『逃げないでこいつを殺せ』と威嚇してるんです。
「もう実家に帰りたい。」
チートスキルに合わせて唯一僕が持っている武器。それは聖剣『ぺクスカリバー』です。
だっさい名前なんです。たぶんこれ聖剣じゃないと思います。
「グルルゥゥ……」
あ、すみません。白虎さんが後ろから襲ってきそうなのでワイバーン倒しますね。
『聖剣解放』
ぺクスカリバーを構えてワイバーンに突っ込む。ワイバーンの攻撃?
ハッハッハッ。馬鹿を言っちゃいけない。
我慢ですよ。
無駄に頑丈なのだけが取柄ですから。急速接近してぺクスカリバーを1振りする。
「ショラァァアアアア!!」――ポッキーン。
※聖剣『ぺクスカリバー』
玄武が宿った剣。一撃で相手のHPを半分削る。使うと折れる。再使用にはチャージ(最大MPの9割)が必要。また、再使用には1時間待つ必要がある。
※他の武器を装備できなくなる。2日に1回使用しないと剣が召喚者を呪う。
折れるぺクスカリバー。スライムさえ倒せない至高の聖剣である。
「ウォォォオオオオオオオ!!」
殴る。ひたすら殴る。ちょっと泣きながら殴り続ける。
「キュ、キューン」――ワイバーンが弱音をこぼす。
その時、白虎氏が吠える。
「ガォォォオオオオ!!!!(もういい。倒される前にさっさと逃げるんだ。)」
ワイバーンが一目散に逃げだした。
「逃がしてたまるかぁぁ!!」
だが追いつけない。ワイバーンさんマジ速い。
いかん。このままでは逃げられてしまう。素手でスライムでも狩るか? このダンジョンでワイバーンが何をドロップするかは知らない。でもスライムのドロップは銅貨1枚。そして白虎氏の食費1週間で金貨1枚。――――もし逃がしたら過労死してしまう。
(どうすれば倒せる。いや、どうすれば追いつける? そうだ。この世界に来てから魔法が使えるようになったらしいじゃないか。使い方はよくわからないけど。これしかない!!)
「燃えろ燃えろ燃えろぉぉ!!」――しかし何も起こらなかった。
「ファイア! メラメラ! フレイム!」――しかし何も起こらなかった。
ダメだ。魔法なんてなかったんや……。
しかしここでハジメは思い出す。この状況を打開する祖国、日本の大剣豪が言っていた策を。
遙か昔、ハジメの生まれた日本という国では、最強と呼ばれた宮本武蔵という大剣豪がいた。
その大剣豪が最も強いと断言した策を。
ここはきっと剣と魔法の世界だ。ファンタジーの世界だ。僕もできればこんな方法は取りたくなかった。でもしかたないじゃないか。生きる為には手段を選んでる暇はないんだ。すまんなワイバーン。
「そいやぁぁああああ!!!!!!」
「グギャァァ!!」
ワイバーンにHIT。足元にあったダンジョンの石を投石しますた。
「フハハハ!! 翼に穴が空いたぞ。もう飛べまい! 喰らいやがれ。」
江戸時代の末期。江戸幕府が滅んだ時に、偉い人がこう言ってました。「勝てば官軍。」だと。
そう。許されるのだ。どんなに汚い方法でも勝てば許される。これがジャパニズムスピリットだ!!
※冗談です。怒らないでください。
「フハハハハ!! フワッハッハッハァァ!!」
投げる。石を投げる。足に、翼に。なぜこんな簡単な方法に気が付かなかったのだろうか。殴るより石を投げた方が痛いに決まっているじゃないか。
「グギャァァ……」
さらばワイバーン。金色に光る1枚のメダルがドロップされる。やった。金貨1枚ドロップだ。さすがワイバーン。これで暫く生活できる。
目に見えない速度で白虎氏がそれを捕食する。
泣きたい。
その日、他には雑魚モンスターしか出てこなかった。
~攻略者の宿~
クロエルのダンジョンには攻略者の宿という施設がある。攻略者なら誰でも銅貨1枚で宿泊できる。食事も銅貨1枚。1日銅貨2枚で暮らしていける。
安い。食事は乾パンとスープだけだが、水は飲み放題だ。
そしてここには従業員であるレベッカという女性がいる。
「おじさ~ん、大丈夫ですかぁ~?」
え?
可愛いロリ系? ボインのお姉さん系キャラ?
それともエルフ系かって?
残念。この子は…………なんと黒ギャルです。
「あ、大丈夫です。食事ください。」
何がファンタジー世界だよ。絶対おかしいよ。この世界バグってんじゃないの!
「そうなんですかぁ~。ここのダンジョン死亡率高いんで気を付けてくださいよぉ~。おじさんはもう目が死んでるけどぉ~(笑)。」
僕が前の世界から転移したクロエルの街。ここは5つの大都市の中で、断トツに死亡率が高いらしい。
そりゃそうだ。1Fからワイバーンの出る壊れ仕様なんだから。噂では20歳以上の男性がこの攻略者の宿に2週間以上連続で泊まるとなぜか死ぬらしい。酷い噂だ。
朱雀のせいで誰ともPTも組めないし。もうやだこんな生活。
※朱雀の特性、PTの装備が時々燃えてなくなる。
このスープなぜだかいつもよりしょっぱいや……。
(もう実家に帰りたい。)
そう思いながら部屋へ。そういえば、僕はこの世界でイベントというのに出会ったことがない。普通なら、ここで高レベルの人たちにレベッカちゃん辺りが絡まれる→助ける→ハーレムルートになるはずなのに。
もう考えるのはやめてぺクスカリバーにチャージしてさっさと寝よう……。なんだか今日は凄く眠いや……。
~ハジメ就寝中~
「奴は寝ているか?」
「ぐっすり寝てるはずですよ。晩ご飯のスープに大量の睡眠薬を投入しときましたから。それでは予定通りにお願いしますね。」
レベッカと怪しげな男2人がヒソヒソと宿で話し合っている。クロエルの街は弱肉強食である。高そうな剣を持ち弱そうなハジメは、今まさに暗殺されそうになっていた。
男2人はすぐにハジメの部屋へ行くとノックをする。返事はないようだ。
「へへへ、寝てやがるな。奴には死んでもらおう。剣だけ無くなると不自然だからな。」
人が死ぬ方が不自然なのだが、そんな事は気にしていないようだ。
男がハジメの剣を手に取る。
「へへっ……良い剣じゃねぇか。」
すると、まるで剣が意思を持っているかの如く男のクビを刎ねる。
「お、おい!! チッ……これは魔剣のたぐいだな。調べもせずに剣に触るとは馬鹿な奴め。」
仲間が死んだのに、もう1人の男は冷静そのものである。男は自分の腰から剣を抜くとハジメに切りかかる。――――ガブッ。
すると、まるで其処に獣がいたかの如く男の頭が消える。
夜が明けるころには男2人の死体は無くなっていたという。
~翌日~
大量の睡眠薬を飲まされたのにハジメ氏の朝は早い。四聖の奴隷生活が身に染みているからだ。寝坊して金欠など許されないのだ。
目が覚めるとすぐに食堂へ。時間が惜しいのだ。一刻も早くダンジョンへ稼ぎに行かなければいけない。
「おはようございます。食事ください。」
レベッカが驚いた表情でハジメを見ている。だがハジメは違和感に気が付かない。
「は、はい。どうぞ。」(やっぱり。この人何かおかしい。)
昨晩、いつまでたっても男2人が返ってこないので不思議に思ってハジメの部屋を覗くと、この男は何事もなかったかのように寝ていた。間違いなく男2人はハジメに消されたはずなのに。
冷や汗をかきながらも食事を出すレベッカを気にする事もなく、ハジメは平然とそれを食べてまたダンジョンへ向かっていった。
(ダンジョンで後ろから攻撃してみようかしら。)
レベッカは悲惨な未来が待っているとは夢にも思っていない。
(どうせ遠距離から銃で狙い撃ちするだけだし~。)
過ぎた好奇心は身を滅ぼす。レベッカはこの後の行動を後悔する事になる。
ハジメはダンジョンで石を拾ってはスライム投げる。
クロエルのダンジョンは9Fまでしか到達者がいない。しかも9Fに降りて戻ってきたものは殆どいないらしい。
何階で事故級のモンスターに遭遇するかわからない為、5Fまでしか進まないと決めているハジメは石を拾ってはモンスターに投げを繰り返している。気分は作業ゲーである。
その遙か後方。レベッカは銃を構える。魔法で発射音が消せるので、どのタイミングで攻撃されたかはわからないはずだ。
「さて……お手並み拝見と行きましょうか。」
ヒロインの性格は?
①ツンデレ
②クーデレ
③ヤンデレ
④正統派
⑤チョロイン




