2度目の転生初日
「今日も綺麗だな~。空が。」
何もない荒野に転送されたマコトは初日から現実逃避をしていた。
自然と頬から涙が零れる。何が原因だったのだろう。自分が何か悪い事でもしたのだろうか?
「また最初からか……。」
レベルが取り上げられたという事は、また1からやり直しだろう。年齢も既に20歳だ。
魔法が使えないなら剣士しか道はない。幸い、今回は魔王討伐してこいとは言われなかった。ステータス次第では農民にでもなろうと思いながらポケットに入っているステータスを見る。
「どれどれ、ステータスどんなもんかなっと」
齋藤誠
戦闘力:30
所持金 銅貨3枚
ん?見間違いかな?マコトは目を凝らして再度ステータスを確認する。
齋藤誠
戦闘力:30
所持金 銅貨3枚
「あれ?これバグってんじゃない?」
落ち着いてよく考えよう。『神様は似たような剣と魔法の世界』と確かに言っていた。
つまり………どういうことだ?戦闘力?さっぱりわからん。
所持金にしても、前回の世界では
プラチナ金貨(流通なし)>>金貨(100万)>>銀貨(1万円)>>銅貨(100円)
つまり、所持金300円ってこと?マコト君はもう20歳なんだよ。
汗と涙が止まらない。
なんだよ20歳の全財産が300円って。わからない。何もわかりたくないよ。
涙が止まらない。止まらないよ。。。
マコトは唯一の個性だった火属性魔法を唱えてみたが何もおこらない。
神様と再会してから3度目の絶望を味わったマコトはとりあえず太陽に向かって歩いていく事にした。
荒野…荒野……荒野………圧倒的荒野!!!
すでに歩き始めて1時間が経過していた。モンスターとも遭遇しない。
「これは初日でご臨終ではないでしょうか…」
白眼になりながらも歩き続けるマコトの視界に土煙が映る。即座にマコトは土煙の方向へと走る。最後の力を振り絞って全力で。
~~~エリオット教授~~~~
希少な薬草があると聞いて辺境の村へ行っている間に世界に大きな異変が起きた。魔法が手からしか出なくなったり、回復魔法で手足が生えるようになった。300程あった私のレベルもlv100になっている。私の好敵手に剛炎の魔女と言われた女がいたが、超級火炎魔法を唱えたら炎に巻き込まれて死んでしまったらしい。
急ぎ辺境の村から都へと馬車を走らせた。私の得意分野は風魔法だから問題ないが、この世界に何が起きているんだ。急ぎ馬車を走らせていると、何もない荒野に奇妙な青年がいた。
不思議に思ったが、危険性を考慮してステータスカードを見たが、戦闘力30とかいうふざけた表示だった。話を聞くと、その男は火炎魔法を得意としていたが突然使えなくなったらしい。
私の好敵手であった剛炎の魔女と元同属性か。若干の同情したも含め男を馬車に同乗させてあげた。ふむ。同情したから同乗させたか。フフフ、我ながら傑作だな。
それにしても…気になるステータスカードだな。魔法で寝かせて調べさせてもらおう…。
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…ご臨終待ったなしの状況だったけど、なんとか馬車に乗せて貰えた。
隣に座っている貴族っぽい人が独り言をボソボソいいながら笑ってて怖い。
(コートを着ていて、マジシャンハットを被って、片目だけメガネのようなものをしている。髪はくせ毛で肩の上まで伸びてるイケメンか…)
「あの、有難う御座います。おかげで助かりました。」
独り言が終わった段階で声をかけてみる。
「いや、良いんだよ。魔法が使えなくなった挙句、こんな荒野を1人で歩いている君には同情してしまったよ。だから同乗させてあげたんだ」
――フフフ、と笑う男。こいつはヤバイ。若いのに親父クサイ臭いがプンプンする……。
「あ、有難う御座います。もうダメかと思いました。自分はマコトって言います。よろしければ恩人の名前を教えて頂けますか?」
男は『今ので笑わないとはこの男おかしな奴だ』という目線をマコトに向けながら
「私はエリオットだ。様々な都市で教鞭をとっている。君はどうやら疲れているようだ。着くまで寝てると良い」
お言葉に甘えてマコトは寝る事にした。オヤジギャグを聞くより揺れてる馬車の方で寝る方がマシだと思った。
<都市ミズーリ>
「おい、着いたぞ。起きろ!」
エリオットに起こされたマコトは礼を言って馬車から降りた。
街の入口でステータスカードを確認され、犯罪履歴を調べられるがどうやら問題なく入ることが出来きるようだ。
エリ……なんとかと別れたマコトは近くの親切そうな男に声をかける
「すみません?お金を稼ぐにはどうしたらいいですかね?」
「なんだ兄ちゃん。決まってんだろ。ダンジョン行って稼いでくるんだよ。」
親切そうな男にダンジョンまで案内してもらう間にマコトは以下の事実を把握する。
①最近この世界に様々な異変が起きた。
②モンスターはダンジョンにしか出ない。最下層のコアを破壊するとダンジョンは無くなる。(現在発見されている最下層は100階)
③ダンジョンには基本的に地下しかない為、入口に必ず受付がある。
――思ったよりメッチャ平和だな
どうやらダンジョンから無限に資源が取れる為、争いなどはなく平和な世の中らしい。
新しいダンジョンができるとそこから一気に発展するらしい。受付まで案内してくれた親切な男に宿屋の相場を聞いたと所、30銅貨で泊まれるらしい。お金が足りない。。
<ダンジョン受付>
「すみません。ダンジョンは入りたいんですけど?」
「はい?その恰好で行くのですか?いくら皆魔法が使えるからと言って貴方みたいなのはすぐにあの世いきですよ。私は別に構いませんが。入場料は銅貨3枚です」
――俺だって好きで魔法もスキルもなしにダンジョン入りたくないわ!
心の中で叫ぶマコトだが。入場拒否されても困る。
「ハッハッハッ、自分武道家なんで武器ないんですよ」
精一杯の見栄を張り入場料を払うとダンジョンの入口へと向かう。
祠の様な入口から階段を降りると地下1階となる。相当な広さだ。
「金を稼ぐならダンジョン」と親切な男が言っていたが、ダンジョン内は大勢の人で賑わっている。
――見た所、1階層にはゴブリンしか出ないらしい。
ゴブリンを倒すと銅貨3枚を落とすようだ。ノルマは最低でも10匹か。頑張ろう。
前の世界では元勇者だったので素手でもゴブリンには負けない。
サクサクと倒し、ノルマの10匹を倒したところで休憩中の冒険者に声をかける。
「あの?つまらない質問で申し訳ないのですが、レベル1から2に上がる為にはゴブリン何匹ぐらいが目安なのでしょうか?」
「あん?生活に困って(ダンジョン)攻略者になった口か?8匹くらい倒せばレベル上がるぜ。レベル3になる為には30匹、4になる為には60匹くらいだな。」
「あ、有難う御座います」
念の為にさらに15匹ほど倒したマコトたが、戦闘力は30のままだ。地下2階へ降りるとかなり人が減っているが、モンスターはコボルトしかいないようだ。
試しに1匹と戦ってみたが、かなり苦戦する。強さはゴブリンの3倍くらいか。
魔王を倒した実力者から、コボルトに苦戦するまで落ちた自分。落差にまた泣きたくなった。
さらにコボルトはゴブリンよりも3倍程強いが、落とすのは銅貨5枚という理不尽さである。
コボルトを5匹倒した所で、疲れを感じてきたマコトは恐る恐るステータスカードを見る。
齋藤誠
戦闘力:30
所持金 銅貨100枚
………1つも戦闘力上がらないのか。だけど食べてはいける。何日か様子を見るか。
落胆しながらもダンジョン攻略を打ち切り、情報収集を始める。
①現在は地下79階まで捜索されており、受付でMAPが売っている。
また、50階までは5階ごとにボス部屋があり、70階までのボス情報は無料で公表されている。
②攻略者育成学校がある。|(入学金20銀貨、月々10銀貨)
③新聞で様々な情報を得ることが出来る。
――よし、学校行こう。
今のままでは2階が限界。レベルも上がらない。この世界についてもわからない。
1階のゴブリンをたった1000匹倒すだけだ。よし…。無理だな。1ヶ月位は諦めよう。
次の日の朝、新聞を読んでいると目新しい情報が書いてあった。
――――硬貨を生み出すミズーリダンジョン――――
どうやら、魔物を倒すと硬貨に変わるダンジョンは珍しいらしい。
他のダンジョンでは食材に変わったり、武器に変わったりするそうだ。
――――ミズーリダンジョンから出る金貨に闇属性魔力を込めると契約書になる――――
ミズーリダンジョンから出る金貨は一定の魔力を込めると契約書になるらしい。
契約書に記入して署名すると当事者間の間で契約がかわされるそうだ。
<2ヶ月後>
2ヶ月程ダンジョンにこもる生活を続けたマコトの所持金は40銀貨程になったが、戦闘力は30のままだった。
最近1つわかったことがある、それは魔法の代わりにオーラのような技(?)を使える事だった。魔法と同じく自身の手や足、体からしか出せないが、オーラを出す事により身体能力の強化ができるようだ。それから1ヵ月間、マコトは宿に引きこもりオーラの練習に打ち込む。
どうやら体内の気(?)のようなものを使用するらしく、試しにダンジョンへ行き、掌に気を集中させた状態でゴブリンにビンタをすると、弾けた。勿論ゴブリンがである。
―――なんだこれ?バグか?
2階層のコボルトにも試してみたが、ビンタした瞬間にコボルトが弾けた。
5階層まではコボルトとゴブリンしか出ない事を無料の情報で知っていたので、調子に乗って5階層のボス部屋に入る。5階層のボスはホブゴブリン1匹だ。
銅の鎧と剣と盾をもったホブゴブリンと対峙するマコト。
―――正直剣を体で受けてみたいけど、危険だしやめとくか
公表されているホブゴブリンの弱点は「突き」をしてこないという事。つまり、必ず剣を振りかぶって攻撃してくる。
「よっと」
地面を蹴り、自身の出せる最高速度でホブゴブリンに接近すると、ようやく剣を振りかぶり攻撃しようとしてくる。
「それじゃあ遅いんだなこれが。」
すぐさまビンタするとホブゴブリンが弾けた。
――またこれか。これじゃあ強さがわからないな。倒すとホブゴブリンの装備が消えるのも謎だな。
同時に自分の体からオーラが抜けていった。戦利品である銅貨7枚を手にしてステータスを確認すると戦闘力は30のままだった。
何日か検証してみるか……。一旦宿へと戻り、翌日から自分の能力を検証していく。
すると、いくつかの事実がわかった。
①オーラを身にまとった状態でステータスカードを見ると戦闘力が300位になっている。
②掌、拳、足にオーラを集中して攻撃すると900位。但し1日3回使うとその日はもうオーラが練れない。
③溜めたオーラを飛ばすこともできるが威力が半分の450位まで落ちる。
上記の事が判明した次の日から、わずか1週間でダンジョンの24階層まで攻略したマコトは「これバグってんじゃない?」と思ったという。
マコトメモ
5階層ボス lv10ホブゴブリン 銅貨7枚
10階層ボス lv15レアホブゴブリン|(色違い)銀貨1枚
15階層ボス lv25バトルゴリラ 銀貨2枚
20階層ボス lv35レアバトルゴリラ 銀貨2枚
25階層ボス lv50バトルオーク 銀貨5枚
30階層ボス lv60レアバトルオーク 銀貨5枚
35階層ボス lv65バトルベア 銀貨20枚
40階層ボス lv70レアバトルベア 銀貨20枚
45階層ボス lv90クレイジートロール 銀貨50枚
50階層ボス lv100クレイジートロール(ランダム属性)銀貨50枚
60階層ボス lv100ドラゴン 金貨1枚
70階層ボス lv100ドラゴン亜種 金貨1枚
80階層ボス ???