忍者メダルの試練
今回、一部不快・汚い内容が含まれます。ご注意願います。
<都市ワズール>
「いや~、あっという間に何事もなく2人で次の都市につく事ができましたね。教授。さっそくダンジョンコア壊しに行きますか?」
「バカか貴様は…。怪しまれる発言は控えろ。少なくとも2週間はここに滞在するぞ。」
「じゃあまた学校通っていいですか?」
「ふむ。その前にEXスキルというのを知っているかね?」
「なんですかそれ?」
「誰でも最低1つのスキルを得る事が出来るのだよ。聖女ケアルサの恩得だ。ここワズールのダンジョン10階の試練をクリアすると、『聖女の試練参加権』が得られる。」
「誰でもですか……魅力的ですね。」
「うむ。しかし、年に4人しかEXスキルの付与ができないらしい。ダンジョン10階の試練をクリアした者達が集まって『聖女の試練』に挑戦し、勝ち残った4名のみがEXスキルを得られるというわけだよ。」
「そうなんですか。10階の試練ってどんな試練何ですか?」
「変な忍者みたいな恰好をしたワズという男と『だるまさんが転んだ』というゲームをして勝つだけだ。忍者が後ろを向いて『だるまさんが転んだ』と言い切る前にタッチすればクリアだ。ワズは触れるとステータスが読み取れる。あとは厄介な魔法を使うな。」
「へ~、簡単そうですね。厄介な魔法って何ですか?」
「それは見てのお楽しみだ。lv100の人間でクリアできるのは100人に1人らしいぞ。」
「……無理っぽいですね。」
「安心したまえ。『必勝法がある』耳を貸せ。」
「そんな事で大丈夫なんですか?」
「私を誰だと思っている。大船に乗ったつもりでいたまえ。このダンジョンは作者の都合上で10階までしかない。すぐに10階まで潜りにいくぞ。」
~~都市ワズール。ここのダンジョンは地下10階までしかなく、ダンジョンコアは既に発見されている。罠が多いらしい。尚、転送陣は帰還用しかない。~~
「なんか今聞こえませんでした?」
「いいからさっさといくぞ。私は酸素などについての論文を書かなくてはならんのだ」
<ワズールダンジョン>
ここのダンジョンでは、魔物は食料のドロップをするようだ。オークを倒す→オーク肉(ロース・ランプ・ヒレ・ハツ等)をドロップするといった感じだ。
マコトメモ
1階層ボス lv10レアバジリスク
2階層ボス lv25クレイジーバジリスク
3階層ボス lv35レアクレイジーバジリスク(集団)
4階層ボス lv45レアオーク
5階層ボス lv50バトルオーク
6階層ボス lv60レアバトルオーク
7階層ボス lv75レアミノタウルス
8階層ボス lv85レアバトルミノタウルス
9階層ボス lv100ドラゴン
10階層ボス 忍者部屋
※ボスの忍者は触れた相手のステータスを把握するスキルを持っているそうだ。
既に教授にステータスを偽造認識させる魔法をかけてもらっている。
あっさりと9階層のボスを倒し、10階に降りると運悪く先客が1名。
そこには殺風景な10㎡四方の部屋が1つあるだけだ。一番奥に柱があり、その中にダンジョンコアがあるらしい。
その柱の前に忍者の恰好をしたおっさんが1人後ろを向いている。
気さくに話しかけてきた。
「これはこれは、エリオット教授でござるか? 隣にいるのは新しい助手の方で?」
「久しぶりだなワズ。こいつは……まあ手のかかる教え子だな。EXスキルが欲しいらしくてな。1つ宜しく頼むよ」
教授が忍者の右手と握手をする。
「マコトと言います。宜しくお願い致します」
同時に空いた左手を取り握手をする。
「無属性と闇魔法ね。ん? いま何か大量に魔法を仕込んだでござるね? 拙者がステータスを見ている間にそんな事するなんて紳士じゃないでござるな。」
――勝手に人のステータスを見る人が紳士じゃないとか言われた。とりあえず間違ったステータスを読み取ってもらえたみたいだ。しかし本当にあんな作戦が必勝法なのだろうか。
「おい、俺が先だろ!!」
どこかで見たような金髪イケメンが苦情を入れてきた。よく見るとハワードである。
「お先にどうぞ。」
ハワードに先に『だるまさんが転んだ』をさせる。目の前で様子見ができるとはついてるな。
「じゃあ先に君でござる。いいでござるか? 拙者が後ろを向いて『だるまさんが転んだ』と言っている間にタッチできたらこの忍者メダルをあげるでござる。『だるまさんが転んだ』は全部で5回しか言わない。拙者が君の方を見ている間は動いちゃだめでござるよ。ではスタート。」
~~~ハワード視点~~~
やってやるぜ。俺はこの難関試験を突破して愛しのあの人(♂)と同じEXスキルを手に入れて見せる。そして告白するんだ。風魔法を全身に纏い最速で動けるようにする。
「だ…るまさんがころんだ!!」――早い。言葉を言い終えるまでに僅か0.1秒程か。距離はたった9m。今ので3mは詰めた。残り4回。これはいける。
「だ~~る~~~~ま~~」
――なんだ? 急にゆっくりになったな。チャンスだ。奴にタッチするまであと30cm。この勝負貰ったぜ!!
高速で忍者に手を触れようとした瞬間。気が付けば俺は壁に激突していた。しかも奴との距離が9mに戻されている。
今確かに奴に触れようとしたはずだ。だが気が付いたら入口の壁に衝突していた。
何だ? 何が起こった?? 俺は何をされたんだ。
上空の風の流れが変わった?? 上を向くと無数のナイフが降り注いでくる。
「ウインドウォール!!」風の流れで降り注ぐナイフを忍者《奴》に向かって誘導する。
ふっ……。相性が悪かったな。俺は風魔法の天才(自称)だ。自分が出したナイフの嵐に殺られろ。――忍者メダルを貰わないといけないから急所は外してやるか。
勝利を確信した俺の背中に激痛が走る。背中が大量のナイフで攻撃された?? なぜだ。いつの間に背後からナイフが。いや、これは違う。これは…………。
「ハワード!! 空間魔法だ!!」
マコトがアドバイスをくれる。――おせぇよ。
既に背中には無数のナイフが刺さり、大量の出血をしている。HPも残り3割。
「~~さんが転んだ!」
一連の攻防が終わった後に忍者がドヤ顔で振り返る。この野郎。後ろを向いているのに此方が見えてやがる。だがその顔ができるも今の内だ。もう手加減しねぇぞ。一気に決めてやる。
「うんうん。安心するでござる。この部屋は拙者のスキルで『攻略者に限定して』HPが1だけ残る仕様になってるでござるから。全力で挑んでくると良い。このゲームで死人を出すつもりはないでござるよ。残りHPが1になったら君の負けでござる。」
ふざけやがって……。忍者が此方を向いているので動くことはできない。『死なせるつもりはない』だと? 忍者はあくまでも上から目線でゲームをしているつもりだ。――久々に切れちまったぜ。グツグツと俺のプライドが沸騰している。心がマグマの様に燃え滾り、今にも体が動いしてしまいそうだ。
「だ~~~る~~~~ま~~~~~」
すごくゆっくりと、再び『だるまさんが転んだ』が開始される。
完全に頭にきた。もうこのダンジョンが壊れてしまっても構わない。俺の必殺技で忍者を殺してやる。両手を組んで前に出す。俺の持つ全魔力を、殺意を、拳に溜めて解き放つ。
「うぉぉおおおお!! ドラゴニックトルネードォォオオオオ」
「次元収納。」
俺の手から放たれたソレは奴の前で消えていく。そ、そんな馬鹿な。俺のドラゴニックトルネードが無効化されているだと?!
「お返しするよ。」
突如、上空から俺が放ったはずのドラゴニックトルネードが俺に向かって飛んでくる。――反則だ。こんなの勝てるわけがない。薄れていく意識の中。俺は自分の限界を知った。
~~~~~~~~~~~~
こいつはヤバイ。忍者の野郎トンデモない魔法を使いやがる。次元魔法――空間と空間を繋げる能力か? 接近したらスタート地点へ戻される。攻撃しても自分に跳ね返ってくる。攻略不可能の反則魔法だ。
「次は君の番かな。安心していいでござるよ。一定の実力を見せればこのスタンプカードをあげるでござる。そこのハワード君が目を覚ましたら説明しといて。12個貯めると忍者メダルと交換できるでござるよ。」
ワズはスタンプカードをハワードのポケットに入れると、軽い回復魔法をかけて地上へと送り返した。
「まあ、そんなわけで頑張って何度も挑戦して欲しいでござるよ。内容次第でスタンプ押してあげるでござる。」
「いえ。問題ありません。僕は1回目で攻略しますから。」
「ずいぶん強気でござるな。さすがはエリオット教授の教え子。でも相手をよく見てから発言すべきでござるよ。遊んであげるでござる。手加減はいらない。全力で来るでござるよ。」
「いいえ。貴方の次元魔法は確かに強力だ。ですが前言撤回はありません。1回目で忍者メダルを頂きます。いつでも始めて下さい。」
「じゃあ部屋の入口まで戻ってね。始めるよ。だ~る~ま~さんが――――(なんだ? マコト君とやらは一歩も動いてない。やる気があるのか、奥の手があるのか……)」
「転んだ!」――――マコト君が開始の位置から動かない。何を考えている??
「動かなくていいのでござるか? 嗚呼、喋るのは別にいいでござるよ。体を動かさなければOKでござる。」
「有難う御座います。緊張して動けませんでした……
1つお願いがあるのですが、次から1回『だるまさんが転んだ』と言った後、1分程インターバルを貰えませんか? その間に緊張がほぐれると思いますので……」
「う~ん。先程までの勢いは何処に行ったんでござるか? おかしなお願いだ……。他でもないエリオット教授の教え子だし。特別にいいでござるよ。」
「やったー! 聞きましたエリオット教授。ワズさんって優しい人なんですね。」
「確かに聞いたぞ。気をつけろよワズ。こいつは決して好青年などではないからな。」
「じゃあ1分経ったから再開するよ。だ~~る~~~ま~~~」
「100連『闇魔法ボラギノ』」
僕が声を出すと同時に、さっき握手の時、エリオット教授が仕込んでいた『闇魔法ボラギノ』を発動してもらう。
「ぐ ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛き、き、きっさまぁぁああああ!! その魔法は…」
「おやおやワズさん。まだ『だるま』までしか言い終わっていないのに振り向いたらダメですよ。」
闇魔法『ボラギノ』――相手が痔になる外道の闇魔法である。
「ぐぁ……ま、ま、まさか貴様!!!ぐっ……『さんが転ん……』」
「100連『闇魔法ベンゲリ』」
「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッ!!!!!! )」
「うわぁ…………汚いねずみ花火みたい。」
闇魔法『ベンゲリ』――相手を強制脱糞させる外道の闇魔法である。
「おやおや~、何か臭いませんか教授?」
「なんという臭いだ……恐ろしい。次の学会で発表しなくては。」
「や゛め゛でぐれ゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!!!(ブリブリュリュリュリュ!!!!ブツチチブブチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッ!!!!!! )
「学会で発表ですか? では証拠写真が必要なのでは……」
「心配するな。今撮影中だ(パシャパシャパシャパシャッッ)。念の為に動画も取っておこうじゃないか。」
「何゛でだ゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!(ブリブリュリュリュリュ!!!!ブツチチブブチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッ!!!!!! )」
「それにしても……脱糞死ですか………初めてみますね」
「心配ない。死にはせんよ。……たぶんな。」
「あ゛あ゛あ゛」――――ズバッ!!
なんとワズは下半身を切り落とした。
「デミゴットヒール……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛痛゛ぇ゛よ゛お゛お゛お゛お゛」
「見えますか教授? クソだらけの下半身が……」
「未だに脱糞しているな……人類の神秘じゃないか」
「貴゛様゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛許゛さ゛ん゛ぞぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛」
「はいタッチ。『だ』まで言ってなかったですよ。1分間のインターバル必要なかったですね。」
「恐ろしい……どうやら私は恐ろしい教え子を持ってしまったようだ。すまないワズ……。」
勿論この作戦こそが教授が考えた必勝法である。なんでもワズは以前から痔に悩んでいたらしい。
ワズからの殺意を向けられるが、クリアはクリアだ。
「忍者メダル下さいよ。あと臭いんで近寄らないで貰っていいですか?」
「貴様の顔は忘れん。夜道に気を付けるがいい。」
――――語尾にござるをつけ忘れてますよ。
「え? おかわりしたいんですか? 100連闇魔法『ベンゲ……」
「滅相もございません!! すんませんっしたーー!!!!」
ワズは芸術的な土下座をしている。
「いや……それがですね。忍者メダルはズボンのポケットに…………」
ワズの下半身はクソ塗れである。触れたくない。
「ご、後日でいいんで。今度取りに来ますね。も、戻りましょうか教授!」
「そうだな。ワズ……すまない。」
この後、どうやって10階のダンジョン部屋を掃除したのか……僕たちは何も知らない。




