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生きるということ

作者: 春藤優希

まとまりなく拙い文章なのでご了承ください。自分自身わかんないんで。

誰かアドバイスください(切実)


寒い冬が終わり花々が芽生えはじめる春。春風が舞い踊るこの季節は胸が痛い。あなた達との記憶を思い出させるから…。

 彼女が死んで、もう六年も経つのに、私の時は止まったままだった。

(…それでも、私は進まなくちゃいけない。『今』を生きているから。)

何かに突き動かされるように私の足は、一つの場所を目指して動いていく。

私が訪れたのは、有名な医大病院の一室。その部屋は六畳ぐらいの小さな部屋。部屋にあるのは、ベッドとトイレと小さな窓くらい。扉を開けると、左近くにトイレの扉が見え、その近くにはベッドが横向きに置いてあり、ベッドの側には小さな窓がある。目に入った白いカーテンからは眩い光が溢れ部屋に差している。窓に背を向けるようにーーーベッドに顔を向けるように置いてあるイスに、カーテンから溢れる光が注がれている。

六年ぶりに見る懐かしい光景を前に、私はよろよろとしながら、部屋に足を踏み入れる。私はイスに腰掛け、ふっと思い出していた。

(私はここに毎日のように座って、いつも彼女のそばにいた。一緒に他愛のない話をして…。)

六年前の看護師の頃だった私が、彼女と話す姿が視え、はっとする。幻覚と気づくなり震える手を抑え、鞄から一つの冊子を取り出す。これは彼女が生前書き記した日記。私は読むのが怖くて、今まで読まなかった。だけど、前に進むために今日読もうと思って、ここに来た。緊張が体中を駆けまわる。唾液をごくりと飲み込む。そしてわたしは、ゆっくりとアンティーク調の日記の表紙をひらいた。最初の一ページ目には…

『人間は生に縛られ、死に弄ばれる、弱い生き物。』

と、書いてあった。これは、彼女がよく言っていた。確かに人間は『生』に縛られ、『死』に弄ばれる。そんな、弱い生き物なのかもしれない。

(…それでも、私はーーー。)

 私は、白髪の伸びきった髪をお団子にまとめ、黒い瞳を動かした。そして彼女が遺した日記と自分の記憶に向き合いながら、次のページをめくった。

 日付は私と彼女が出会ってから、半年後から始まっていた。

 (ああ、私が彼女に言ったんだ。日記を書こう、と。)

好かれるために努力をしたなぁ、と息をそっと吐く。

 彼女は、初めて会ったときは全く心を開いてくれなくて。しかも、他の看護師とは仲良く話すのになぜか私だけ嫌われていた。あの頃は大変だったなぁとか、思いながら、遠くない昔を思い出す。

 


『20××年3月29日

今日はまだ肌寒く、淡雪が散っていた。そんな日にわたしは一つの生命に出逢ったーーー。』



***


狭い薄暗い病室のベッドの上に佇む少女は、窓の外に降る淡雪を眺めていた。ただボーッとして時計の針が刻む音を聴きながら、虚ろな目で、外を眺める少女はまるで、人形のよう。そこに、コンコンという音が響き、少女は「はい。」と返事をする。

扉がガラリと開き、ひとりの看護師が入ってくる。亜麻色の髪をお団子にまとめ、ナース服に身を包む女性の右手には、一匹の黒猫を抱きかかえていた。そして、


「碧海ちゃん、この黒猫ここで育てない?」


と陽気な声で言った。

亜麻色のセミロングの髪を三つ編みにし、桜が描かれたパジャマに身を包む少女は首を傾げ、目の前の小さな『生命』に声を掛けた。正しくは、その小さな『生命』を持つ人物に。

「…えっと、緋音さん。今、なんて言いました?」

「だーかーら。この黒猫、飼わない?前から飼ってみたいって言ってたよね?」

緋音と呼ばれた看護師は、暴れる黒猫を包み込みながら、揚々と話す。一方で話を掛けられた少女は困惑の表情を浮かべている。

「飼ってみたいとは確かに言いましたけど…。院長先生には、許可貰ったんですか?」

「貰ってないよ。」

少女の疑問にきっぱりと答える緋音と呼ばれた看護師は、そのまま続け、

「だから、今から許可を貰いに行きましょう!」

そう言って、少女ーーー倉又碧海は半ば強引に院長室へと足を進めた。

そのときには先程のように人形のような顔ではなく、期待に胸を膨らませる年相応の顔だった。



***


「…ダメでしょうか?」

黒猫を抱きかかえながら、年配の院長に問いかける。隣では緋音が自信満々といった顔で様子を見守る。院長は訝しげな目をしつつも、黒猫を碧海から受け取る。

「ちゃんと、世話もしますので。…お願いします。」

そう言って丁寧に頭を下げる。一瞬の沈黙の後、院長は重たい口を開いた。

「とりあえず、獣医に見てもらおう。…判断はその後でいいかな?」

院長が発した言葉に信じられないというように、顔を上げる。そして、花が咲いた様に笑った。

「はいっ!ありがとうございます、お願いします。」

「じゃあ、身体に悪いから部屋に戻ろうか。」

院長も微笑んで、碧海の頭をポンポンと撫でた。碧海は緋音と一緒に院長室を後にした。一人残された院長はふぅと息を吐いた。


***

 病室に戻ってきた碧海はベッドに横たわると上体を起こして、アンティーク調の日記を手に取り文字を綴りはじめる。

『20××年3月29日

 今日はまだ肌寒く、淡雪が散っていた。そんな日にわたしは一つの生命に出逢ったーーー。一つの生命  は、一匹の黒猫だった。抱き上げたときあまりにも小さくて、心臓の音が手から伝わるほど弱くて儚いも のだった。これが生命なんだと分かった。空っぽの自分に何かが芽生えた。院長に許可をもらいに行った けど、ほとんど許しが出た感じだった。もっと反対されると思っていたから、驚いた。恐らくだけど緋音 さんがあらかじめ院長に掛け合ってくれたんだと思う。

 ありがとう。』

 最後の文を書き上げ、日記を閉じて碧海は電気を消し眠りについた。


***

「ばれてたのね…。私が院長に先に言ってたこと。」

ぽつりと呟く。ばれてないと思ってたのは私だけだったのね。あの頃の自分の行動を考えると不思議と笑みが溢れてきた。でも、それと同時に涙が止まらなかった。彼女が生きていた時間が蘇って…。

今私以外に彼女の事を考える人はどのくらいいるのだろうか?彼女が生きた時間は誰かの心に残っているのだろうか?彼女はひとりで辛くなかったのだろうか?教えてほしくても彼女はもういないのだ。

抑えきれない感情に押しつぶされそうになっても、なんとか抑え込んで。

そうして、わたしは日記を読み進めた。


***


次の日の消灯前。


院長に呼ばれて院長室から病室に戻る途中の緋音と碧海。碧海の手のひらにはゲージがあった。その中でガサゴソと動く黒猫。二人は先ほど院長からの許しをもらっていた。


ーーー『ちゃんと、お世話できるね?』

ーーー『えっ?…いいんですか?』

ーーー『いいよ。だけど碧海ちゃんの部屋からは出さないでね。』


それ以外にも約束事はあったが碧海の耳には入らなかった。嬉しさに胸を躍らせていたから。

「碧海ちゃん、よかったわね~。一緒にがんばろうね!」

「はい!」

碧海は緋音の言葉に明るく答えた。そして、

「…ありがとうございます。」

と小さい声で言った。緋音は聞こえなかったのか、「ん?」というだけだった。

 病室に戻ると、碧海はゲージを置き黒猫を取り出す。

「にゃあ」

と、弱弱しく、けど自分の存在を訴えるかのように鳴く。そっと撫でようとした碧海の手をがぶっと黒猫は咬んだ。

「碧海ちゃん!」

「大丈夫です。ちょっと待ってください。」

「フー」

毛を逆立てて、威嚇をする猫に碧海は

「大丈夫だよ。私は何もしないよ?大丈夫…。」

と言って、抱きしめた。そうして、黒猫の耳元で何かを喋った。すると、通じたのか黒猫は落ち着いた。

その様子を見て一安心する緋音。一方で碧海はわかってたかのように黒猫を撫でた。

「名前は決まっているの?」

それを見て緋音はニコニコと碧海に声を掛ける。碧海は瞳を輝かせて、

「ビビってつけようかなって。」

「ビビ…。何か意味でもあるの?」

「伊語で゛命゛が『vivi』ってスペルなんでそこからとりました。」

ふわっと笑う碧海に対して、゛命゛という言葉に顔を歪めながら笑う緋音。

「…そう。いい名前ね。」

言葉を詰まらせながら紡ぐ声は儚く消え入りそうだった。その顔を碧海は見ないふりをした。

 微妙な空気が流れる空間を変えるように消灯の時間を告げる放送がなる。

「…よし!寝よっか。おやすみ碧海ちゃん。」

「はい、おやすみなさい。」

てきぱきと支度をした緋音に頭を下げ、日記を取り出した碧海の様子を見て緋音は微笑んで部屋を出て行った。

『20××年3月30日

 黒猫を飼ってもいいと言われた。嬉しい。ビビと名付けた。伊語で命という意味。

 緋音さんに言うと悲しそうな顔をした。その意味に気づいてる。それはーーー。』


***

 一週間前ーーー。

一週間に一回の診察のときの事。その日は看護師が緋音ではなくて違う人物だった。私が尋ねると、「違う用件があってね。」と何かを隠すように笑った。

 そんな看護師に嫌気が差しながらも碧海は、その看護師と共に診察室に向かう。そして、いつも通りに診察を受けた。

「…はい。もういいよ。」

胸元から聴診器を離し院長は嗄れた声で言う。

「院長先生、どうですか?」

碧海は心配そうにでも、どこか諦めたような顔をしながら尋ねた。

「…うん、安定してるよ。お疲れ様。」

その言葉に花が咲くように笑う碧海。

「ありがとうございます!!」

「じゃあ、碧海ちゃん、部屋に戻ろうか?」

「はい。」

そう言って嬉しそうに看護師と一緒に診察室を後にした…はずだった。


大して離れてない診察室から碧海の部屋に着いき、看護師が部屋を出ていったとき。

「あ、そういえば…。」

ふと、何かを思い出した碧海は机の上にある紙を持って、院長室に行った。

(院長先生、喜んでくれるかな?)

院長の誕生日の今日、碧海はプレゼントを用意していた。それは似顔絵だった。緋音にも見せないようにして描き上げた、院長と緋音を描いた絵。

それを持って院長室の前に来たら、部屋のドアが少し開いていて中の会話が聞こえてきた。

「---はどうでした?」

「…よくないね。あと一ヶ月もつかどうか…。」

(何の…話?)

「そう…ですか…。なんで碧海ちゃんが…。」

「…すまない。」

「父さんのせいじゃないわ…。ごめんなさい、頭を冷やしてきます。」

(えっ…。私の話…?しかも、緋音さんと院長は親子?)

碧海のこんがらがった頭で理解できたのは、

(ああ。私あと少しで、死ぬんだ。)

ただ、それだけだった。


碧海はふらふらしながら部屋に戻ると、

「嘘つき…。安定してるって、言ってたのに。」

そう言って、紙をびりびりに破いた。ぼたぼたと涙を流しながら、

「もう、“感情”なんていらない…。」

その日から、人形のようになった。


***

 それはーーー。

 私がもうすぐ死ぬからだ。

 緋音さんと院長先生の会話を聞いてしまった。“死”を考えたらすべてがどうでもよくなってしまった。

 じゃあ、聞かなかったことにして、いつも通りでいよう。

 はじめまして、空っぽの自分。』


***

 涙が止まらなかった。彼女は気づいていたのだ。自分の゛生命゛が長くないことに。しかも、それを自らの耳で、私の口から間接的に聴いたのだ。彼女の絶望は計り知れなかった。

 ぼたぼたと零れ落ちる涙が、紙に模様を作る。濡らさないようにと、必死に涙を拭った。既にグシャグシャになった視界を乱雑に拭き直し、日記のページを捲った。


***

 『20✕✕年4月1日

  いつもはあんなに望んでいた朝が、当たり前のようにやってきたとき私は、なぜか嗤って肩を落とした。生きるということに絶望しか、出てこなかった。なんで、私はこの世界に産まれてきたのだろう?誰かに愛されずに、誰も愛さずに。この世に産まれてきた意味が人を愛する為だったなら、私は産まれたくなかった。こんな、ガラクタのような世界に、産まれたくなかった。』


 次の日、目が覚めた碧海は近くに寝ていた黒猫ーーービビを見て涙を零した。その小さな身体でも必死に生きようとしている様子を見て、泣いた。声を押し殺して。小さな肩を震わせながら。押し殺せなかった声は、扉を挟んだ向こう側の緋音の鼓膜を揺らした。

 緋音はその声を聴かないふりして、泣き止むまでずっと扉の前に立っていた。「ごめんね。」と言葉を零しながら。

 その日の碧海の顔は不自然で、でもとても自然な顔で笑っていた。その違和感に気づいたのは緋音だけだった。

 その日、碧海の側をビビは片時も離れなかった。まるで、強い絆が二人を結びつけるように。碧海もビビを離さなかった。


 時折、私を見つめる瞳が悲しそうにしていたのに気づいていた。でも私は、弱かったからあなたに真実を告げないまま、その視線に気づかないふりをしていたの。

***

 『20年4月2日

  死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたいーーー。』


 一面だけでは済まず何ページもその言葉で埋め尽くされていた。

ゴクリと息を呑んだ。その後には、真っ黒に塗られたページ。彼女の辛さがそれだけで、伝わってきた。

 そして、次のページを捲ったとき、時間が止まったように指が、思考が止まった。


***

 「今日は、空が綺麗だね。ビビ…。」

 碧海がおもむろにそう呟けば、黒猫ーーービビは

 「みゃあー。」

と、鳴く。そんなビビを見て碧海は、頭を撫でてぎゅっと抱き締める。窓から見える夜空には、満月が映っていて、そのまわりを遠慮がちに星が散りばめられている。亜麻色の髪が風に靡きながら、碧海は、ふと思う。

 (私は、なんで生きているんだろう?)

そんな碧海の思いも知ってか知らずか、ビビは碧海の頬をペロッと舐めた。ふふ、と笑いながらビビを見つめる。そうしている内に、生きたいという欲求が強くなったのに気がついた。その気持ちを封じ込めるかのように布団を掛け寝ようとしたとき、わたしが恐れていたことが起きた。

 どくんっ。

 「っ!!はぁ、っ、は、……!!!」

発作が起こり苦しくて、苦しくて息がひゅっ、ひゅっとする。うまく息を吸い込めなくて、眼の前がチカチカし始める。

 ナースコールのボタンを押そうと手を伸ばすが、もう手を伸ばせなくてーーー動かせなくて、諦めた。

 (こんな、最期なのか。なんて、あっけない…。)

 ビビが擦り寄って、流れでた生理的な涙を拭った。それを見て、今更になって生きたいという欲求が溢れでた。そして、更に今も大嫌いで、大好きな人の顔を思い浮かべた。

 (死にたくないよぉ…。)

 「おかあ………さん。」

その呟きは、届いて欲しかった人には僅かに届かず、ビビの耳にしか響かなかった。

 近寄る足音とビビの

 「みゃあー。みゃあー。」

という弱々しい声は、朝焼けに溶けていった。



***

 『20✕✕年4月3日

  今日は朝から気分が良くて、朝に日記を書いている。明日は幸せの日らしい。何故だかよく覚えてないけど、昔聴いたことがある。この世界に生きるということが【幸せ】になる人もいれば、【不幸せ】になる人もいるんだろう。私はその内のどっちなのかな?明日、緋音さんに聴いてみようかな。ああ、今日は空がとても綺麗に見えるな。』


 そこで日記は終わっていた。

 その次の日の4月4日の早朝に、彼女は息を引き取っていた。その日は彼女の誕生日だった。私が来たときはまだ彼女の躰は生暖かった。

 彼女が息をしていないとわかると同時に、私が手にしていた彼女への誕生日プレゼントは、手からこぼれ落ち、カシャンと甲高い音を立てたのを今でも思いだす。

 苦しくて、苦しくて。もう日記を読めなかった。だけど、閉じるときに見えた最後のページに書かれた文章。それが、私の目に飛び込んできた。


***

 緋音さんへ

 この日記を読んでいるということは、私はもうこの世にいないん ですね。どうでした、私の本心を書いたこの日記は?緋音さんに「日記をつけないか?」と、言われた時、すぐに最期には緋音さんに託すもの。そう思って書きました。狂ってるな、とか思いませんでしたか?私の本心を知ってあなたは何を思いますか?

 私は、この世界に『私』という存在を残せたでしょうか?誰かのココロに残れたでしょうか?あなたのココロに遺れたのなら幸いです。

 私は始め、あなたのことが嫌いでした、大嫌いでした。でも、知 っていく内に大好きになりました。大雑把なところとか、いつも 笑顔なところとか、本当は……弱いところとか。あなたの全てが大 好きになりました。

 あなたに伝えたいことが、話したいことがいっぱいありました。 書き切れないくらい。言葉に表せないくらい。だから、ここで『死ぬまでにやりたかった10のこと』を書きます。

 笑わないでくださいね?


 1,友達を作りたかった

 2,海を見たかった

 3,ビビと一緒にお散歩してみたかった

 4,夜更しをしてみたかった

 5,大人になりたかった

 6,誰かに愛されたかった

 7,誰かを愛したかった

 8,自分を見つけたかった

 9,もっと生きていたかった

 










 10,あなたを『お母さん』と呼びたかった。

 



 


 『お母さん』、私はこの世界に産まれてきて、あなたに出会えて







 【幸せ】でした。

                       あなたの娘より



 その言葉で溢れていた思いが溢れだした。

「ああああああああっっ!!!」

 みっともなく声を挙げて、泣き叫んだ。

苦しい、痛い、張り裂ける。そんな、感情が私の心を突き破いていった。

 彼女は気づいていたのだ。自分を捨てた母親が私であると。私は、なんて勝手だったのだろう。愛し合っていた夫に、自分勝手な理由で娘を押し付け、家をでたくせに、娘が病気を発病して、生命が短いと知ったとたん、看護師の資格を一心不乱に取って、彼女に会いに行ったこと。医者という父に頼んで、病院の一室を借りて彼女と時を過ごした。なんて、勝手な自己中な人間なんだ。

 涙が滝のように流れ、鼻水もずびずびと垂れる。

彼女は、こんな私を母と言ってくれるのか。幸せだったと、出会えて良かったと言ってくれるのか。涙が枯れるんではないかというくらい泣くのに、声も枯れるんではないかというくらい叫ぶのに、中々枯れはしなかった。

***

 そもそも私は、碧海を失った後も大切なものを失い続けた。それは、もしかしたら、私に課せられた罰なのかもしれない

 私は碧海の葬儀が終わった後、ショックで髪が真っ白になり、黒い瞳には光すら、入らなかった。ただ、唯一の救いはビビだった。

 私は父に謝り仕事を辞め、家に引き篭もった。ビビは引き取って、一緒に過ごした。ビビと居れば彼女との時間を共有できるような気がした。…赦されるような気がした。

 ビビは引き取ってから1週間が経っても私に懐かなかった。だけど1週間と一日経ったある日、急に甘えてきた。それが嬉しくて何度も抱きしめた。だけど、その日を境にビビは、居なくなった。どんなに、どんなに捜しても見つからなかった。

 疲弊した体で私は碧海に謝るために、墓を訪れた。そしたら、墓の前にひとつの黒い物体が倒れていた。

 「…ビビっ!!」

 ビビだった。居なくなったはずのビビが、碧海の墓の前で亡くなっていた。私は、泣き叫んだ。あなたも、私を置いていくのかと。

 そして、今日ようやく落ち着き始めてここに来たのだった。

 前を向くためにーーー。

***

 「今日、ここに来て…よかった。」

 涙を零しながら、ガラガラになった声で一人つぶやく。窓から風がさぁーっと入ってき、光が差し込む。その暖かさはまるであなた達みたいで……。

 あなた達が気づかせてくれた大切な気持ち。それはーーー。

生きるということが【幸せ】になる人もいれば【不幸せ】になる人もいる。だけど、【幸せ】にする為に人は、愛するという行為をする。【生きる】ということがどんなに、残酷であっても、ただ生きたかったけど生きることができなかったあなた達に贈りたい。



          ワタシ      シアワセ

 「碧海、ビビ。…『お母さん』、今日も『生きてる』よ。」




fiN

はい、よくわからないことになりました。

誰か、語彙力ください。

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