7.北風
もっとも、恐れていたこと?
いや、違う?
本当は望んでいたこと?
が訪れた。
そのキャラバンを去る、ギリギリの直前に、
民のリーダーの一人の若者が、テントのうちに君を呼び寄せた。
「真実の神を真剣に探し求めよ」
「そして、この民の一族に加われ」
と、力強い口調で語った。
君は、
その招きを「せっかくですが・・・」と断った。
理由はあった。
けれども、自分の中でも言葉にできないし、
ましてや、目の前にいる他者にそれは語れない。
刹那、彼は顔色を変え、
その理由を尋ねた。
君が、何かしゃべろうとするや否や、
彼はすべての君の語りを否定してきた。
「お前の信じている神は嘘だ!」
「お前の進もうとしている道は、どうでもいいことだ。」
「私たちの信じている神は生きている唯一の神だ。お前たちの信じているものに、そんな確信的な奇跡が存在するのか?」
途中から、君はもう、何か言うことをやめる。
一つの言葉じりをとらえては、あれこれと引きずりおろし、百も二百も言葉を並べ立てるのだ。
言葉は多いが、最終的な結論は、「わが民のうちに加われ」その一点。
君が、コートをしぶしぶ手放すまで、この北風には何を言おうとだめなのだ。
自分の信じているものをすべて否定されたようで気分が悪くなり、君は、倒れこむ。