6.聖霊
それは、聞いたこともない福音だった。
いや、君が福音というものを本当は読んでいたが、読んでいなかっただけかもしれぬ。
それは、「もっと真剣に遊べ。楽しみなさい。」「愛しなさい。」と告げた。
それは、子どもを愛でる母親のように、君をやさしく抱きしめ、頭をなでて、胸に額をうずめさせてくれた。
泣きたいとき、叫べば、それはすぐに来てくれ、
君の言いたいことを言う前から理解してくれ、
瞬時に癒してくれた。
君は、しっかりとか立派とかいうものに、
何の負い目も感じないですんだ。
むしろ、君の魂は、
何もせず、ただ一方的に受け身で、その愛を受け、それに包まれて安心していることを感じて憩っていればよい。
君の、心は楽しみ
体も、それまで、皮膚や内臓や筋肉のあらゆるところにあった疾患が、消え失せたのだ。
この道が、正解なのだ、
と君は、満足のうちに納得した。
山を下り、
君は再びキャラバンのもとへ戻る。
聖霊を受け、確信を得るために。
キャラバンのそれは、観想的な祈りや、内的な祈りとは違った。
全身全霊をかけて、主の名を叫び、呼び求める。
はじめのうちは、驚き、戸惑ったものの、君は、すべてをかなぐり捨てるように真剣に叫び始める。
しかし、それでも何か「開かれない」ものがあった。
押さえつけているものがあったのだ。
吐き出してはいけない、
吐き出すのが恐ろしいものがあった。