表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仲澤友利の受難  作者: 余香
3/3

由野視点です。


初めて会ったのは、そう、入試2日目。きっと友利は覚えていないだろう。俺は苦手科目が集中していたためか、緊張のあまり体調が芳しくなかった。


(頭痛い………ふらふらする………)


俺は昨晩の一夜漬けを恨まずにいられない。


(気のせいか腹まで痛い………)


冷や汗をかきながら一科目目を終えて、トイレに駆け込んだ。……実際はそんなスピード出てねぇけど。亀だったけど。


そんな時、彼は俺に声をかけた。


「お腹痛いの?君、だったらオレ、薬持ってるよ」


そう言ってなんだかよく分からない錠剤を出してくる。緊張と寝不足には何の薬がいいんだっけ……。


「ありがたいけど、たぶんそれじゃないと思う、薬。」


「そっか……緊張?」


「……緊張と、、寝不足」


「……じゃあ」


そう言って彼はカイロを出した。


「はいっ。緊張した時は手が冷たいから、カイロ、持ってるといいよ。それあげる!」



そう言って彼は笑顔でカイロを差し出した。


「…あ、ありがとう」


「じゃ、頑張ろうね!!」


彼は、何を、とは言わなかった。俺にはそれが救いで、もうあと一科目だけだから、と、カイロを手に再び机に向かった。


(あぁ、可愛いやつだったなぁ、)


少し明るめの髪も、くしゃっと微笑む顔も、カイロを差し出す手も、頭から離れなかった。


(俺、この高校受かって絶対彼にまた会おう……)


そう決意して、由野は受験を終えたのだった。


それから春休みの間、由野は自分を変えた。長くて野暮ったい髪を切って、黒髪を軽く流す。

無表情なのは……変えられなかった。ただ、入試の彼ーー友利の事を考えると、顔がにやけた。

服も買いなおし、とにかく運動して体力と筋肉を付けた。ひょろひょろだった体は、すらっとした綺麗な肉体美へと生まれ変わった。

友利がもし頼ってきたら、なんて考えながら勉強にも力を入れた。一学期までの予習を1通りした。


今までの自分には有り得なかった。恋は人を変える。

そう実感した少し早い春だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ