カルチャーショック【其の一】
私は中学生の時に父の仕事の関係でカリフォルニアに来た。そのままなんとなくズルズルと居座って今に至るが、しかし日本から東ヨーロッパやアフリカ、南アメリカ、東南アジア諸国に移住することに比べれば、日本→カリフォルニアという移住にはたいしたカルチャーショックはない。カリフォルニアは日本食品店なども多いし、お寿司も美味しい。そもそもトイレや風呂などの基本的な生活パターンに全くと言っていいほど差異がないのだ。
……と思っていた。
数年前にジェイちゃんを連れて日本に帰った時のこと。
鎌倉の長谷寺にジェイちゃんを連れて行ったところ、あの酸欠になりそうな狭い洞窟の中で何やら熱心に写真を撮っているジェイちゃん。家に帰ってから撮った写真を眺めつつ、やけに嬉しそうにニマニマしている。
「みてみて! あの洞窟の中ねぇ、なんか美味しそうなアニマル・クラッカーみたいなのが沢山あった! カワイイ♪」
「いや、それはアニマル・クラッカーじゃなくて、水子供養の人形……」
直径三センチ程の平べったい水子供養のアレを、クッキーかと思ったジェイちゃん。怖がりの彼はその後、「変なモノが写ってたらどうしよう……」と涙目で写真を全て消去していた。そして奈良や京都の観光中も、「あ! またあのアニマルクラッカーがある! やだ、日本のお寺コワイ……」と怯えていた。
そんなもんの写真撮るのはお前だけだよ! と内心思いっきり突っ込んでいたのだが、しかし一昨年、友人のキース君も日本に行って、「このクッキーみたいなの、何?」と言いつつ似たような写真を撮っていた。