オソロシイモノを見た……【其の二】
超グロ注意! Gの描写有り。
同僚から聞いた話。
彼女はテキサス出身なのだが、テキサスはやたらめったらGが多いらしい。カリフォルニアだって結構いると思うんですけどね、ゴッキーちゃん。母校の大学など、夜になるとカフェテリア周辺に半透明の羽を持つちょっとお洒落なゴッキーちゃん達がうようよと歩き回っていたものだ。
私は彼らに対する格別の恐怖や嫌悪感は特に無いが、しかしアレをペットにして可愛がりたいとかいう趣味は流石にないし、まぁアレが家の中を徘徊してたらヤダナァと思うくらいの感覚は持ち合わせている。しかし普通の人はGが死ぬほど嫌い、というのは日本でもアメリカでも共通らしい。私の同僚もそうだった。
彼女が七〜八歳の時のこと。お母さんが留守にしていたので、彼女と妹とお父さんは、夕飯はピザのデリバリーにしよう!と決めて、早速ピザ屋さんに電話した。しかしその直後、冷蔵庫に牛乳が無いことに気付いたお父さんはピザ屋さんに再び電話して、「代金はポストに入れておくから、ピザは玄関のポーチに置いといて」と頼んだそうな。勘の良い人なら、もうこの辺で嫌な予感がビシバシしますよね。
そして親子三人で近所のスーパーに牛乳を買いに行き、ついでにビールやお菓子なんかも買ってルンルンと家へ帰り、玄関に置かれていた生温かいピザの箱をそのまま電子レンジに放り込んだ……ここで箱を開けて中身を確認することを怠ったのが惨劇の始まりだったのだろう。
電子レンジをスタートさせて数十秒後。無数の巨大な昆虫の黒い影が箱の隙間から這い出てきた。
キャーッと悲鳴を上げる娘達。
「これはダメだッ! ピザは諦めて、奴らが全滅するまでレンジをかけ続けよう!」とか言い出すお父さん。しかし最期の一匹が動かなくなるまでに実に十五分近くかかり、ピザは一見レンガ並みのガチンコ、しかし手を触れれば灰のようにバラバラと崩れる異物と化していたそうな。
死んだ魚のように遠い目で、同僚は淡々と語った。
「私はあの時に身をもって知ったの。核戦争が起こった時に、生き残るのは奴らなんだって……」
ちなみに私はその電子レンジはどうしたのだろう……というのが気になって仕方が無いのだが(アメリカの電子レンジの多くは壁に埋め込まれたタイプで簡単にはチェンジ出来ない)、PTSDのせいか、同僚もその辺りの記憶が欠落しているらしい。