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銃と青春と〇〇と。  作者: 芳賀勢斗
6/6

【第六話】女の子と…買い物

おひさしぶりです。サバゲーがしたくなったので書き始めました。

といってもまだサバゲーまでたどり着いてないんですけどね…

はぁ。

疲れたような、諦めたような…そんなため息が漏れてしまった。


「か、海翔くん…買いもの付き合ってくれる?」


「え、あ、はい…はっ!? はいっ!」


そう。あの時条件反射的にYES!と答えてしまった。

あれは良かったんだろうか…いや、断って柊さんが悲しんでも困るし…。


いやしかしだなぁ…



───女の子と二人きりで買い物って…



考えただけで勝手に顔が赤くなる。

考えすぎだろうか?

いや…知り合って間もないとは言え柊さんはそこら辺の10人に聞けば全員が可愛い。キレイ、美人と評価されるであろう程、スタイルもよく顔立ちも良かった。

何より外見上の美しさもそうだが、内面も結構さっぱりしていて下心を感じさせない清涼感と言うのか…


清々しい性格がより一層…


「一層なんだってんだよっ!」


勝手に道ばたで1人赤面する高校生出会った。哀しきかな…これ俺なんだ。


(まーまー! あのお兄ちゃん1人で喋ってるよぉ? お顔も真っ赤! お風邪引いてるの?)  


(け、けんと? あっちで遊びましょうか) 


公園に差し掛かる道路でそんな一人芝居をやってしまったもんだから、幼稚園くらいの男の子に指刺されて…


あぁ恥ずかしい。


顔の赤みが更に増した海翔。こんな調子で大丈夫なのかと、残り少ないバス停までの道を歩んだ。








時は少しさかのぼり昨日の出来事だ。


「ただいまー」


いつも通りの帰宅。

俺の部屋は2階だが、お弁当や水筒をキッチンに置くためにまずリビングへ向かう。

その際荷物は階段の手前にドサッと置いておく。


そんな感じでリビングの扉に手をかける。


「あ、お兄ちゃん、帰ってきたんだ」


「さっきただいまって結構大きい声で言ったぞ」


「そお? まぁいいや、おかえり」


先に帰ってきていた美香がソファーに寝ころがり、ぐでぇとスマホを見てる。

ありきたりな中学生のだらけ具合だ。


普段がこれなもんだから、柊さんを前にした時の美香の態度が衝撃的過ぎて今でも理解できていない。


そんなことを考えながら冷蔵庫に手を伸ばしてコーラを取り出す。


(ったく…美香の奴、またこんなちびっと残しやがって…)


コップ一杯にも満たない量を中途半端に残す美香の悪い癖。まだ治ってないのか。そのまま注ぎ口から飲み干す。


「そういえばさぁ、愛結火(あゆか)さんとお兄ちゃんってどこまで行ったの?」


「ぶへっ!?」


「ちょっ! きたないっ!」


「いきなり変なこと言うからだろ! うあぁベタベタ」


思わぬ奇怪な発言にコーラが気管に入ったのか盛大に噴出してしまった。


「だって明日デート行くんでしょ?」


「なぜそれをっ! ん…? いやいや、デートじゃねえよ!」


「へー。まぁ愛結火さんと連絡先ぐらいは交換してるから直接聞いただけなんだけどね」


「いつの間に…。まぁ取り合えず柊さんには買い物に付き合ってくれって言われただけだよ」


「デートじゃん」


「いやだから…」


「デートじゃん」


…。

……。

………。


やっぱりそうなのか?

これデートなの?

柊さんが?

俺と?

いやいや、そんなことありえねぇよ!

第一入学式から一週間も経ってないんだぞ!?

高校生活最初の土曜日が美少女とデート?


いやいや、どこのラノベ主人公だよ…


胃が痛くなってきた…


「やーい、らのべしゅじんこー」


「う、うっせ!」


心にもない棒読みな感じで美香の冷やかしが入る。


「でも休日に付き合ってもいない男女が二人っきりで買い物行くとか、ふつうありえないよ。何買いに行くのかとかはわかんないけど変な身だしなみだったら駄目なんだからね? お兄ちゃんヨレヨレの服しかないんだから」


ま、まぁ妹の言い分は正しかった。これがデートなのかデートじゃないのかはさておいて下手な服はだめだよな…


え…だっさ


って思われでもしたら正直心が粉になる。


っていうか、柊さんの私服…か


その夜、母さんからも似たような話をされたのは別の話だ。









そして今に至る。


「あっ! 海翔くん!」


地下鉄の改札前の柱によしかかっていると、騒然とする地下でもはっきり聞こえるくらいの柊さんの声が聞こえた。


「お、おはよう…柊さん」


あまりの刺激に言語障害が起きかけてしまった。


俺は服に関して全くと言っていいほど知識がない。

抽象的に例えるなら、ぴっちり系のジーパン?と、白系のパーカーだろうか。

まだ春先で肌寒いこともある。薄手のウィンドブレーカーを羽織ってる。

手元には小さすぎはしないくらいの手提げかばん。


化粧とかはしてないように見えた。


いつもと変わらぬニコニコした顔が俺の心臓を傷めつける。


“デートじゃん”


顔が赤くなるのが自分でもわかった。


(ちょ、あの子ちょーかわいくね?)


(ちっ…男持ちか)


やっぱり周りから見ても柊さんは可愛いんだろう。

なんだか分からないけど、周りの遠目に柊さんを見る目がうざったくなってきて早々にその場を離れた。

地下鉄に揺られる俺達。


「そういえば柊さんは今日は何買うの?」


「あ、そういえば言ってなかったけ?」


休日デー…出かけるってことで頭がいっぱいになって聞きそびれてた。何買いに行くかもわかってないでここまで来るって…俺必死すぎかよ


「明日サークルのみんな行くわけじゃん?」


「サバゲー? そうだね、学校から先生が車出してくれるって言ってたから」


そう。俺たちがサバゲーサークルに半ば強制的に加入させられて、明日の日曜日いきなり定例会参加だ。

向かうフィールドは【アバロン】という屋外フィールドだ。

偶然なことにサークルに入ろうが入らなくても、どのみち俺が行く予定だったところ。


「サークルの先輩たちはもちろんだけど、海翔君だって自分の銃持ってるんでしょ? 私だけないから…」


「あぁそゆことね。でも先輩たちも貸してくれるって言ってたし、レンタルもあるから急がなくても大丈夫だと思うけど…」


「わ、私だって調べたんだよ!…あんな高価なもの借りて壊したらと思うと」


「気持ちはわからなくもないけど先輩たちもそこらへんは承知の上じゃないかな? 一応サークルなんだし貸し出し用の銃とかもあったりするかもしれないし」


たいていそういうやつは安価な海外製の奴だったりするからぶっ壊してもって感じかな?


「どのみちずっと借りていられる訳じゃないんだし、この際だから買っちゃおうかなって思ったの。やっぱり変かな…?」


「別に変とかじゃないよ。そこまで意志が固いならあとは予算との相談だよ」


そういえば大丈夫なのだろうか?

電動ガン一つとっても初心者が箱だしで満足に使えるものになると本体で2~3万円の国産品が妥当だろうし、さらに予備マグとバッテリーと充電器。ポーチとかは何とかなるにしても、それだけで5万円は軽く突破するよ?

入学したての高校生には厳しい出費に変わりない。


まぁ柊さん自身調べたって言ってたから相場くらいはわかっているとは思うけど…


「ちなみにご予算はいかほどで?」


俺が恐る恐る柊さんに尋ねてみる。

柊さんはゆっくり両手をパーにする。


「足りないかな?」


「あ…うん。一応聞くけど、それは野口〇世さんが10人?」


「…諭吉さん。」


「ですよねぇ…」


まったく想像以上の潤沢な予算に頭が追い付かなかった。

どこからそんな湧き出してくるのか…


「まさか足りないっ!?」


「え? あぁ大丈夫大丈夫、余裕でそろえれるから安心して


「よかったぁ」


「競技の賞金ってやつなんだけどね…貯金しか使い道がなくて困ってたんだよね」


「賞金…やっぱ柊さん凄いんだね」


やっぱりこの可愛らしい女の子は、競技射撃においては才能というセンスが凄いんだろう。


ちょうど目的の駅に到着する。


「ついたみたいだね」


「行きましょうか」


ホームに降りて改札へ向けて階段を上がる。


「というか今更だけど俺なんかに聞くよりも沙織さんに聞いた方が良いんじゃない? ショップ店員なわけだし」


「私もそう思って聞いてみたんだけどね、忙しいから彼s…いや海翔君にって言われて…ごめんなさい、迷惑だったよね」


「いやいや、そんなこと微塵も思ってないよ! まぁ確かに雪が解けてきた今はあっちこっちでフィールドオープンするしそれに合わせて柊さんみたいに新規で始めたり、軍拡…新しいの買う人とか多いらしいからショップにとっては繁盛期なんだろうね」


無意識に沙織さんをフォローしてしまったけど、美香と同じ匂いがするのはなぜなんだろうか。

そんな感じで改札を抜けて、少し地下を歩いて地上へと上がる。


目的地であるAirsoftHobbyと言うエアガンショップへは何度も通ってる。

自然に地下街を歩いて最短でたどり着ける。信号待ちは嫌いだからねぇ


「ところで、柊さんのタイプは?」


「ふぇ!? た、タイプ? いきなり…えっと…」


ん? なんか変なこと言ったっけ? 普通にアサルトライフルとかPDWとか、大きくて長い銃なのか小さく軽量な銃なのかって言うのを聞いたつもりなんだけど…

顔を真っ赤にあたふたする柊さんを心配そうに視線を送った。


「た、タイプ。えぇ…あんまりそう言うは考えたこと無くて…」


「そうだよねぇ、ガンガン前行く感じか、一歩引いた感じかで結構変わると思うから」


「ガンガンこられるのは少し困るって言うか…なんて言うか…」


「まぁ、そうだよねぇ。じゃあ重い方が良い? 軽い方が良い?」


「そう言うのはあんまり気にしないって言うか…しっかりしてればって感じかな」


重量の方はあんまり気にしない感じか…。確かにASFの競技射撃で長いボルトアクションライフルをスタンディングでビシッと構え続けられるんだから、あんがい平気なのかな?


「結構候補ありそうだねぇ、選ぶの大変かも」


「え?」


「え?」


時が一瞬止まった気がした。


「候補? どういうこと?」


「え、いや…どんな銃が良いのかって言うの聞いてたんだけど…」


カァァァァっと柊さんの顔が真っ赤に染まる。

え、どゆこと?


なんだか分からないけど、そそくさと逃げるように歩き出した柊さんだった。


「おーい、出口ここだよー」


ショップに一番近い出口を通り過ぎた柊さんだった。







「いらっしゃいませー…って愛結火ちゃんじゃない、後彼氏さんも」


「ちょっ! 沙織さん!? お店の中で何言ってるんですか! でたらめ言わないでくださいよ!」


やっと真っ赤になっていた顔が治ったというのに…


当の沙織さんはニシシと楽しそうな笑いを上げている。

おちょくって楽しんでるみたい…。でも彼氏って言われて悪い気はしない? 得した気分?


(そっかぁ…愛結火ちゃんが…)


(もう高校生だろ? やっとって感じだろ?)


なんだろう。柊さんは気づいてないのかもしれないけど、常連のお客さんっぽい中年のおじさんや、結構いい歳のおじいちゃんが巣立つ子供を見送る目になってるんだけど。


「んで、愛結火ちゃんは明日サバゲーデビューと。こりゃ明日は大変そうだわ」


「え? なんで?」


「いやぁそれがさぁ、ウチがオーナーに愛結火ちゃんがアバロンで初サバするっていったら【こうしちゃいられねぇ! ちょっとあいつと話してくる】って…」


「あいつっていうのは…」


「アバロンのオーナさんだよ、昔からの仲だか知らないけど、一応この店もアバロンと提携関係でね。イベントの景品とか出張メンテとかたまにやってるわけ。オーナーがどんな故障も直せるように本気出すって言ってたからその関係で今日はお休み」


柊さんって…いろんな人に慕われてるっていうか、愛されてるよね。

俺もこの店のオーナーさんは何度か見たことがある。会計以外で話したことはないけど、結構ダンディーな年配の方だ。

でも常連さんと話す姿は楽しげで気さくな感じがした。

ちなみにそんな会話にあこがれてたりする。


(愛結火ちゃんがサバゲーデビュー!?)


(わりぃ。急用思い出した。ちょっと押し入れの奥に眠ってるエアガン引っ張り出して充電とかしなくちゃならねぇ)


(おまっ…引退したんじゃ)


数人のお客がみんな“急用”で店を出ていく。

もう柊さん!? このお店で何してるの!?


「そんなことだから、今日はMy銃買いに来たんでしょ? 自由に見てってね。ショーケースとかラックに掛かってるやつとかも言ってくれれば出してあげるから」


「ありがとうございます!」


そういうと沙織さんはあまりかけてるところを見ない気がする眼鏡をかける。

店のカウンターには無数の大小様々な大きさや形の部品がきれいに整頓されて置いてあった。


カスタム依頼?

タボールっていうんだっけ?

俺が少し見てたもんだから沙織さんもさすがに気付いて作業を止めてしまった。


「あ、これ? ただのメンテナンスだよ。メカボの洗浄と消耗品の交換。まぁカスタムはオーナーしかできないんだけど…」


「てっきりショップの店員さんってみんなできるのかと思ってたんですけど、違うんですね」


「よく勘違いされるんだよぉ。みんながみんな最高の銃を作れるわけじゃないんだ~。これとこれを組めばこうなるっていうのもあまりなくて、結構感覚だよりなところもあるんだよね。ちなみにメーカの認めるエアガンの整備士みたいな資格もあるの」


「へぇ、資格もあるんですね。はじめて知りました」


「だろうね、さぁ今日は愛結火ちゃんをよろしくね。そうそう、可愛い可愛い愛結火ちゃんを家に連れ込んだんだから、最後まで“責任”よろしくね?」ニコッ♪


「つ、連れ込んだって…そんなんじゃありませんからね!」


ニコッ♪て…全然目が笑ってないんですけど!?

本当ですよ! なんもしてないですからね!




それから時折背中に刺さる視線を感じながら柊さんと銃選びを始めた。


「どれがいいんだろう…」


目の前には五万円台の次世代電動ガンがずらっと並んでいた。

うん。実際買えるからおかしくはないんだよな。


「全部同じに見えるのは私だけかな…」


「いやそれが普通だよ。これみて区別できたらその人はかなりのマニアだよ。それだけM4ファミリーとAKファミリーはとんでもない数あるから仕方ないよ」


実際これM4でしょ?

いやHK416

AK-47だ!僕知ってるよ!

え? 一型? 二型? 三型?

AK-74? S? M?


???????


正直覚えるは無理。区別できる箇所があるのはわかる。でもそこから判別するのはきっと無理。


「まぁカッコいいやつとか気に入ったやつで選んでも問題ないと思うよ」


「んぅ…」


時間はかかるだろう。それはしかたない。

最初の装備って結構悩むから…


「ねぇねぇ、このM4A1?ってやつなんだけど同じ名前なのになんでこんなに値段が違うの?」


「あぁ、なんていうかな…。結論を言うと高い方が次世代電動ガンで、安い方がスタンダード電動ガンっていうんだ」


「どっちも電動ガンなんだ。次世代って響き強そう」


「軽く説明すると、スタンダード電動ガンはBB弾をただ撃ち出す機能しかなくて、次世代電動ガンは撃つ機能に加えて本物の銃に似せたリコイルの再現とか、可動部が多いとか、実銃に似せて結構作りこまれてるんだ」


実際実銃のようなリコイルは無いんだけど、それでもいろんな部分でスタンダードより勝ってる部分が多いらしい。

ただ、リコイルシステムのせいで耐久性はスタンダード電動ガンに分があるようだ。


「つまり次世代はリアル趣向っていうこと?」


「そゆこと」


理解が早くて助かる。

まあ超リアル趣向ということならガスブローバックライフルになるんだけど今は触れなくてもいいでしょ

あれはロマンと愛でめでるものだと思う。


「あ、あそこにあるのって海翔君のと同じライフル?」


「そうみたいだね。あそこら辺にあるのはボルトアクションライフルって言って…まぁこれは柊さんのほうが詳しいかもね」


「でもネットに電動ガンとボルトアクションじゃ勝負にならないってあったけど…海翔君大丈夫なのかな」


うぐ…

地味に痛いところを突いてくるな。


「な、なんとかなるさ」


内心自分でも結構心配なんだよなぁ。スナイパーにあこがれて買ってもらったけど、現実は…

いやだめだ。今は柊さんに集中しよう。


「この小さいのは?」


「サブマシンガンってやつだね。小型軽量で走り回る人とか、入り組んだところで使いやすかったりするね。だからか女性にも人気あるらしいよ」


MP5、P90とかは人気が高い。


「このP90っていうの丸くて可愛いね」


やっぱりP90って可愛いんだ。

たしかに周りの銃とは一線を画す近未来なフォルムだからな。俺も嫌いじゃない。


「あ」


「どうしたの?」


「これ…いいかも」


どうやらビビット来る銃に出会ったらしい。

しかし、また随分コアなことで…


「なになに? この銃見てみたい?」


「うぉっ!?」


いつの間にか後ろに立ってた店員の沙織さんが興味あり気に聞いてきた。


「競技銃のtype96といい、さっきP90にも興味あったみたいだけど、愛結火ちゃんってサムホール好きなの?」


いわれてみれば確かにサムホールストックに結構目が行ってたような気がする。


「さむほーる?」


「握るところに親指の通る穴が開いてるやつのことだよ」


「よくわかんないけど、これ好きかな」


「持ってみる?」


こくりと頷いた柊さんは恐る恐る渡される銃を手にする。


「いい感じ! これにします!」


大き目のマズルブレーキと四面レール、なによりサムホールストックが大きなアクセントになってるその銃を満足そうに構える。

まるで競技射撃みたいだ。


へぇ一応EBBなんだ。あれ、意外に安い? あぁ元がプラスチックだからその分安いのか。

結構予算の節約できたな。

柊さんお気に入りの銃は一旦沙織さんに預けて、細かい買い物を続ける。


「あとはゴーグル類と多段マグとバッテリー充電器。ってところかな」


「服とかは?」


「えっ!? そっちもそろえる!? 予算全部使うの?」


「使うつもりで来たけど…やっぱりまだ早い?」


「早いっていうか…今後の弾代とか参加費とか大丈夫?」


「…!」


どうやら考えてなかったみたいだ。定例会の参加費は1000円。玉一袋は1000円ちょっと。一回で2000円は持っておきたい。


「そのくらいならお小遣いで何とかなるしよかったぁ…でも先輩たちから浮かない? 大丈夫かな?」


「私服でする人も結構いると思うけど、心配なら…そうだな。この帽子とこのチェストリグ、この安いタンカラーのBDUの上下セットでいいんじゃないかな」


「それでも結構まだあるよ?」


この子は本当に諭吉さん10人使い倒す気だろうか。


「んじゃ、このブーツに………」


初めて女の子に服を選んであげました。

でもなんでだろう。全部ミリタリー装備なんだ。


お会計まで何時間かかっただろうか。試着に試着を重ね、ついに【最強のコーデ】がきまった。

なんでだろうか。途中からたまたま居合わせた知らないおじさんも手伝って(乱入)くれて柊さんはどんどんと進化していった。


「合計で7万4800円ね…。結構買ったみたいだけど…愛結火ちゃん、本当にいいの?」


「みんな私のためにいろいろ考えて頑張ってくれたんですから、ここで買わない訳にはいきませんよ」


「そっか。んじゃお釣りね。荷物後で私が家に届けよっか?」


「お願いします…さすがに持っては歩けないので」


「わかったよ。んじゃこれポイントね。74ポイント」


ドドドドドドドドドっとものすごい勢いでスタンプが押されていく。1000円で1ポイント。25ポイント毎に次回から500円引きできるクーポンになるらしい。

それが2枚は確実に埋まる。さらに元からあったポイント分も加算して1500円分クーポンが手にはいった。


「海翔君、今日こうして付き合ってくれたお礼っていうか…これ使ってくれない?」


そういって受け取ったばかりの三枚の割引券を差し出してきた。


「そんなのいいよ。俺だって楽しかったし、持ってたほうがいいよ」


「…だめかな?」


断りに断れなくなった俺はお言葉に甘えてBB弾一袋買わせていただきました。


(ちょろw)


なんだか沙織さんが失礼なことを思いながら笑ってた気がするけど取り合えずスルーした。


買うものは全部買ったので、ショップを出た俺達。


「うわ。もうお昼過ぎてるのか」


「もう2時だよ…そう思ったらお腹すいたぁ」


俺も空いたな…家に帰っても残ってないだろうし…

買って帰るか


「か、海翔君はこれから時間あったりする?」


「休日は基本ずっと暇だよ」


「そ、そうなんだっ! …じゃ、じゃあさ、ご飯食べに行きませんか!」


「い、いいですけど…」


唐突の敬語に俺もつられて敬語で返してしまった。

そんなこんなで近くのファミレスに入った。

良くあるチェーン店。


特に特質すべき事も無いような平凡なファミレスだ。


「俺チャーハンにしよ」


「私はハンバーグにしようかな」  


俺も柊さんも注文が決まってオーダーする。


「明日サバゲーって感じしないね」


「そだね。まぁ、そんな大事でもないし遊びに行ってくる感覚で良いと思うけど」


「えぇ~? 私結構楽しみにしてるよ?」


「そっか、明日一日晴れみたいだし気温も高くないから良かったわ」


「つまり、サバゲー日和って事だね」  


サバゲー日和か。たしかに、春先の暑くもない気温は動きやすいし気持ちが良い。

サバゲー日和か、まさに明日がそれだな。


「そういえば、サークルのことはクラスの人に話したりとかした?」


「んー、全然話してないかなぁ」


「やっぱりまだ友達には話せないよね」 


「そう言うことでも無いんだよ…なんかこう…サークルに入ったことも別に教えても良いんだけど、きっかけが無いって言うか、なんで入ったの?って聞かれると答えられないんだよね」


「流れで入ったってのが本当のところだけど、楽しそうだったからじゃダメなの?」


「んー、そんなんでいいのかなぁ」


(お待たせいたしましたー。こちらハンバーグセットになります)


どうやら柊さんのハンバーグの方が早く出てきた。

普通チャーハンの方が早いと思うんだけど…気のせい?

まぁいいや。


「明日ってどのくらい人来るのかな」


「どうなんだろうね、ブログとか見てるとイベントの度に参加者増えてるみたいだよ…最近だと300人だってさ」


「ひぇぇ~」


「明日は今年の開幕戦だしもっと増えてるかも?」


実際どうなんだろうか。明日にならないとわからないけど、緊張もありそれ以上にわくわくがたまらない。


(お待たせしましたー。チャーハンになりまーす。伝票こちらに置いておきますねぇー)


そんな感じで初めての女の子との外食は過ぎていった。

意外に何とかなった?

俺意外にできる男?





楽し気にミリタリーな会話に花咲かせる俺たちを、じっと見つめる視線など気づきはしなかった。






「お腹いっぱいになったし、これからどうする?」


「ん~。…ごめん何も考えてないです」


ファミレスを出会た俺たちはここでお開きにして帰ることにするか何かやるかで悩んでいた。

買い物だけだと思ってたからなぁ


柊さんはまだやり足りない感じだけど、申し訳ないけど何も思いつかない…

さっきできる男といったな。あれは嘘だったようです。

結構な時間粘った。


「仕方ないね…今日は帰ろっか…」


「そうだね。明日結構朝早いし」


「そうだった…7時に学校でしょ? 早いよねぇ…」


7時に学校集合。時間厳守なのだそうだ。


“一分一秒も待たんからなGJ(グッジョブ)!”


ぴかーんと光る真っ白な歯。日焼けして日本人とは思えないくらい色黒の顧問、豪堕将司がサムズアップしながら言ってたな。


先輩たちからはこれは脅し文句じゃないぞ。と念押しされた。

過去に寝坊して必死に走ってきて集合時間にぎりぎりだが間に合うかとみんな思ってた。学校の敷地にも入り駐車場を全力ダッシュしてくる姿。だが腕時計を確認した先生はエンジンをかけアクセルを踏んだそうだ。

必死に走ってきた先輩の目の前で発車する先生の車にガクンとひざを折り

【まってくれぇぇぇ…俺はここにいるぞぉぉぉぉ…!】

と天に叫んだそうだ。


なんだか鬼を思い出したような顔面蒼白で俺たちに熱心に話してくる手前、きっと当事者なのだろう。


「遅刻する訳にはいかないね…」


「だな…」


一秒も待ってくれない。比喩でもでたらめでもない。

それが鬼畜顧問…豪堕将司という先生なのだ。


そんな感じで早起きすると誓った俺たちは帰路についた。











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― 新着の感想 ―
なんか、探してた内容全部詰まったような感じでさいこうでした めちゃくちゃ面白かったです、次回も楽しみに待ってます頑張ってください
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