【第五話】サークル
ひっさしぶりです!
まだ続くんです!
「ほ、本当にサバゲーサークルに入ってしまうなんて……」
「ほんとだね……まさかこんな風に決まるなんてね~」
俺たちは今、3回目の放課後を迎えた。
いつもならここで、自宅へと帰るのが普通だったわけだが……
昨日、流れに飲まれたとはいえ……あの場でYESと返事をしてしまったからには……顔を出さないわけにはいかない……。
「ここ……で、あってる?」
「なんだか……やけにボロいな」
確かに【倉庫D】と言う表記のとなりに小さくサバイバルゲームサークルと書いてあった。
なんといっても……横にスライドさせるタイプの木の扉? がボロかった。
「立て付け悪いし……」
やっとの思いで扉をこじ開け中へと入る。
「こ、こんにちわ~」
お、中は意外ときれいになっている?
倉庫だからか色々なものが壁に寄せてあって、倉庫と言うわりには物置に近い感じを持った。
てっきりあの扉を見たときには、きっと中は蜘蛛の巣とか埃がたくさんあると思いもしたが、案外まともで一安心と言ったところだ。
「あ、新入生のご登場だよぉ~ ようこそ~」
「お、来たか」
「よし、これで全員……かな?」
あれ? 昨日より一人少ない気がする……
気のせいか? いや、確かに少ない。
というか、新入部員は俺達だけだろうか?
「あ~、あのアホは補習ね」
「え!? この新学期に補習ですかっ!?」
「アホのことは今は気にしなくても良いわ、そのうちアホがほんとにアホに見えるときが来るから」
「あぁ~、確かに来るな、日曜日に」
「あのアホは見物だぜ、つい俺達もアホになっちまう」
先輩部員全員が口を揃えてアホアホと呼ぶ。そんなにアホなのだろうか…
それに自分たちもアホになるとはどういう意味だろうか…
気になる。
「はい、アホがいないけどミーティング始めるわよ。みんなも知ってると思うけど、今日から私たちの仲間となる新人を2人も捕縛してきたわ」
いやいや、捕縛ってなんだよ!
「今日は自己紹介してから…してから…なにしよっか」
大丈夫なのかな…レッグホルスターの先輩…
と思っているとポテチ食べてる少し小太りした先輩が口を開いた。
「今週の定例会のこと話せばどうだろう? サバゲー知るには実戦が手っ取り早い」
「そ、そうね。鈴宮君はある程度知っているみたいだけど、後で愛結火ちゃんは詳しくは知らないから説明するね」
「は、はい!」
俺はほとんど知っていた情報だったから詳しくは聞かなかった。その代わりに少し詳しく部屋を見渡した。
部屋の隅には穴だらけの段ボールが放置されていた。恐らくBB弾の的として利用されたのだろう。そして、所々にはBB弾が転がっていた。
先輩方はいったいどんな装備なのだろうか?
それが俺の今の楽しみでもあった。ガチガチの本物装備なのか、それともラフなPMC装備なのか、獲物はなんなのかとかとか、
人の装備を見るのも楽しい物だ。
「はい、自己紹介から、まず私。このサークルの創設者であり3年の│桐坂琴音よ。私のお気に入りはこのベレッタM92Fで、普段のメインはM4A1。ありきたりだけど良く当たり良く飛び使いやすい銃よ。隊長って呼ばれてるけど呼び方は何でも良いわ」
隊長はベレッタとM4か、確かにありきたりだが逆に言うと多くの人が使いやすいと思っているからであり、その銃のポテンシャルの1つだ。
もっともM4は天下のアメリカ軍様が正式採用してるだけあって人気は銃の中でもトップクラスだ。ゆえにカスタムパーツもあふれるほど存在し拡張性もトップクラスだ。いじり倒したい人向けの銃でもある。
ハンドガンのベレッタも同様だ。特徴的なスライドが大きくえぐられ銃身が丸見えのフォルムは多くの人から美しいと謳われている。俺もその美しさに取り込まれた1人だ。
「はい、次」
「おれか、俺は3年の│三橋巧。メインはG3と、たまにFA-MASを使うな。サブはブロック17だ。これから背中を預けることになる。その時はよろしく頼むぞ」
「次は私、2年の│桜刀冬。メインはMP5Kだよ。サブは今のところ持ってないけどあえて言うなら…手榴弾かな。フィールド走り回ってるから戦線孤立すること多いけど、その時は援護してくれると助かるよ!」
こちらの2年の女性先輩は手榴弾使いなのか! これは珍しい。サバゲー動画見てると手榴弾って強そうなのに使っている人が少ないんだよね。なんでなんだろう。
それに三橋先輩とか高校生かよって思えるくらい迫力あるな…とても強そうだ。
「次は僕だね、僕は3年の│岡部一樹。SWAT装備でG36Cと、桐坂さんと同じベレッタを使ってるね。あとHK416も持っているよ」
残されたのはさっきの小太りした先輩だった。いったいどんな装備なんだろう。
「次は自分だな、橋本竜馬と言う。自分は天皇陛下のために…「それ長いからカットね!」」
あっ…、日本軍の方でしたか
「自分は三八式歩兵銃と九九式軽機関銃、南部大型自動拳銃を使っている。しかし過激な思想は持っていないのでよろしく頼むぞ」
変な先輩だなと思ったが、よく考えるとその装備に驚いてしまった。この日本軍の先輩は装備に何十万かけているのだろうと…
ちらっと日本軍の銃を見たことはあるが、そのどれもが10万とか、それ以上もあった気がする。
それをさらって言ってのける辺り、この橋本先輩という日本兵の方はのめり込みが凄い。
俺が内心驚いていることを察した桐坂先輩、もとい隊長が少しあきれたように口を開いた。
「ここにいるのはみんな変わり者よ、がっかりしないでね? でも、もっと頭のねじが吹っ飛んだやつがあと2人もいるの。1人はさっきのアホと、もう1人は…」
その時、部室の扉がガラリと開いた扉に中にいた俺を含む全員の視線が集まった。
【待たせたな】
「なっ…」
なんだ!? どこぞの│伝説の傭兵(ス〇ーク)のような台詞をなんの違和感もなく言ってのけたこの大人は!
「お帰りなさい先生、グアムはどうでした?」
「おぉ! 最高だったぞ! やっぱり実銃は気分がすっきりする」
入学式では見かけなかったな、この色黒先生
「おお! 新入生か! 歓迎するぞ!」
「はい、こちらがミリオタの鈴宮君とASF競技者の愛結火ちゃん。部員の自己紹介は終わったので先生よろしくお願いします」
「おぅ! 俺は豪堕将司だ。このサークルの顧問だ。体育の授業を受け持っている! サバゲー歴は25年! よろしく頼むぞ!」
胸板が厚く丸太のような腕。そのたたずまいはマジで教師と言うよりは兵士と呼ぶ方が違和感がないような気がしなくもなかった。
「はい、それじゃあ次は君たちの番ね。みんなと同じようなこと言えば良いから、じゃあ鈴宮君からお願いね」
俺は少しばかり緊張したが、その固まった口をほぐすように開いた。
「は、はい! 鈴宮海翔です! 」
ここは四方がコンクリートに囲まれ、床には白い小さな玉のような物が無数に転がる。そんな部屋だ。
パンッ!
空気の破裂音に混ざった、ギュン!と言う不思議な音だった。
パンッ! パンッ!
続けざまに2回。
奇妙な音が続いた。
彼女の足下に白い玉のような物が跳ねてきて、コロコロと転がった。
「さすがだな、愛里沙」
「ええ、どうも」
男に彼女は軽く返事を返し、新しいマガジンへと手を伸ばした。
男は再度口を開いた。
「どうだい? SR-25の調整具合は」
「そうね…セミのレスポンスはさすがね、ハイトルクに16:1のギアでハイサイ寄りのチューンかしら? ギア鳴りもほとんどないし海外製とは思えないわ。」
「さすがだ! 少し撃っただけで見抜くとは!」
男は「そうだろう、そうだろう」とたいそう満足したように腕を組み喜んだ。
しかし彼女は「でも…」と、彼女は続けた。
「フルメタルの長物はさすがに重いわね、それにセミしかないのもゲームではけっこう不利。私のスタイルにはあまり合わないわね」
「そおか…たしかに重いよな」
SR-25は7.62mmセミオートマチックライフルという分類の銃であり、ボルトアクションライフルと違い、撃った直後に自動で次弾が薬室に装填され射撃可能となる。射撃の精度もセミオートマチックライフルとしては優秀。
多数の敵を相手取るときとても有効な狙撃銃だ。
しかし電動ガンでのSR-25は大手国内メーカーである東京BBのラインナップには存在しなく、海外メーカー製となる。
海外の制度と日本の制度のは大きく異なるため、輸入時に法律上の威力オーバーやどうしても初期不良の不安があるためショップや自分で日本の法律に適合するように調整しなきゃいけない。
「まぁ、好きな銃見ていってくれや」
「そうするわ」
ゆっくりとSR-25を置くと、棚に掛けられたたくさんの銃たちを見渡した。
そこで、1つ目にとまる物があった。
「│SCARか。このスカー良いかしら?」
「おう、良いぞ。バッテリーはSRの使ってくれー」
「わかったわ」
「か、海翔くん…買いもの付き合ってくれる?」
「え、あ、はい…はっ!? はいっ!」
美少女に抗体が無いというのも困りものだった。