【第四話】勧誘!
ようやく本編には入れそう?
このままではただのいちゃいちゃ学園ものになっはてしまうところだったので、どうかご期待ください。
(はい、皆さん席についてくださいね……、それではショートホームルームを始めますからね……。えぇ~っと、今日から各教科の従業が始まりますが初日の今日はオリエンテーションになります。んで、5から6時間目の集会は各部の勧誘集会となるので、みなさん入りたい部活を考えている人は仮入部の手続きがありますので注意したください。んじゃホームルーム終わり)
少しざわついた教室。理由は明白で、知り合いになった近所同士でなんの部活に入るかと言う話題だろう。
静かに聞いてると野球部だとかサッカー部とか吹奏楽部とか……多種多様なようでどこにでもある在り来たりな部名が聞こえてくる。
俺自身、運動は誇れるほど得意とは言えないし、楽譜も事前にドラミファソラシドに片仮名で書き直さないと無理。譜面見ながら演奏とかは論外。
絵の才能も棒人間を書かせたらそれなりに上手い。
だから、中学の時は部活どころか目立った役職は避けてきた。
帰宅部と言うありもしない仮想の部活を称えて過ごしていた。
その気持ちは高校になったからって変わることはなく、現にどの部にも興味なんて沸くことはなかった。
「海翔君はやっぱり部活には入らないの?」
「そうだねぇ~、珍しい部活もないみたいだし、ほとんど中学と内容変わらないんだよねぇ~」
昨日と変わらない柊さん。昨日は色々あったけど……本当に色々知れた1日だったけど、逆に考えればお互いに隠し事の無い関係になれて前より打ち解けた?
「そう言えば、私立だけど射撃部がある高校って無かったっけ?」
「あぁ~……私も一応は考えたんだけど、やっぱり私立だからさ~。それに、これは趣味としてやってたいから……」
「なるほどぉ。確かに趣味と部活じゃ意味が違ってくるよなぁ、みんなの期待とか?」
「そう……それを思ってから急に行きたく無くなって、普通の高校行って趣味として続けようと思ったの」
昨日見た店内スコアボード見る限り、プロも混じる大人の記録に食い込む実力を持っている柊さんが、射撃部とか入ったら普通の部員ではなく、学校の名を背負うことも出てくる……。
確かにそう思うと気が重くなって当然っちゃぁ当然だよなぁ。
「なになに? 部活の話!?」
「そ、そんな感じかなぁ~……アハハハ……ハハ……」
そうだった……この話は内緒だったんだ……
危うく口か滑るところ……頼むから柊さん、そんなに心配そうな顔をしないでおくれ……
「……ふーん。まいいや、んで部活はいるの?」
「俺は予定はないな」
「私も……今はないね」
「そうなんだぁ~、じぁあさ一緒に放課後にいろんな部活の見学してみない? 一人じゃあちょっと恥ずかしいし…… みんなはもう入る部活決めちゃってるみたいだから……ね?」
みんな決断力すごいな……部活って1度入ったら中々退部届け出しづらいと思うんだけど……
まぁ、万に一つの可能性も無いがもしかしたら入りたい部活も見つかるかもしれないことを考えれば、……んぅ~……やっぱり損の方が大きいかも。
「良いよ! 海翔君も来てくれるよねっ♪」
「お、おう……?」
ヤバい……勢いに流されてYESって言っちまったよ……トホホ
これはもう逃げれないかな……。
あ、学校の施設を覚えることを考えれば損より特の方が上回るかな?
なにしろこの高校やたら広いし……本当に公立高校かよっ!ってレベル。
さらに、この高校の敷地内には小さいながらも工業学科や商業学科、農業学科など専門的な事を2年生から選択して専攻できるらしい。
もちろん今まで通り普通科を進むのも可能だ。
普通科の上位学科として特進学科と言うのも存在する。普通科に比べて教室がピカピカしてるらしい……噂だから“らしい”だ。
農業学科については校舎は小さいが敷地が広大で、都市部にも近いこの土地で、なんでこんなのが維持できるのかが謎だ。
柊さんが先程口にした「普通の高校」にしては、ちと語弊があったかもしれない。
探したら泥だらけの戦車とかゴロゴロ出てきそうな雰囲気だ。
俺達の教室があるここは「A棟」
A棟は俺達普通科が集められていて、1階と2階が1年生の教室群で、3階が2年生と3年生の教室群だ。
2年生からは学科変更が可能なため、必然的に普通科の人数が減るためだ。
まぁ、そう言うわけだから……
「この高校ってピクニック出来そうだよね……」
「確かに……。真面目に出来そうだな……」
少し真面目に考えたら本当に出来そうで怖い。
農業学科には昔生徒が自力で引いたとされる小川が流れてるし、観賞用の花を育ててる区画も当然あるだろうし……。小規模ながら水田も見かけた。
あれ? この高校って籠城するにはかなり最適な場所なんじゃ……
本当に異色の学校だよなぁ~
「あ、1時間目始まるみたいだねぇ~」
気づけば見知らぬおじさんが教卓の後ろに立っていた。
(はい、初めまして今年の数学の教科担任をします斎藤 健二と言います。今日はオリエンテーションと言うことで……)
そして、5時間目
担任がドア付近で俺達に叫んだ。叫ぶ? 周りの雑音に掻き消されないように少し強めに話していた。
「ほら、椅子もって廊下に出席番号順で並べぇ~! こっちが先頭で2列な!」
このフロア全クラスが廊下に出ている状態だから、全体的にガヤガヤしてる。
そんな調子で体育館に向かわされ、クラスごとに着席して行く。
ま、あとの流れは各部がパフォーマンスしたりと必死にPRが続いた。
ワンダーフォーゲル部ってなんぞ?って思ったが、噛み砕くと登山部。校内ではひたすらトレーニング……俺には無理。
次に印象深かったのがロケット製作の発表で、これはロボット部、化学部が合同で進めているプロジェクトのようで、デカデカとスクリーンに流されたこれまでの成果が流された。
その間、いかにも農業系ってわかる人達からの視線がやけに厳しかった理由はすぐわかった。
(この動画のように、毎年のように引き継がれてきたプロトタイプも今年で大体の方向性は決まり、一昨年は酸化剤は化学部製の濃度70%の過酸化水素水。燃料に灯油を使用し液体燃料ロケットと決定しました。エンジンや機体の製作や電装は我々ロボット部が請け負い、このV-1が完成しました。)
また動画が再生される。てか、V-1って……もうちょっとで危ないロケットになるぞ……
しかしV-1も中々の危険物だったと言うことを痛感した。
(この試験地として農業学科の畑を借りています)
カウントダウンが開始される。
0になった瞬間。それは真っ赤な炎と黒いキノコ雲に変わっていた。
紛れもない爆発事故で、辺りは火事だった。
農業学科の方が目元を押さえる。
《わ、わ!? 消火ぁぁ! 消火器どこだぁ!》
《水、水! 畑に広がったらヤバいぞ! 》
関係者が慌ただしく走るところでその動画は終わった。
(先輩方の失敗を研究し、今度こそと言う熱意でV-2が先月完成しました。今回は初打ち上げの瞬間を今ここで生中継したいと思います!)
みんなのざわめきが明かに高まる。
それにしても……本当に自信ある様子だよなぁ~
カウントダウンが早々と始められる。持ち時間も残り少ないのだろう。
0!
一瞬だってロケットが消えた。
みんな「おぉっ!」って言う感じで上々だ。
しかし、悪夢はこれからだった。
追跡していた生中継用カメラが、不規則にクルクルとスピンするロケットをとらえた瞬間、辺りは静まった。
司会も言葉を失っている。
《落ちるぞぉっ! にげろぉっ!》
《待避ぃ!》
我先にと逃げ惑う部員の中でカメラだけはロケットを追い続けていた。
最後のその瞬間まで……
勢いよく地面に突き刺さったロケットは、また凄い炎と黒いキノコ雲を生成した。
数秒後、ここにもその音が届く。
あれかな? ロケット砲かな?
その後、しばらくお通夜状態になり静かにロボット部と化学部の部長は去っていった。
彼らは俺達に沈黙と言う贈り物を残していった。
そのあと、それ以上のパンチ力のある部活もなく、あっという間に時間は過ぎていった。
結局、爆発事故を見に来たと言う印象を持ってしまったのはきっと俺だけじゃないと思う。
そして、約束の放課後に突入。
案の定、すぐに柊さん達に捕まり部活見学、とりわけ俺の場合学校探検が始まった。
「んで、見学する部活とかは決まってるの?」
「大体はね? 陸上部と水泳部と……あとは、じょ……乗馬部なんて、良いかな?」
「乗馬部なんてあるんですか? それは驚きです……」
「なんでもアリだな……」
そう言えばパンフレットに書いてあったかも……しっかり見てないけど薄らと……
柊さんも今のが初耳だったようで結構ビックリしてる様子だ。
「それにしても陸上、水泳って運動……ベビーなスポーツ系が続いて、乗馬って理由とかあるの?」
「ん? あ~……お母さんがね、昔私を馬に乗せて走ってくれたことがあってそれ以来忘れられないんだよねぇ~ まぁ、そのお母さんも私が中1の頃だったかな~落馬して首やっちゃったんだ……」
「え!? どうなったの!?」
ふ、踏み込んだ……柊さんが多分ダメな領域に踏み込んだ……。
「あはは! 愛結火ちゃんも鈴宮君もそんなに心配しなくても命には別状はなかったよ。さすがに落馬直後は意識がなかったらしくてみんな大慌て……。田舎だったから救急車も到着が遅れてどうなるかと思ったけど……私が学校から病院についた頃には母さんはベッドの上」
「やっぱり神経とかやっちゃって、右足が不随とまではいかないけど自由が利かなくなってて、今は遠出は車椅子で、家では片足でピョンピョンしてる」
話す口調は「昨日のテレビみた?」見たいに軽すぎるほどだったけど、会話の内容はかなり重かった……。
「それは……大変だよな……」
「ううん? 一番大変だったのはお父さんだよ! お父さんなんて乗馬のインストラクターだったから余計にショックが大きくて……あの時はマジでしんどかった……」
「あはは……お察しします……お、もう少しでグラウンドじゃない?」
校舎沿いに歩いてきて、いきなり開けたところに出た。
一目見た感想は広い……。
校庭? 競技場の間違いだろ!
大きく2つに別れているグラウンドは、右がサッカーコートの周りに陸上のトラックがあるタイプで、左側が野球場の観客席が無いバージョン。
こんなところで開催するであろう体育祭は凄いんだろうなぁ……。あぁ~ヤダヤダ
「お、走ってる走ってる~」
多分あれが陸上部なのだろう。男女混合で練習してるみたいだ。
スターターピストルがバンッ! と、破裂音を奏でている。
やっぱり25口径とかと発射音とか近いのかな……スタートに使うピストルって結構バカにできないからなぁ~
「よし、もう次行こうか!」
「もういいの?」
「中学とやることは変わらない見たいだし、大丈夫だよ」
次は水泳だっけ? プールって……
「あ、やっぱり水泳部は今はいいや、このまま乗馬行こっ?」
「うんっ♪ でも、本当に広いよねぇ~……遭難する人でそう」
どうか、遭難者が俺達になりませんように……
確かに冗談じゃないほどだだっ広い……国立大学と張り合えるんじゃ……
どうやら乗馬部は畑のさらに向こう側にある芝生地帯にあるみたいだ。
歩くこと数分。畑の雪は全て溶けきっているようだ。少し肥料特有の臭いがしてくる……。
そんな畑の中、十数人の人だかりができている。
聞こえてくるのはどこかで聞いたことあるような声。
(破片は全て回収しろよぉ! 畑のクレーターは誰か埋めとけ!)
(副部長! この埋まってるデカイの抜けません!)
あぁ~ロケット砲か……凄い威力だな……あのクレーターに人が居なかったのが不幸中の幸いだったか……。
監視のように目を光らせる農業学科の生徒達の話し声も聞こえてくる。
(どうしてもって言うから種まきの前って言う条件で貸してるけど……あそこに収穫寸前の野菜があると思ったら虫酸が走るな……)
(全くだよ、てか過酸化水素って猛毒なんでしょ? 畑に染み込んでたりしないかなぁ~)
(化学の先生は爆発でほとんど消費されたから大丈夫って言ってたけど、やっぱり怖いよねぇ~)
何となく話が見えてきたような気がした。
ロケット発射には広大な敷地が必要で農業学科の雪解け直後で荒れた状態の畑を借りていた。
毎年のように起こる事故は種まきの合図となっているのか……
こうしてのどかな風景をひたすら見にして歩いてると、「ここどこだっけ?」って学校だと言うことを忘れてしまいそうだ。
「多分あそこだよねぇ? 馬に人乗ってるし!」
「うわぁ……速い……」
見てると本当に簡単そうに見える乗馬……あれにハットかぶって、デカいガンベルトとリボルバー持たせりゃどこから見てもカウボーイだ……。
遠目に見てると、不意に後ろから声がかかった。
「乗馬部に何か用かな?」
どうやらこの学校の3年生の男子生徒ようだ。
ちょっと薄い髪の毛が特徴的だったと思う。
「いや、この子が乗馬部を見学したいって言うから、付き添いに……」
「ほ、本当かいっ!? そうならそうと早く言っておくれよ! 僕は乗馬部の副部長で宮沢 汲田! んで……見学したいって言うのは……」
「は、はいっ! 佐倉美樹って言いますっ!」
「佐倉さんね! さあさあ、こんなところで見学しないで近くで見ていってくれよ」
「え?いや、ちょ……」
悪い人ではなさそうだが……見学希望と聞いたとたん人が変わったかのように佐倉さんを連れていった。
ん~……俺らはどうするか……
……。……。
取り残された俺と柊さんは、少し佐倉さんの様子を見て、大丈夫そうだと思ったから一足先に戻ることを伝えて二人で来た道を歩いた。
「あの様子だと、そのまま入部しちゃいそうだったね♪」
「ずいぶん楽しそうだったし、本当にそうなったりするかもな」
「聞いた話だと、競馬の選手になった先輩もいるらしいから楽しみだよね♪」
「まじで? そんときは大金稼がせてもらうかな!」
やべぇ……なんでこんなに可愛い女の子とこんなに自然に話しているのか……。
結構、心臓バクバクし始めてるし……
こんなことになるなら、中学の時に耐性と言うものをつけておくべきだった……。
「ん?」
そんなくだらない後悔を感じていたときだった。
髪を揺らす程度の微風にのって、異音がこの耳に届いた。
自然界のものではないノイズ混じりの雑音に近い。
《り……解。αがβと……ご、流……指示を……》
確かに聞こえる謎の音声。
柊さんはまだ気付いてないようだが、なんか嫌な感じがしたので「待って」と停止を促す。
「どうし……」
「(ごめん、ちょっと静かにね……)」
柊さんは訳がわからず戸惑いながら首を縦に振り、俺はゆっくりと音の方向へ近づいて行く。
それにつれて、だんだんとはっきりとした会話に聞こえてくる。
《目標の背後をとった。目標はΔに気をとられている。ディナーの合図を……送れ。》
《了解。各自美味しく頂け》
なんの話をしているんだ? 藪の中から発せられてるみたいだけど……それにこの音質って、無線機とかにメチャ似てるな……
「何してるの?」
その時、柊さんが状況を理解できてないまま付いてきた。
それは良いんだけど、少し声が大きすぎた。
《誰だ!》
《ちょっ!? 問題発生! 民間人と接触し目標に存在がばれた! 至急指示を!》
《作戦は失敗。作戦は失敗した。 βは民間人を捕縛! αは周囲の監視につけ》
《了解っ!》
「え、いや……これは……」
「なんか怖いよ……」
これから一体何が始まるのかと考えると、冷や汗が止まらない。
しかし、まだ音声だけでどこに誰が何人いるかなど検討もつかない。
柊さんもかなり怯えている様子で、ちょっと可愛い……じゃなくて俺も怖い。
そして、彼らは藪の中から出てきた。
人数は3人、この学校の制服を着た彼らもあちらもあちらで困惑しているようだが……
(おい、背後を取られるなんてお前らしくないな)
(知らないっ! 本当に気付かなかったんだもん)
「ほぉ?」
そんな謎の会話を話していた二人を背に、3人目の女性が意味深な笑みを浮かべながら口元に手を据えてきた。
「……はっ!?」
その顔を見たとたん俺はその人を一度見たことがあることを思い出した。
それが余りに衝撃的だったから、その時は顔がぼやっとだったが、こうして改めて見たとき、完全に一致した。
確かにその女性は「レッグホルスターの女性」だった。
「なにそんなに驚いて……って!!」
俺の視線が無意識にその右足に向いていたことに気付いた彼女は、驚きの声をあげて顔を紅く染め上げた。
「あなた! もしかしてっ!」
(なんだ、隊長の知り合いか)
(ん~、そうでも無いみたいだぞ?)
「ホルスター着けて街中を歩いてた人……」
(プッ……やべ、笑っちまった)
(アハハハハ、こりゃ随分と隊長もこじらせてるみたいだな……)
「わ、笑うなっ! 後でお前ら覚えとけよ……」
(わー、怖い怖い)
どうやら周りの仲間たちは、その事を知らなかったようだ。
余計なこと言っちゃったかな?
「っ!」
勢いよくこちらに向き直ったかと思ったら、今度は若干怒り混じりの目で俺を見ながら話始めた。
「……驚かせたみたいで悪かったわね。私たちはサバイバルゲーム部……を創部しようとしてる集団よ」
「そ、創部? 部活を作るってことですか?」
「そう、まぁことごとく却下され続けて9回(いや、10回だ)創部条件の2年生以上が5人以上……はクリアしてるはずなんだけど……活動実績が認められないとかなんとかで生徒会の審査落ち」
「それは……何となく理由がわかる気が……」
野球部とかサッカー部は明確な目標となる大会が存在するが、サバゲーに限っては……大会? ゲームが主で、エアガンを使った音を便りに目標を探しだして撃つと言う大きな競技は存在するが、日本ではあまり浸透してないもの。
「サバゲーって、部活にする意味あります?」
「っ! わからないの!? 毎月20000円が部費としてはいるのよ!? 部になったら学校にガス代とか参加費とか弾代とか、消耗品が補えるのよ!」
な、なんと言う……
でも本当にサバゲー部ってのができて、入部特典が参加費ゼロとかだったら入ってみたいかも。
「で、今はサークル活動としてこうして学校の敷地を借りてナイフキルの練習をしてたわけ」
「あともうちょっとで仕留めれるところだったんだけどなぁ~」
「さんきゅっ! 新入生! おかげで勝ち越しだよっ♪」
確かに校内でエアガン撃ちまくるわけにも行かないからな……活動としては妥当……? なのか?
聞いていた限りだとかなり無線での連携も高かったし……
不意に、袖口がツンツンと引っ張られた様な気がした。
「か、海翔君? サバゲーってこんなことしてるの?」
「んぅ……ナイフ戦は滅多に起こらないみたいだけど、こう言った立ち回りはチーム参加の醍醐味かな?」
「へぇ……本物の戦争みたい……」
「そりゃぁ……捉え方によっては実弾を使わない戦争って見方もあるからねぇ~、“死なない戦争”って良く言ったものだよ。ガチ勢になってくると本物と見分けつかないこともあるし……」
“ニヤリ”
「じゃあ、私たちはこの辺で失礼します。活動の邪魔になったら困るので……」
その時すでに隊長と呼ばれていた女性の表情は……
(α、 Δは退路を塞げ) 《了解》
「い、今なんて……」
気づけば俺たちの後ろにはもう二人が立ちはだかる。
たしか監視とか言われてた人達だよね!?
「海翔君……って言ったっけ? 海翔君と隣の彼女さん、うちのサークルに入ってみないかしら?」
「かっ、彼女じゃありせんっ!」
そこまではっきりと断言されると、こちらとしても心が痛むと言うか……なんと言いますか……
「ほぇ? 違うの? ……まぁいいや、私達のこの集まりは部活と違ってサークル。自由な時に、それこそ暇なときに集まってなんかしたり、遊んだり。できれば日曜日のサバゲーにチーム参加したり。あ、まだ部じゃないから自腹でね?」
女子2人と男子3人の先輩に挟まれて、サークル勧誘される新入生。
どうしたもんかと悩んでいると……意外にも柊さんが先に口を開いた。
「わ、私……サバイバルゲームとは全く知りませんけど……ASFならそれなりにできるつもりです! そ、それでも良いのでしょうか……?」
「へぇ~、競技の方だったかぁ~♪ 良かったじゃないカズ、話し相手ができそうよ?」
「よろしくお願いします、私は岡部一樹と言います。 競技側の端くれでもあるのでこれからよろしくお願いします」
ペコリと挨拶を済ませた柊さん……あれ?
良いように言いくるまれた感じがしなくはないけど……
「お、俺は……」
ま、負けないぞ……、流れになんて呑まれるもんか!
「海翔君は、そのぉ……入ってくれないの?」
……。
その日、俺は初めてサークルと言うものに加入した。
読んでくれる方がいる限りこの物語は終わりを迎えません!