【第一話】始まり
勢いで書いてしまいました……
しかしながらかなりリアルに書きたいと思いますので本作品もよろしくお願いします!
朝が来た。
当たり前のことなのだが、毎日に意味を付けるのなら、今のこの朝は特別な朝だ。
なんてったて……
俺、鈴宮海翔はベッドから半身起こした状態で、目の前に掛かる2つの制服。と言っても片方はもう着る機会は無いであろうが……そんなことを思い眺めた。
俺の入る高校は学ランではなくブレザーで、中学は学ランであったためか、少しだけだが新鮮さを感じれる。
「あ、入学式か……」
彼はこの春から、高校生なのだ。
普通に考えれば特別な日のはずなのに、入学への気持ちの高ぶりは何故か小さかった。
勘違いしてほしくないのは、あくまで入学への気持ちが乗らないのであって高校生になることについては、待ちに望んでいたことだ。
俺はまだ硬い制服に腕を通して、ひとつひとつボタンを付けて行く。
そして部屋の隅に立て掛けらた“それ"を一目見てにやついた。
「日曜日が楽しみだ」
俺が一人そう呟くと、何故か答えが帰ってきた。
「うわ……。キモいよ?」
「……っ!? ノックしてから(それは男が言う台詞じゃない!)」
「はぁ……取り合えず着替えて降りてきてね。ご飯できてるから」
それを俺に告げると、そそくさと階段を下りていった“俺の妹”。
俺の家族は極一般的な家庭ではあるのだが、今年から父親が何をしでかしたかは謎だが海外へ3年の出張となった。だから、俺の高校3年間丸々不在と言うことになる。
しかしまぁ、度々ある長期休暇で年に数回は戻ってくるそうだから丸々と言うのは不適合か……
俺は、妹に急かされたようにYシャツと制服を着込んだ。
「おはよう……海」
あくびを堪えながら“海”っと俺の名前を読んで来たのは実の母である。
いつもはもっと朝早く仕事に出掛けて、俺が起きる頃にはもう居ないのだが今日だけは、仕事を休んだようだ。
「入学式なんだから遅刻とか論外なんだから早く食べなよ! 特別早起きじゃないんだよ!」
妹が眠気の覚めない俺に少し声を上げて「はやく食べろ」と急かしてくる。
献立はパン系の朝食だった。焼いた食パンにベーコン。平均的な朝食だった。
それを数分で平らげ「ごちそうさま」と伝え数枚の書類を除けば空のバック片手に“第二志望"の高校へと向かった。
その高校へはチャリで10分、バスで20分、地下鉄で5分。そのあと徒歩20分位の位置にある。受験の日にはちょうど1時間で着いたことを覚えている。
登校に掛かる時間で言えば一般的な位だろうか……
正直、7時とか6時のバスを乗ったことがなかったから、最初は満員のバスに慣れなかったが……その内なんとか克服出来ることを祈るしかない。
そんな俺が満員のバスに揺られながら地下鉄の駅へとたどり着き、自分の靴ひもが緩んでいることに気がついた。
恐らく満員のバスの中で踏まれもしたのだろう。
道の邪魔にならないところで屈んで結び直し、顔を上げた時……
見えたのは可愛い女の子のパンチラでもなく、ミニスカのお姉さんでもなく……
「レッグホルスター?」
俺は思わずそう呟いてしまった。
スカートから恐らく女性だろうか……
それは普通に歩く人からの視界には入らない位置にあったが、少し屈んでいた俺にははっきり見えた。
残念ながらその奥は拝むことはできなかったが、俺のそんなボソッと呟いた言葉はその人に伝わってしまったらしい。
彼女と俺は目があった。
(まず最初に我が校に入学できた新入生の皆様には激励の言葉と共に、これからの発展を期待します)
レッグホルスターを付けたあの女性とは目こそ合ってしまったものの、そのまま人の流れに彼女は流され顔を見る間もなく見失ってしまった。
いやしかし、彼女がホルスターを着けていようが着けていまいが俺には関係ないと言えば間違いじゃない。
でも何故だか、街中で何故ホルスターを?と言う疑問が湧いてからの言うものそればかりが頭に残り今に至っていた。
テロリスト!? 銀行強盗!? 等々ありとあらゆる情報が錯乱したかのようにグルグルと俺の頭を支配していた。
でもまぁ、一瞬見た感じホルスターには銃やその類いは入っては居なかったと感じてもいた。
「(ダメだダメだ……入学式からこんなんじゃ……)」
この高校は不思議なもので、普通自分達の教室に集まって入学式の入場を待つはずだと思っていたが、俺が来たときには適当な教室に来た順で待たされ、入場した。
まさか、これがクラス割りではないだろう。
考え込む俺に、校長の声ではない綺麗な女の人の声が聞こえた。不意に顔をあげると、そこにはラノベやアニメでしかお目に出来ない金髪巨ny……いやいや、金髪の少女が登段していた。
「新入生代表、クロスエンヒィールド・セリナと申します。」
(あれが優等生ってやつか……)
(金髪って本当に居るもんなんだなぁ~。指導されないってことは地毛なんだろ?)
(わからんが、何でこんな学校にいるんだろうな……)
在校生、新入生共々少しざわざわとし始めるなか、クロスヒィールと名のった彼女は話を進めた。
全体的におっとりとした物言いはほとんどの学生をいつのまにか静めていた。
式を終え、いよいよクラスが言い渡された。
やはり、不思議なもので仮のクラスで適当な背の順で並ばされ学校中を案内がわりに歩かされ、自分の教室のところに行くと、バスのようにそこで別れると言うものだった。
俺がその教室に着いたときには、もうすでにかなりの人数が集まっていた。
俺のクラスは1年F組。数えたところ1学年8クラスのようだ。
主席番号順に決められた自分の座席に荷物を置き、一息つくと、入学式独特のピリピリとした“あの”空気が感じられた。
誰がクラスで中心的な立場になって、自分がその人の回りに居ることが出来るのか。とか、
誰が賑やかで明るいやつか、誰が大人しくて良いやつなのか。
でも、逆にこの対になるような性格の持ち主同士なら、誰がクラスで騒がしくて、誰が話ずらくてつまらないやつなのか。と言うことになるだろう。
大の大人からして見ればとても些細なことで意味のないものに思われるかもしれないが、高校生活と言うサバイバルを送る彼ら学生にとってはかなり重要なことなのだ。
自分の席の番号は黒板に書かれていた。恐らくそこへ座れと言うことなのだろう。
中学の頃とは少々居心地の悪い席と感じた。
空間的なことではなく、空気と言うかそんな雰囲気をチクチクと感じれる席の言うことだ。
(初めての挨拶って大切よな……。どうすりゃいんだ? 普通に「初めまして」から切り出すか? 相手から話しかけてくるのを待ってるべきか…… わかんねぇ~)
そうやって、あれやこれやと考えていたら担任の自己紹介や学校の規則などの簡単な説明が終わり、いつの間にかこの日の日程は終わっていた。
このクラスの何人かは既に友達的関係になったようだ……
「やってしまった……この流れはかなり危なくないか?」
そんな事を一人呟いて、これからの最悪な末路が頭によぎったとき、事態は思わぬ方向に進み始めた。
そうさ、入学そうそう絶望するのはまだ早いんだ。
「あのぉ……隣の柊愛結火と言います。これからよろしくお願いしますねっ♪」
「あ、はい! 僕は鈴宮海翔って言います。こちらこそよろしくお願いします」
と言う堅苦しいとも取れて、どこかぎこちない挨拶が続いて次第にだか、少し素で笑い合えるほどにはなった。
そして、柊さんとある程度打ち解けてからは、徐々に他の周りの人との会話も増えていく。それに合わせて自己紹介も順調に進んでいった。
そして、いつしか出身校や住んでる所の話題は終わって趣味の話になろうとしていた。
読書、映画鑑賞、買い物(えげつない価格)とか……みんな色々な趣味を持っていた。十人十色と言うのはこの事だろう。
「海翔君は普段どんなことやってるんですか? 特技とか?」
「と、特技……本当に何も無いな……あ、強いて言えば自転車で遠出とかしてみたいかな~?」
さすがに本当の趣味は、今日あったばかりの彼らに伝えるのは気が引けるし……そんなに偉そうに言うことでもない。いや、自転車で遠出とかしたいのは本心だから嘘を言ったことにはならないと思う。
「へぇ~! サイクリングかぁ~!なかなかなご趣味で」カキカキ……
サイクリング……うん。間違った選択はしてなかったそうだ。ここで、アニメ大好きとかラノベ大好きとか言うと反応は違ったんだろうな。
ん? アニメ?好きですよ? ラノベ? 読みますよ?
好きな趣味を隠すのは良くはないことだと思うけど、それは時と場合を考えないと逆に上手く行かなくなることだってある。
自分を押し出すときと引き込ませるタイミングは重要と、誰かが言っていたことがあったような気がする。
「じゃあ、自転車って特別なの使ってるの? 例えばロードバイクとか?」
「いやいや、そんな大層なものじゃないよ。あえて分類するとしたら俺のはシクロクロスって分けられるのかな……まぁ、ロードバイクと普通の自転車の間くらいと思ってくれれば」
「へぇ~自転車って色々あるんだねぇ♪」
柊さんが、ニコニコと……ヤバい凄い可愛い!
そんな柊さんに周りの目が集まった。
可愛すぎて話しかけづらいって言うのもあるんだろうけど、きっかけができればそのあとは早かった。
「柊さんも趣味とか特技はあるんです?」
「へ? 私、ですか……」
みんなの視線が自然と集まるが、等の本人は随分と長い間考え込んでいるみたいだ。それにあざといとか、可愛い子ぶってると言った雰囲気は全く感じられない。純粋に、本当に困ったような顔をしてしまった。考え込んだ柊さん……マジ天使、じゃなくて!
俺たちは地雷踏んだ? とか、顔を見合わせ、どうにか話を変えれないかとか模索する。
すると、柊さんに話しかけた子が
「ま、まぁ、行きなり聞かれても困っちゃうよね! ね! 人に聞かれたくない趣味の1つや2つあって当たり前か!」
うん……一瞬ナイスだ! とも思ったが、最後のそれはフォローにはなってないと断言できる。
どうかなって柊さんを見るけど……柊さんは意味深そうに右手を開いたり、閉じたり……。それに連動するように腕の筋肉が微かに変化する。右手を見る眼差しを見たとき俺はハッと頭で何かが引っ掛かった。
(ん? なんだ……どこか既視感が……いや、あるわけないはずなのに)
晴れる兆しの見えないモヤモヤがずっと引っ掛かり続け、ついには下校時間に。入学式だから午前中には帰れる。その頃には柊さんもすっかり元気になっていた。
今朝のレッグホルスターの女の子と出会う意外、今日は充実しすぎた。
「柊さんと海翔君は地下鉄なんだよね~? じゃあ、ここからは別れちゃうんだ~」
「そっちは電車だからね~」
「では、また明日会いましょう」
「バイバーイ!」
校門前で2手に別れて帰路に付いた。
流れ的に柊さんと二人でこうして歩いているわけだが……
雪が溶け出して暫く経つと言うものの、道端の雪は当分眺めることになりそうなほど残っている。
シャーベット状の雪がペチャペチャと音をたてながら進む。
「そう言えば、柊さんって部活とか入る予定あるの?」
「部活かぁ~、私って運動とかあまり得意じゃないし、絵だって部活に入ってまで描きたいとは思えなくて……」
「吹奏楽部とかは?」
「それこそ無理だよぉ! 音符なんてちんぷんかんぷんでーす!」
「あらら」
意外に会話しやすい人なんだなぁ~。
「海翔君は?」
「俺も今のところ入る予定はないなぁ」
俺達の入学したこの高校は、少しばかり特殊と言えるだろう。
この高校で校長と言う立場は、高校の責任者と言うだけであり、学校の運営費や方針。さらには学校のPR活動まで生徒会が指揮を執っている珍しい高校だ。
だから、部活動費、生徒会費と言う学校行事に使われる資金の徴収から管理、配分。整理から処理まで全てが生徒会によって管理されている。
噂では部費の配分会議とかは各部とも部費の獲得のため活動実績を少しでも輝かせようと部長などの熱弁が繰り広げられるらしい。
「そっかぁ~ なかなか見つかんないものなんだねぇ~。私なんか高校入ったら劇的に何かが変わる! ってわりかし信じてたんだけどなぁ~」
「それは物語の中だけ、実際はみんな普通になるように世界は回ってるんだよ」
「哲学っぽいね♪」
「そう?」
「うん! それにね、海翔君と私ってなんか……わかんないけど同じような気がするんだよね」
「え、えぇ? そうかなぁ……」
同じところ? 似ているところ……え? 思い当たらないんですが……
「ふふっ♪ そんなに悩まなくても気が合うって思っただけだから」
「……」
目が合わせられないこのヘタレ野郎! この野郎!
心配していた無言タイムはあまり無くて、その点は俺も頑張ったと言える。もっとも、柊さんが積極的に話題を振ってきてくれたお陰が大いに助かったわけだが。
「地下鉄って柊さんはどっち方面?」
「本当は創成駅方面なんだけど、今日はちょっと用事あって大通まで行かなきゃダメなんだよね」
「そうなの!? 俺も創成駅だよ!」
偶然にも地下鉄の駅は同じみたいだった。
てことは、もしかしたら家も近かったりするのかな?
「そうなんだぁ! じゃあ朝一緒にいこうよ!」
「い、良いけど……本当にいいの?」
「?」
「いや、なんでもないよ」
入学そうそう変な噂がたたなければいいが……なにせ、柊さんは時分の美貌に自覚してるのかしてないのか……
「んじゃ、また明日ねぇ♪」
でも、数時間後。二人は再会することとなるのだった。
主人公たちの装備についてご意見要望などございましたら是非コメント欄にてお待ちしております。