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06. へたれオークの憂鬱

余計な描写で本題が遅れる悪癖、懲りずに再発中。

 結論から言ってしまうと、琢郎は昨日巣に戻った後、ヤることはできなかった。と言うより、ヤる気になれなかったと言うべきか。


 巣に戻った琢郎たちが先輩オークに連れられて向かったのは、遠征でエリートたちが捕らえてきたメスが入れられた性処理部屋。そこで琢郎が使うよう貸し与えられたのは、20代の人間族とおぼしき女性だった。

 容貌自体が醜くすぎてその気になれなかったというわけではない。目を見張るような美女ということもなかったが、顔立ちといい体形といい、どこにでもいそうな普通の女と言えた。


 ただし、食事やら寝床やらと同様、性処理においてもオークは階級社会だった。捕まえてきたばかりの新鮮なメスは、ボスや実際に遠征に出たエリートがそれぞれ気に入ったのを持って行き、彼らがさんざん(なぶ)った後で、飽きたら下層のオークたちにいわば払い下げられる。

 それも、さすがにオーク1匹ごとに専用のメスが用意できるはずもなく、数人のメスを下層のオークで共用するという形になる。

 同じく共用でも、成体の儀の時は例外的にわざわざ新しいメスが用意されていたようで、つまりはどういうことになるかと言えば、底辺の琢郎に回ってくる頃にはすでに相手はかなり酷い状態になっているということだった。


 茶色がかった長い髪も、ほどよく膨らんでいる胸も、もちろん下腹も。全てが泥や体液にまみれ、度重なる暴行に精神が磨滅してしまったのか、表情は虚ろで反応にも乏しい。

 本当にまだ生きているのか、不安になったほどだった。


 これが画面の向こうだったら、握った手を激しく動かしていた場面だったが、目の前にあるものは当たり前だがリアルさが違った。

 まともな意識が感じ取れない肢体に、何度も塗り重ねられた穢れ。それも、視覚だけではなく臭いや感触でも生々しさを訴えかけてくる。


 正直、引いてしまった。ドン引きだった。

 そのまま()つものも勃たずに、根が小心な琢郎は酷い光景にショックを受けて性処理部屋を立ち去ってしまった。

 幸い、まだ成体になりたてのせいか、前世の人間としての自我があることが何か関係しているのか。性処理を行わないまま一晩たっても今のところは何も変調は起きていない。



「っても、これからどうするべきか……」


 他のオークたちのように、本能丸出しで腰を振って処理してしまえばいいのだが、どうにも前世からの人間としての意識というか、常識やら倫理やらといったものが邪魔をしてしまう。

 創作物や妄想の中では過激で変態的なものを追求していたが、いざ現物を見ると思ったよりも自分は普通であったということか。ただのへたれだとも言えるが。


「今まで、オカズにするなら基本凌辱系だったが、これからは純愛やハーレム物かなぁ」


 もっとも、今となってはもう2度とエロゲなどできる機会もない。リアルオークの生活となれば尚のこと、凌辱系を離れた純愛やハーレム路線など望めそうにもなかったが。


 半ば現状から逃避するように、そんなろくでもないどうでもいいことを悩みながら、琢郎は昨日教えられた自分の餌場に来ていた。先輩の指導は1日で終わりだったようで、途中までは一緒だった先輩オークは自分本来の餌場に行ってしまい、ここにいるのは琢郎1人(匹)だった。


「そもそも、魔法云々の話はどうなったんだよ? 魔力特化の能力って話だったが、まるで実感ないんだけど?」


 餌場に着くと、とりあえず今を生きるために食料を集めなければならない。

 教わったとおりにキノコや芋などを集めていたが、琢郎はやがて我慢できずにここにいない少年(天使)に向かって文句をこぼす。

 期待とはまるで違う状況に、どこが救済措置だとクレームの1つも入れたかったが、文句を言ったところで少年が姿を見せるはずもない。琢郎の愚痴は虚しく森に吸い込まれていった。


「せめて、今の自分がどんな能力になっているのかだけでもわかればいいんだが……」


 そこまで言ったその瞬間、


「ぅわッ!?」


 突然、ヴンッという音と共に、転生前の白い部屋で見たような不思議な画面が目の前の空間に浮かび上がった。驚きのあまり声を上げてしまったが、それ以上の変化は何も起こらないようだった。

 周囲を見渡しそのことを確認した琢郎は、改めて突然浮かび上がった画面に目をやった。

 そこには、見たことがないはずなのになぜかその内容が理解できる奇妙な文字と数字が羅列されており、その冒頭にはこうあった。



『個体名:タクロー   種族:オーク』

最終行から始まるはずの話題が、本来の予定だったんですが……

次回に続く。

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