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65. 相談

ちょっと短め。

「……と、こういうことがあったんだが、よくあることなのか?」


 帰ってくるのが精一杯で、琢郎はほとんど食材を持ち帰ることはできなかった。採取場所を探している間に、ついでにと採ってきていた木の実が数個と野草が少々。

 そのため今日の夕食は、リリィが加工してくれていた干し肉や、日持ちするのを棲家に貯めておいたものが中心となった。

 その食事の席で、琢郎は森の中で冒険者と遭遇したことをリリィに相談してみた。


「いえ。他の町のことまでは知りませんが……少なくともトラオンでは、普通はないはずです」


 肉と野菜が両方入ったスープの椀を手に、リリィは首を傾げる。


「旅の冒険者がトラオンを通ることは珍しくはないですが、ここの森は冒険者の方にとってはそう魅力的ではないそうです。自分から森に入りたがる人はまずいないですし、わざわざ町の人が森の探索を冒険者の方たちに頼むという話も、ここ数年は聞いたことないですよ」


「つまり、普通はやっぱりこんな奥まで人が来るようなことはない、と」


 少なくとも、トラオンの街ではそういうことだ。ならば、棲家のあるこっちの山はひとまず安全と考えていいものか。

 琢郎としてはそう考えてしまいたい一方、即断も危険な気がする。


「とにかく、しばらくは西の方で新しい採取場所を探すことは見送るべきだな」


 今、確実に言えることはそれだ。

 他には、今度からは町の方へ行く予定はなくとも、姿を隠すためのローブは荷物に入れておくべきだろう。それが今日の教訓だった。


「じゃあ、明日からはどうします? まだこの近くのがなくなったわけではないので、しばらくは大丈夫だと思いますが」


 予定が変わってしまったので、明日以降の行動を問われる。

 リリィの言葉に、あらためて琢郎は考え込んだ。


 西には行けない。

 北側、山の向こうはさっき帰る時に少し通っただけで危険なのはわかった。

 東はというと、街で聞いた話ではあまり進むと山の中腹まで通る別の道が伸びているという話だ。具体的にどのくらいの距離があるのかは知らないが、わからない以上あまりそっちに近づきたくはない。

 やはり活動圏を広げることは、一時的に中断せざるを得ないだろう。


「……とりあえず、明日はトラオンに行ってみる」


 考えた末に、琢郎が出した結論はそれだった。


 リリィの話では、ここまで冒険者が来ることはないだろうとは思うが、確証はない。遭遇を恐れるなら最悪、備蓄を消費して完全に棲家に閉じ篭ることもしばらくはできる。

 だが、何もわからないままでは、いつまで警戒すればいいかもわからない。ならば、普段より慎重になるにしても動かないわけにはいかなかった。


「そろそろまたパンを買わないとならないし、何か理由があって冒険者が入り込んでるなら、町へ行ったら理由(それ)の手がかりでも聞けるかもしれない」


 場合によっては、トラオンからテルマの町まで足を伸ばしてもいい。とにかく今一番必要なのは、冒険者が森の奥まで入り込んだ理由を確かめることだ。


「噂話でも何でも、冒険者たちの目的が分かれば対処もとりやすいからな」


 琢郎の答えに、リリィは少し不安げな顔を見せる。


「大丈夫ですか? 顔を隠した格好で訊き回ってたら、変に思われるかもしれないですよ?」


 それで琢郎が顔をあらためられるようなことになれば、もう棲家に帰れなくなるかもしれない。1人でここを遠く離れられないリリィが、それを心配するのも必然だろう。


「このまま棲家(ここ)に取り残されるようなことにはしないから、心配しなくても大丈夫だ」


「……そうですか」


 安心させるつもりで琢郎は言ったのだが、それを聞いたリリィはまだどこか不満そうにも見えた。

世間が夏休み中に、なんとかもう1話。

会話主体でまた話があまり進んでないですが。

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