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05. 新しい生活

オークの生態について。


 オークとして生まれ変わった日の翌朝、琢郎は早い時間に目を覚ました。というより、目を覚まさざるを得なかった。


 琢郎に寝床として割り当てられた場所は、洞窟を改造して造った群れの巣の入り口近く。

 他のオークの出入りの音が聞こえる上、便所(というか、糞便の堆積場所)にも近い。そのために臭いが漂ってきて、とてもじゃないが熟睡できるような環境ではない。

 そもそもが、寝床と言ったところで、寝具となるのは申し訳程度に地面に薄く敷かれた枯れ草だけ。

 昨日までは似たような寝具で寝ていた記憶はあるが、前世の日本人としての自分を思い出した今となっては、まともな布団が恋しい。


「何だ、もう起きてたのか。なら、さっさと行くか」


 隣で寝ていたオークがしばらく後に起きだしてくると、そう言って琢郎を外に誘う。

 昨日は底辺層の烙印を押された後、寝床として割り当てられたこの場所へ連れて来られるだけで終わったが、今日は同じく食料調達係であるこの先輩オークが、餌の取り方を教えてくれるそうだ。


「うッ……!」


 先導する先輩オークに続き、洞窟の出入り口を抜けて外に出た途端、朝日の眩しさに思わず声を上げてしまう。琢郎としての意識がなかった幼体の頃はずっと洞窟にいたために、陽光を直接浴びるのは今生(こんじょう)では初めてのことだ。


「初めは外の光は眩しいだろうが、我慢しろ。すぐ慣れる」


 先輩オークはそんな琢郎を一瞥だけして、すぐに外に広がる森へ進んで行ってしまう。慌てて琢郎は手を顔の上にかざして光を遮ると、先を行く先輩オークの後を追った。


「近いところは別の奴の持ち場だからな。新入りほど、遠くまで餌を探してもらうことになる」


 ようやく眩しさにも少し慣れると同時、森の木々で直射日光が遮られるようになってきた頃、餌の取り方を教えるという話だったはずが、足を止めることなくずんずん進んでいく先輩オークの背中に疑問を投げると、そんな答えが返ってきた。

 結局、この辺なら琢郎の餌場にしてもいいと言われたのは、巣から2時間以上歩いた後だった。


 着いてから教えられたのは、先輩オークが普段持ち帰っている木の実や草、芋などの見分け方や、簡単な狩りの方法。そうした獲物を見つけるためのコツや、毒性が強すぎてこれだけは食べられないと言ういくつかの毒草や毒キノコの特徴など色々なことを実際に集めながら教わった。

 地中から日本ではまず見ない巨大な芋虫のようなのを掘り出した時には驚いたが、獣肉よりも安定して得られる栄養源なのだそうだ。

 琢郎は前世での感覚から虫を喰うことに大きな抵抗があったが、先輩オークの話ではそもそもこうして集めて持って帰った食料は、琢郎たちには分配されないらしい。ノルマを満たすだけの食料を集めた上で、彼ら食料調達係は自分の喰う分を自分で確保しなくてはならなかった。


「それで、ノルマに満たなかったら自分が喰われかねないんでしょ? 逃げようとか思わないもんなの?」


 教わりながらの作業であったため、2人分のノルマに足りるだけの量を確保するのに夕方までかかった。

 その後、余った木の実とキノコを齧ってかろうじて空き腹を満たした琢郎は、帰路にその話を聞いて、自分の役目を言い渡された時から疑問に思っていたことを口にする。


「馬鹿言うな。逃げたら、メスの当てがなくなるじゃねぇか」


 先輩からの答えはそんなものだった。

 成体後、オークの性欲は急激に強くなるそうで、毎日のようにメスを使って処理しなければ、身体が重くなったり頭がおかしくなったりしてしまうのだと言う。

 群れにいれば時折専門の部隊が遠征に出て人里辺りからメスを奪ってくるが、群れを離れてしまえばメスを自分で確保し続けなければならない。それができずに狂うか、人間や他の種族に討伐されるか。

 群れを抜けたオークのほとんどは、近いうちにそのどちらかの末路を迎えてしまうのだそうだった。

 対して、群れでノルマを果たしてさえいれば、メスに苦労することはない。当然今日も巣に戻ったらお楽しみの時間で、もちろんその時には琢郎の番もあるそうだ。


 先輩の話を聞いた琢郎は、いざとなったら逃げるつもりだったが、それも容易ではないことを知った。

 それでも、思っていたのとはだいぶ違うものの、女と毎日ヤれる。その意味でだけは前世より良くなった。

 そんな風にその時点では思っていた。

基本的には、蟻や蜂のような社会性と原始人レベルの文明水準のイメージでしょうか。前話でも装備の分配で書きましたが、鉄器など人間の武器を奪って使うことはしても、自作はできていません。

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