04. 転生→即底辺へ
*この物語のオークは、一部ファンタジー作品に見られる偏ったオーク像を、さらに独自の解釈で特化させたものです。
あの少年――考えてみると、『神』の部下と言うことは、いわゆる天使に該当するのだろうか――の言葉に嘘はなかった。
琢郎が再び『太田琢郎』としての意識を取り戻したその時、前世で30年間果たすことのできなかった行為を正に行っているところであった。
四つん這いの状態にされた裸の女に後ろからのしかかり、自らのいきり立った下半身の突起を根元まで打ち付けたその瞬間、琢郎は琢郎として再誕したのだ。
生命力に溢れ、特に強い性欲を持つ反面、人型としてはやや知能に劣るモンスターの1種。メスを犯し、その体内で精通することで成体になるという、特殊な習慣を持つ種族『オーク』。
それこそが、琢郎の新たな肉体だった。
「うおおおあああああ!」
感覚がはっきりし、下半身を包む未知なる感触に自分が今している行為を自覚すると、思わず声を上げる琢郎。そのまま感極まって、ほとんど何もできないまま入れたばかりの女の中で発射してしまう。
「ぷぎゃはははははは……!」
「は、早すぎだろ……ぷぶッ!」
その余りの早さに、その場にいたオーク全員による嘲笑で、琢郎の2度目の人生(オーク生?)の始まりは歓迎されることになった。
ひとしきり笑われた後、ようやく落ち着いたこの場のまとめ役である年長のオークに、琢郎は当然のように一番隅に並ぶよう指示される。
その頃には、今さっき琢郎が自分を取り戻すまでの2年余りのオークとしての生の記憶とも繋がって、これがどういう状況かを理解していた。
もっとも、琢郎自身の意識としては少年(天使?)と会った白い空間から今へと直結している。オークとしてのこれまでのことは自身の経験というより、そうした幼体オークの映画を知識として知っているというような感じ。
それによれば、今のはオークの成体になるための儀式のようなものだった。
同時に新たに成体となるオークを選別しており、体格と先ほどの行為がその判断基準になっていた。
今回、成体となるオークは琢郎を含め全部で6匹。相手となるメスは1人しか宛がわれていないため1匹ずつの順番で、行為をしたのは琢郎が3番目だった。
残り3匹の結果を待たずして、琢郎はほとんど問答無用に一番下位の位置に置かれてしまう。
そして、そのまま最後まで琢郎より下と評価されるオークは出なかった。
後で知ったが、琢郎の姿形は転生先が調整されることなく魂に合わせたそのままだったせいなのか、顔こそ豚に似たオークのそれになっていたが、あとはほとんど変わっていなかった。
身長170cm/体重80kgだった人間の時の身体がそのまま一回り大きくなっただけのような体格で、2メートルを大きく超える者が少なくない他のオークと比べると小柄と言えた。
元々そう大きくはなかった股間のモノも、同じく一回り大きくなったことで日本人の平均程度のサイズにはなってはいた。
が、性欲が抜群に強いオークの平均と比べれば言わずもがな……。
そのことがまた、他のオークたちの嘲りを呼んでいたらしい。成体の儀の間もその後も、同期の他のオークたちが琢郎に向ける目は、侮蔑が多く含まれていた。
「では、成体となったおまえらに装備を分ける」
全員の成体の儀が終わると、年長のオークが優れている者から順に、今後の群れでの生活のための装備が配給されていった。
優秀とされたオークには革の鎧やら、どこかから奪ったのか錆が浮いた鉄製の槍やらが渡されるが、評価が下がっていくにつれて渡される物も石槍や石斧と、ランクが下がっていく。
最下位の琢郎に配られた物はと言えば、先が少し尖っているただの石にしか見えない石のナイフと、股間を隠すのがせいぜいといった大きさの1枚のボロ切れだけだった。
「次に、おまえたちの役割だが……」
続いて、群れの中での仕事の割り振りが行われ、琢郎は食料の調達係に任じられることとなった。
やはりこれも最下層のオークに与えられる仕事であり、オークは悪食というかほとんど何でも食べられるために種類は問われないものの、量にはきっちりとノルマが課せられる。それが満たせない場合には最悪共食いで自らが喰われるはめになるということだった。
他にも食事や寝床、性処理の方法などいくつか生活上の決まりが教えられるが、いずれも群れの中の序列で大きく違っていた。琢郎は最下層に位置するために、当然その待遇は惨めなものとなるようであった。
就職もできず、30歳まで童貞を貫いたまま恥ずかしい事故で命を落とした琢郎は、救済措置で転生したはずだった。
が、童貞喪失に自分を抑えられずに暴発してしまったために、その日のうちに前世以上の底辺の生活を約束されることとなってしまったのだった。
直接的な単語を使わないよう、描写に気を遣ったつもりです。少なくともこの場面ではお色気は全く狙ってないので。