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46. 一夜明けて

「うぅ……」


 朝の光が差し込み、眠っていた琢郎を起こす。

 入り口に頭をもたれかけるようにして寝ていたために、顔にかかる光が眩しすぎて否応なく目が覚めてしまった。


 身体を起こして奥の方に目をやると、こちらに背を向けたままリリィはまだ寝ているように見える。

 出入り口を塞ぐような形で琢郎が寝ていたので当然といえば当然だが、寝ている間にどこかへ逃げてしまうというようなことはなかったようだ。


「……さて、と」


 もっとも、琢郎(オーク)と一つ屋根の下で少女が熟睡できたかどうかは疑問だが。昨夜最後に見た時には一応眠りについたように見えていたが、あるいは寝たふりをしていたのかもしれない。


 少なくとも今は、琢郎が身じろぎをして小さく音を立てた瞬間、リリィの背中がわずかに震えたようにも見えた。


「とりあえず、朝食にする木の実でもいくつか採りに出てくるとしよう。リリィが起きた時に俺がそばにいたら、また無駄に怯えさせてしまうかもしれんし」


 リリィに聞こえていることも想定して、次の行動をあえて口に出す。

 その言葉どおり、琢郎は寝具代わりにしていたローブを脱ぐと山の斜面を森まで下りていった。


 実際、起こすために琢郎から近づくのは怯えを誘うだけだ。

 寝ているのが本当にしろ、狸寝入りでこちらを窺っているにしろ、近くにいてもどうすればいいのかわからなかった。


 だったらいっそ、口実を設けて琢郎が少しの間棲家を離れてしまえばいい。

 その隙にリリィが逃げる可能性もないではないが、朝になって明るくなったとはいえ山が険しいことには変わりはない。町からも遠く離れ、帰り道すらわからない状態でそんな無謀はしないだろう。


「それでも逃げようとするなら、そういう相手と思って対応すればいい」


 さすがに初めよりは打ち解けたつもりだが、どこまでリリィを信じていいのか少しわからなくなってきた。

 自家発電と一夜の眠りで頭はすっきりしたつもりだが、どうすれば彼女を全面的に信用できるようになるか、答えが見えない。


 こうして隙を見せているのにも、リリィを試してみようという気持ちがわずかにある。もし彼女の言動に裏表がないのならば、そのことを少し申し訳なく思った。


<風刃>(ウィンド・カッター)


 明るい場所では、昨晩のように目測を誤って木の実を落とすのに失敗することもない。

 考え事をしながらも、琢郎は効率よく何種類もの樹上の実を魔法で落としていく。


 両手いっぱいに果実を抱え、ついでに新しく魔除けの枝も折り取った琢郎は、これだけあれば十分だと帰途についた。棲家まで戻った時には、出かけてから体感でおよそ1時間ほどが過ぎている。


「あ……お、おかえりなさい。それと……おはよう、ございます……」


 琢郎を出迎えたのは、棲家を出てすぐのところに立っていたリリィの声だった。


「勝手に中から1歩も出るなとは言わないが、そんなところでどうした?」


「あの、そ、その……目を覚ましたらタクローさんが見当たらなかったので、ひょっとして昨日のように食材を探しに出かけられたのかと。だったら、わたしも少しでもお食事の用意をしておこうかな、と思いまして……」


 琢郎の疑問に、微妙な笑みを浮かべて答えるリリィ。琢郎がいない=食材調達という発想に直結したのは、やはり先ほどはもう起きていたのかと思ったが、食事の用意をしようとしていたというのも嘘ではないようだ。


 逃げるつもりなら必要のない、昨日使ったコップや鍋やらが持ち出されている。それらと一緒に貸し与えたナイフも持ってはいたが、こちらに向けるようなことはしていない。


 琢郎は、やはりどこまで彼女を信じてもいいのか、またわからなくなった。

3点リーダ少し使いすぎかもですが、できれば流して下さい。

気後れしている感じを表現しようと思ったんですが、だんだん変じゃないか心配になってきました。

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