表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/127

32. 山中深く

あまり内容はないような。強いて言えば新フィールドの地形説明といった感じです。

 植物型の魔物が燃え尽きるのを確認した後、琢郎は新しい拠点となる場所を求めて、山中の探索を再開する。


 必然的に荷物の中の聖木の臭いを嗅ぐことになるため、先ほどまでは半ば無意識のうちに極力嗅覚を働かせていなかった。だが、移動再開後はあえて意識して臭いを嗅ぐようにした。


 やはりまず感じるのは、はっきり嗅いでしまうと生理的な不快感がある、魔除けの聖木の臭い。しかしそれに紛れて、たまに先の戦闘中に嗅いだのと同じ甘い臭いをかすかに感じることもあった。

 その臭いを迂回することで、2度ほど魔物との接触を避けることができた。


「っても、なかなか良さそうな場所は見つかんないもんだなぁ……」


 加速魔法があるといっても、障害物の多い山の中ではそれほど速度は出せない。今後も必要に応じてトラオンの町には出入りすることを考えている琢郎としては、あまり連なる山の奥深くまで進むつもりはなかったのだが、気づくと山頂近くまで来てしまっていた。


「とりあえず、高い場所から1回見渡してみるか」


 山頂に生える一際大きな樹を見上げて、琢郎はそちらを目指す。


 前世を含めて、生まれてこの方木登りなぞまるで経験がないが、今の琢郎には魔法がある。さすがに風を操作したところで飛行することまではできないが、一時的に身体を軽くしたり押し上げたりといったことはできる。

 他から見れば邪道というか奇妙な登り方かもしれなかったが、特に手こずることもなく高い樹の枝の上まで来ることができた。


「おぉっ……!」


 枝の太さと琢郎の体重を考えれば、これ以上は難しいというところまで登りつめると、眼下に広がる光景を見て、思わず声を上げてしまう。

 考えてみれば、転生してからこうして高所に立って、こちらの世界の全景を眺めるという経験は初めてのことだ。


 見渡す限りの大自然。山から川が流れ、その周囲に森が草地が広がっている。遠くには池や湿地帯になっている場所も見える。

 そのさらに向こうには、琢郎が今いる山の軽く倍は高さがありそうな山までがそびえていた。


 だが、今見るべきは山の向こうに広がる人が足を踏み入れていない世界ではない。しばしの間、初めて見る大自然の景色に見入ってしまっていたが、我に返ると身体を反転させて南側に視線を移した。


 こちらはまだ人に近い世界だ。

 途中、木が邪魔になって見えにくいが、南東を向けば遠くにトラオンの町と思しき壁が微かに見える。西から東へ伸びる街道も、途切れ途切れだがだいたいあの辺りだという程度はわかる。

 琢郎が今見るべきなのは、そのもっと手前。山の中腹辺りの地形だった。


「あぁ、くそッ……」


 だが、肝心の部分の地形が見えにくい。木が邪魔になっていることもあるが、視線を東へとずらしていくと、途中で連なった山の一部が南側に張り出しているために、琢郎のいる場所からでは陰に隠れて、その向こうまでは見えなくなってしまっていた。


「ここからわかる範囲なら、まだあの辺りがまし、かぁ?」


 その視線を遮る山の一部に、どういうわけだかほとんど木が生えておらず、岩がごろごろ転がっている場所があった。

 あそこならば、洞窟がなくとも岩と岩の間に隙間ができて似たような空間になっている場所があるかもしれない。


 あてもなく探して回るよりはいくらかましだろうと当たりをつけて、琢郎は再び風を操って樹の下へ降りた。

前回久しぶりの戦闘だったからというわけでもないですが、中身が薄いワンクッション。次回は新居を固めつつ今後の計画を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ