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27. トラオンの町

今回、1度書き直して時間がかかった挙句、少し短めになっております。

「毎度ありー!」


 金物屋の親父の声に送られて、琢郎は店を出た。

 担いだ荷物の中には、購入した直径約25cmの鉄鍋が入っている。価格は小銀貨4枚だったが、銅貨と合わせてもやや足りないため、新たに正銀貨を1枚崩すこととなった。


 金物屋に入る前には、小銀貨2枚で塩の入った袋も買ってあり、同じく荷物の中に入れてある。鍋を買う時に小銭が足りなかったのは、そのためだった。

 この町では露店はあまり出ていなかったが、こうして普通の店でもフードで顔を隠したまま買い物することができている。今のところ、広い道を避けてこの町に続く道を選んだことは正解だったと言えよう。


 山の麓近くにあるこの町が最初に目に入った時には、町全体が壁で囲まれ、入り口の門には兵士の格好をした男が立っているのを見て、選択を誤ったかと後悔しそうになったが。

 実際は、それらはあくまで山に棲む獣や魔物の侵入を防ぐためのものに過ぎなかった。

 魔除けの木が植えられた街道を通ってきた琢郎は、フードを被ったままでも疑われることなく、他の通行者同様に素通りすることができた。


 ちなみに、町の防備の目的やトラオンという町の名を琢郎に教えてくれたのは、町の入り口近くで屋台を出していたおしゃべりなおばさんだった。軽くつまもうと肉の串を1本買ったら、勝手に町のことについて色々と話してくれた。

 塩を買った店や今の金物屋の場所も、もう1本買う代わりにおばさんから聞いて教わったことだ。


「さて、次に買うものは……と」


 ただ、店の場所を聞いたのはその2軒のみ。それ以外の物を買うとなると、屋台のところへ戻ってまた串を買う代わりに教えてもらうか、自分で店を探すかだ。


 鍋と調味料を買えばそれでいいと思っていたが、よく考えてみると鉄の鍋で調理したものをそのまま手づかみにしたり、鍋ごとかっこんだりというわけにもいくまい。

 持ち運ぶことも考えると、そうは割れないコップと同じ木製の食器もいくつか、手に入れておいたほうがよさそうだ。


「食器、食器か……」


 探すとすれば雑貨屋だろうか。あるいは、木製品を売っている店か。

 いずれにしろ、今いる金物屋の近くにあるだろうと琢郎は見当をつける。わざわざ町の入り口まで戻るまでもないと、周辺にある店を覗いて回った。


 それで、注意が多少おろそかになっていたのがいけなかった。


「きゃあッ!?」


 覗き込んでいた店のすぐ傍にあった路地から飛び出した人影が、出てすぐの場所にいた琢郎の背中にぶつかってきた。


「うわッ!」


 突然背後から突き飛ばされるような形になった琢郎は、身体が前傾して1,2歩ほど前に押し出された。転ぶことなく踏みとどまったものの、その勢いでフードが脱げそうになってしまい、慌てて手で押さえつける。


 そのままフードをしっかり被り直しながら、後ろを振り返った。

 そこには、10個近いパンと、それが入っていたであろうバスケットが路上に撒き散らされており、尻餅をついた人間の少女が、落ちたパンを見つめて顔を青くしていた。

いい加減、新たな登場人物を。

ただ、若干流れが変わったせいで出会いが当初予定とは違った形に。

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