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22. 町への潜入

あいかわらず、分量が増えて思うように話が進まない。

 毛皮の余りと、残り半分弱の燻製肉の塊。空になった酒の入っていた瓶に、数枚の銀貨。

 これらを袋の中に入れて、最後に畳み直したローブを上に載せる。そうして袋の口を縛ると、そのまま肩に担いだ。

 それ以外の物は必要ないので、このままここに捨てていくことにした。


<風加速>(フェア・ウィンド)!」


 移動時の定番となった加速魔法で、琢郎は荷物を拾った道へと引き返す。

 魔除けの聖木の臭いがし始めたところで、一旦魔法を解除。今度は道の存在がわかっているので、道まで飛び出してしまうことなくその直前で停止する。


 木の間から道に誰もいないのを確認すると、荷物の一番上に置いたローブを取り出す。新調した毛皮の服の上からそれを羽織り、フードもしっかり被って顔を隠した。


 変装できたところで、あらためて道に出る。

 道は左右に伸びているが、琢郎が進むのはもちろん男が荷物を捨てて逃げ戻っていったのとは逆の方向。

 ローブにしろ荷物の袋にしろ、元は逃げた男の物だ。もし鉢合わせてしまえば、それに気づいた男に不審がられて結果正体がばれてしまう恐れがあった。


 再び加速して、道なりに進んでいって20分ほどは誰ともすれ違わない。別の2つの道と合流し道幅も広くなったところで、ちらほらと道を通る他の人の姿が見え始めた。

 そうなると、衝突事故や目立ちすぎることをさけるため(魔法を使うこと自体は、ローブ姿はいかにも魔法使いといった感じなのでそれほど問題にはなるまいと判断)に、速度はそれなりに落とした。


 それでも他の通行人に比べればまだかなり速かったが、その速度で進んでさらにそれまでと同じほどの時間が過ぎたところでようやく、道の向こうに町並みが見えてきた。

 高い壁に囲まれ、人の出入りを門衛が厳しくチェックするような場所だとマズかったが、どうやらそんなことはないらしい。

 それだけ安全なのか、そのコストに見合うだけの必要性がないのかはわからないが、壁の代わりに周囲に聖木が植えられているだけ。町の入り口には特に関所のようなものは何もなく、人の出入りは緩かった。


「はー、やっぱりこんな感じになるのかぁ」


 そう大きな町ではないようだったが、そこにあるのはいかにも中世ヨーロッパ風と言うかファンタジー風と言うべきか、石とレンガ造りの町並みだった。

 さすがに町中では加速は完全に解除し、人の流れに紛れるように歩きながら、予想通りではあるものの現物は初めて見る光景に声を漏らした。

 町の出入り口からまっすぐ続くこの道は表通りになっているようで、飲食店を含めて何軒かの店が並んでいる。


「んぐッ」


 飲食店の入り口の1つから漂ってきた料理の匂いに唾が湧くが、ちゃんとした店で食べようと思えば、ずっとフードを被ったままだと奇異に思われる可能性があるし、手持ちの金が足りるかどうかもわからない。


 いっそ<透明化>(インビジブル)を使えば見られる心配もなく、金も必要ない――そんな考えも一瞬頭をよぎったが、さすがに無謀だろう。

 オークの群れのように魔法が使えるのが琢郎だけならば問題ないが、魔法の存在が浸透している社会ならば、その対策も普及していて不思議はない。

 具体的にどういった形でかまではわからないが、魔法に対する防犯の用意の可能性は十分にあるように思えた。


 よって琢郎が今していることは、闇の元素をあらかじめフードの下に集めておいて、中の顔を覗かれにくくしているだけだ。


 店には入れないまま道を進んでいくと、やがて町の中心らしき場所に到着する。


「おおッ!」


 一際大きな建物や噴水などもあったが、琢郎の目はそんなところを見ていない。人通りが多くなっているのを当て込んでか、広場のような場所のところどころに構えられた露店に注目していた。


 焼き鳥のように焼いた肉にタレを付けた串。

 クレープのような様々な具材を薄い皮で包んだもの。

 麺類のようなものを出す屋台もあれば、大きな樽から琢郎が拾ったのと同じような小さな瓶に酒を詰めて売っているところもあった。


 こうした場所なら、フードを被ったまま食べていてもそう変には思われないだろう。

 琢郎は喜び勇んで袋から出した銀貨を手に、祭りの夜店ではしゃぐ子どものように露店の飲食屋へと急いだ。

食事のシーンまで入る予定だったんですが、思ったより長くなってしまったのでここまでで。

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