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112. 僻地の現状

やっとの更新です。

 町の大きさはレオンブルグの半分もないが、ギルド支部は来たのとは反対側の西門近くにあるとのことだったため、大通りをほぼ横断することになった。


 途中で肉串を食べ終わってしまったラグードは、その串で牙の間に挟まった肉の欠片をせせりながら先頭を歩いている。

 リザードマンが珍しいのか、すれ違う人の何割かはこちらに一度は視線を向けてきた。


「まぁ、この辺にゃリザードマンは滅多に来ないからな。目立つことになるのはいつものこった」


 ラグードは慣れた様子で、視線を集めることを気にしていないようだったが、共に歩く身としては居心地が悪い。

 ただ、驚きはするもののその視線は怯えるような感じはほとんどない。むしろ、どこか憧れというか期待のような色も見えることが少なくない。


 それがまた、ここで同じように姿を晒しても『人種』として認められずに怯えられるだろう琢郎にとっては、複雑な思いをさせられる。

 ラグードに向いた目の多くが、次いで琢郎たちの方にも流れてくるため、フードをいつもよりさらに目深にした。


 そうして歩いている内、いつの間にか町の反対側まで来ていたようで、


「お、着いた着いた」


 先頭のラグードが足を止めた。

 町の規模と同様、建物の大きさもレオンブルグには及ばないものの、造り自体はあまり変わらないためすぐにそれだとわかる。


 ラグードが大きすぎたため正面の扉を頭を下げるようにしてくぐり、中へと入った。


「あッ……よ、ようこそ当支部へ来てくださいました!」


 受付にいた職員が立ち上がって出迎えてくる。

 途中の人たちと同じくラグードの姿を見た瞬間は驚いていたが、続いて浮かべた期待の色は顕著だった。


 ゾフィアからの手紙にあったように、ここオルベルクのギルドは人手不足になっているらしい。

 中にいたのは今声をかけてきた細身の男と、もう1人中年の女性職員だけで、ロビーに冒険者の姿は見当たらない。掲示板には依頼書の類がびっしり貼られていた。


「ゾフィアさんは、いないみたいですね」


 人のいないロビーを見渡したリリィがこぼす。

 着いたらすぐに再会できるという期待を持っていたが、そう都合のいい偶然は起こらなかったようだ。


「俺はそいつのことは知らねえが、宿を教えてもらっとけば今日中には会えるだろ」


 そう言って、ラグードは声をかけてきた職員のところへ向かう。

 そこでまず、山道の途中にあった倒れた聖木の件を報告したのだが、職員は驚きつつも困った顔になった。


「それは……マズイことになっていますね」


 山道を通ってまた新たに冒険者がやって来る可能性を考えると、早期に対処したいのはやまやまなのだが、そうもいかないのだという。

 植え替えるための聖木の若木を手配してオルベルクへ届けてもらい、さらにそこから荷馬車が通れない山道を人力で担いで倒木の場所まで運ばなければならない。時間的にも、人員的にも厳しすぎる。


「とはいえ、何らかの対処は考えます。貴重な情報、ありがとうございました」


 対処と謝礼を確約して、報告については一段落した。


「それから、宿の紹介を頼む。ヴェステンヴァルトまで行く予定なんでな。休める時にはゆっくり休みたい」


 ラグードが元々の本題を切り出すと、職員の顔が再び曇った。


「もちろん、宿は案内いたします。ですが――しばらくこの町で仕事をする気はありませんか? ヴェステンヴァルトの魔物の大発生は続いてはいますが、普段こちらを拠点にしている方たちも多く向かってしまったせいで、この近辺も手がまるで足りていないのです」


 依頼の束を示しつつ、職員は琢郎たちに訴える。


「3人でも今協力していただければ、非常に助かります。もちろん、ずっととは申しません。あと10日ほど、遅くとも半月もすれば他から応援が来る手はずになっておりますので、それまでどうかお願いできないでしょうか?」


 連れ立ってギルドに来たのだから当然ではあったが、職員は思い違いをしている。


「いえ。このラグードさんとは途中で一緒になっただけで、わたしたちは元からここが目的地なんです」


 リリィが、その勘違いを正す言葉を告げる。


「ゾフィアさんという方に手紙で誘われて、この町へ来たんですが……今どうしていますか?」


 それを聞いた職員は、ギルドに入って来た時と同じように再び喜色を浮かべた。


「あぁ、ああ! あのゾフィアさんのお連れの方でしたか。手紙を出したとは伺っておりましたが、こんなに早く来ていただけるとは思いませんでした。ゾフィアさんでしたら、今日も依頼を受けて出ておられますが、そろそろ戻られるはずです」


 その言葉とほぼ同時に、入り口の扉が小さく音を立てて開いた。

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