09. 琢郎の思惑
作中時系列では前回より前の話です。
魔法を覚えたその日、琢郎は巣に戻ってからスキル『特殊表示』を使って、他のオークたちの能力値を確認して回った。
表示内容は対象との関係などの諸要因による、と説明にあったとおり、多くのオークについてはHPとMPの値くらいしか見ることはできなかった。だいたいHPは180~200超。
一緒に成体の儀を迎えた同期のオークと、初日に餌の取り方を教えてくれた先輩オークについては、筋力などの能力値も見ることができ、(このことから、表示内容を増やす要因の1つに、親密度的なものがあると琢郎は予想。)HP以外にも筋力や頑丈の値が2~3割ほど琢郎より優れているのがわかった。
敏捷の値はほとんど変わらず、知力は2か3程度と琢郎以外のオークが劣っていたが、何よりも驚いたのはMPの値だ。軒並み0。
ボスオークなど琢郎の立場では直接会えずに確認できなかったオークも何匹かいたが、見れる範囲においてMPを有するオークは存在していなかった。
「オークってのは、本来魔法が使えない種族だってことか?」
琢郎はそんな仮説を立てる。
これが事実とすれば、魔法の力を示すことで群れでの立場を劇的に変えることができるかもしれない。一瞬そんな考えも浮かんだが、すぐに考え直した。
転生によって得た魔法の力は、琢郎にとってはあくまで自分の、自分だけの力だ。群れの中での立場を強めるためとはいえ、笑って自分を底辺層に送った連中のために、その力を行使するつもりにはなれない。
オークの群れはそういうものと理解はしているが、それとこれは別だ。
「なんだ、まだこんなとこでうろついてるのか? 先に行かせてもらうぞ」
琢郎以外の食料調達係も巣に戻って来た。彼らは今日のノルマを差し出すと、みんないそいそと性処理部屋へ向かう。
ここでも、琢郎は他のオークと相容れないものを感じる。欲望のままに行動する彼らとは違い、琢郎は尊厳の欠片もなく犯され続ける性処理部屋のメスたちの姿には、興奮よりも嫌悪が強い。
さすがに彼女たちを救い出そうと考えるほどの偽善は持たないが、見たくもないというのが正直な気持ちだ。
「ぅ……」
だが、気持ちとは別に、オークの性が琢郎の下半身の一部を重くしている。2日続けての性処理の拒絶は、琢郎の身体に悪い影響を及ぼしそうではあった。
ボロボロの女性にさらに凌辱を加えることを嫌う感情と、それに反する肉体の欲求。これにどう折り合いを付けるかといえば、琢郎は実に簡単な方法で解決した。
8000オーバーという非常識な魔力の源泉となった人間時代の習慣、つまり自分の右手での処理を行ったのだ。実際に試すまでは確証はなかったが、誰も来ない巣の片隅で出すものを出しさえしてしまえば、身体は楽になった。
そうとわかれば、巣や群れに縛られる理由はない。
食料調達のノルマを果たしてさえいれば一応安全な寝床は確保できるため、当面は魔法の練習を兼ねて利用させてもらうが、折を見て群れを離れよう。そして、身に付けた魔法の力で自由に生きていくのだ。
そう心に決めると、琢郎は自家発電の後始末をして自分の寝床に戻った。
魔法の練習その2へ続く。
その1が今回の数日後、次回はさらにその数日後くらいといった時系列になります。




