君と僕 ~お風呂~
宿題を無事終えた僕達はつかの間の休息、つまりは入浴を行うことにした。
「ほら、そんなところで寝てないで。お風呂沸いたぞ」
「う~~ん。後五分・・・」
「そんなネタを今挟まなくても。・・・先に僕が入るよ??いいの?」
「どうぞ~。そうだ!背中、流してあげようか?!」
「しなくて良い。というか何でそんなに嬉しそうなんだよ?」
「え~。いいじゃ~ん。美少女が背中を流してあげようって言ってるんだよ?しかも今はおかーさんもおとーさんも居ないんだから大丈夫だよ?」
「何が大丈夫なんだよ?!しかも自分を美少女とか言い切ってるし!」
「どこをどう見ても美少女でしょ?」
「何処の世界によだれ垂らした美少女が居るんだよ」
「えっ?ここに居るよ??」
「不思議そうに人差し指を唇の前に持ってきても何も感じないよ」
「キス・・・してもいいんだよ??」
「・・・よし、そこのベッドに磔にしてやろうか」
「いや~~!襲われる~!」
「誰が襲うか!!ってかそんなことしてないで早く入ってこいよ!」
いい加減にこのコントにも飽き飽きしてきたのですこし語気を強める。君も僕が本気で怒っているなんて分かってるからはいはい、と呟きながら立ち上がる。
「・・・本当に襲ってもいいんだよ??」
「両手一杯にスナック菓子の残骸をつけた人に言われても何にも感じないんだけど?それとそこで脱ごうとするな!ああ、もう!スカートがべとべとになるじゃないか!」
「え~。幼馴染でしょ?別に下着見られたって構わないんだけど」
「僕はいけないの!それにこのことが知られたら君のお父さんにボコボコにされるよ・・・」
「おとーさん、君の事になると必死になるからねー。おかーさんは構わないっていってるんだけど」
「それはそれで親としてどうかと思うところはあるんだけど、あえて言及しない事にしよう。さ、僕は自分の部屋に戻ってるから」
「うん。お風呂上がったら部屋に行っていい??」
「風邪引いたらいけないから此処で待ってろ。ま、僕の方が風呂は早いから待つこともないだろうな」
「ふーん、だ!私のほうが早いもんねー!」
僕の家。君の家の隣の家。親父も母も今は今でくつろいでるだろう。
「ただいま」
「おかえり。早かったわね。お風呂?」
「そう。親父は?」
「今風呂を頂いたところだ・・・ふむ」
「な、なにかついてるのか?」
「その様子ではまだ手を出してないみたいだな」
「あらあら~。てっきり私はお隣さんの事ついに襲ったかと思ってたわ」
「なんでだよ!!どうしていきなりそんな事を言うんだよ?!というか親としてそれはどうなんだ?!」
「どうって・・・あちらの親との公認の仲だと思っている」
「そうね~。早く孫の顔が見たいわ」
「ふふっ・・・君と俺との孫だよ。素晴らしい子どもが生まれるに決まってるじゃないか」
「あなた・・・そうね。私達の孫だものね!」
「子どもを、しかもまだ成人もしていない高校生の目の前でそんな話をしないでもらえるかな?そもそもしていい話じゃないと思うんだけど?」
「親として孫の顔を望むのは当然の事だろう?」
「そんな思考で大丈夫か?」
「「大丈夫だ(わ)、問題ない(わよ)」
「なんでこんな親なんだ・・・はぁ、風呂はいってくる」
「お風呂からでたらお隣さんに夜食をもっていってあげてね~」
細かな気遣いが出来る母と理解のある親父なんだけれど少々思考が普通の親と違うのが最大の悩みでもある。あれでも僕の事を心配してくれてるのだろう。そう自分に言い聞かせて入浴するために風呂場へと急ぐ。
「早く風呂からあがらないとな・・・」
君が寂しくならないように。
隣同士だから、っていうのは建前で。
僕自身も君ともう少し過ごしたいと願っている。
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