第四話 最初の街
街に到着。
ウルフを撃退した後歩き出して数十分。今度は本当に静かなもので、ライラと他愛もない話をしつつ街へを到着した。
「到着です! この町は【アンファン】といいまして、ランクの高い冒険者はいないのですが、いろいろなものが安く買えるので冒険者になりたての方が過ごすことが多いところです」
中に入ってみると森の中で精霊たちと戯れていた時とは違う、確かな活気を感じる。なかには剣をもっている人なんかもいる。服装に統一感があんまりないし、やっぱり冒険者かな。
「まずはどこへ向かうんだ?」
やっぱりギルドか? それともどこか別の渡り人に関しての保障等について関係しているところがあったりすればそこか? とこが関係しているか全然わかんないけど。
「もちろん冒険者ギルドです。そこで渡り人であることを伝えれば冒険者の登録も無料でできますし、そこで適性の確認もできるので、もしかしたら力の正体がわかるかもしれません」
あ、やっぱギルドなんだ。しかしそれだけだと渡り人が優遇されているかどうかはよくわからないな。
じゃあさっそく向かおうか、とライラに言おうと思ったら……
「でもその前に何か食べに行きましょう! えっと、お腹空きませんか?」
と、若干照れたように言われた。
「そうだな、食べに行こうか。でも俺はお金持ってないけど?」
むしろ何も持っていない。来ている服しかない。
「もちろんわたしの奢りですよっ! ウルフからも助けてもらいましたし、お礼も兼ねたリョクさんの歓迎会です!」
二人だけですが、と笑うライラに俺も思わず笑う。
本当にこっちに来てから楽しい。モンスターには驚いたけど、それもいい刺激になっているような感じだし。普通だったら死ぬかもしれなかったのに平然としてられるのは一度死んでしまっているからだろうか。
「それじゃあ行きましょう! わたしがよく行くお店なんですが、安くておいしいので冒険者にも人気のお店です!」
「あぁ楽しみだ。そういえばこっちに来てから何も食べてなかったしな」
そう。何も食べていない。精霊と遊んでいた時間はわからないけど、結構時間はたっていたはず。だからライラの言う通り空腹であるはずなんだろうけど……不思議と空腹感は感じない。でも食べられない感じもしないから、美味しいものを食べられるなら楽しみだ。久しぶりのまともな食事というのもあるけど。
「はい! こっちです、行きましょう!」
「っとと、引っ張らなくても行くよ」
ライラに腕を引っ張られながら店に向かう。
「ここです。【ケリーヌ】っていうお店で一階では食事ができるんですけど、二階で小さな宿屋さんもやっているんです。わたしも普段ここに泊まっているので、リョクさんもどうですか?」
……そっか泊まる場所も必要だったな。
「そうするかな。食事もできる場所なら便利だし」
「じゃあ女将さんに言ってきますね! リョクさんは先に座って待っていてください!」
……行ってしまった。なんか街に入ってからずいぶんとテンションが高いな。何がそんなに楽しいのかはわからないけど、見ていて元気が出るからいいかな。
「行ってきました! 部屋はわたしの隣の三号室になります。わたしは四号室ですね。何かあったら訪ねてきてください」
「あぁ、ありがとう」
ずいぶん早いな。鍵は女将さんに言えば渡してくれるらしい。で、外に出かけるときは鍵を預ける、と。
「さぁ注文しましょうか! これがメニューです」
ライラがメニューを渡してくれる。それを見てみるが……
「……すまん、ライラ。全く読めない……」
なんて書いてあるか、さっぱり読めなかった。そういえば街を歩ているときにいろんな看板を見たが、どれも読めなかったな。話している言葉はわかるのに、文字は読めないとはどういう仕掛けなんだろうか。
「あ、すいません……渡り人さんでしたものね、読めませんよね……わたしのおすすめでも大丈夫ですか? 何か苦手なものがあれば教えてください」
この言い方だと渡り人はやっぱり文字が読めないのが通常か。話している言葉がわかる理由はなんだろう。あとで機会があれば聞いてみるかな。
「大丈夫、特に苦手なものはないからライラに任せるよ」
「わかりました!」
少ししょんぼりした様子だったが、任せてみると一気に笑顔になった。ほんと、楽しい娘だな。
「あ、すいませーん! 注文お願いします!」
ライラをちょっと眺めていると、注文をとった。
「って、何を頼むか教えてくれないの?」
いやおすすめでいいとは言ったけどさ。
「大丈夫ですよ! 苦手なものがないならここの料理はなんでもおいしいんですから!」
自信満々に言うなぁ。そこまで自信満々だとこっちも楽しみになってくる。少しライラと話していると料理が運ばれてくる。
「お待たせしました、【オルニィ鳥の煮込みシチュー】になります」
運ばれてきたのはシチューとパンだった。やっぱり鳥の名前は聞いたこともない名前だ。
「ありがとうございます! さぁリョクさん、熱いうちに食べましょう!」
見るとどうやら、ライラも同じメニューを頼んだようだ。まずは一口掬って食べてみる。
「……うまい」
「そうでしょうそうでしょう!」
思わず呟くと嬉しそうな声をあげるライラ。大袈裟と思いつつももう一口。今度は鶏肉を食べてみる。こっちも美味い。次にパンにつけて食べてみる。やっぱり美味い!
「美味しいですねー」
ライラも美味しそうに食べている。本当に美味いな、これ。久しぶりに食べたまともなご飯だとはいえ、ここまで美味いと感じるとは異世界おそるべし。
「ごちそうさま」
「ご馳走様でした!」
あっという間に平らげてしまった。見事完食。宿をここにしてよかったかもしれない。
女将さんに軽く挨拶をして外に出る。次はギルドに向かうわけか。
「次は冒険者ギルドに行きましょう。そこでギルドマスターさんにリョクさんが渡り人であることを伝えて、適性のチェックをしましょう。詳しい説明もそこでしてもらうといいと思います」
「その適性のチェックって何をするんだ?」
戦い方の適性とか、そもそも冒険者に向いているかの適性とか? もしくは魔術の属性の適性とかか? ライラは水魔術に適性があるんだよな。
「魔術属性の適性がメインですね。あの戦いからリョクさんが魔術を使えることはわかっていますし、得意な属性がわかれば今後の役に立ちますから」
確かに。あの時に使った術の属性もよくわからなかったし、何に適性があるかはまだわからないもんな。
「あとは渡り人の力の確認ですね。これも適性チェックの一つなんですが、普通の人にはない力があるのが通常です」
今までだと勇者としての適性があったとか、逆に魔王のような適性があったとか、普通の人の数十倍もの魔力を有していたりとか、人間を超越したようなものが結構あったりするという。
なかにはまったく戦闘には向かないけれど、街や国の発展に役に立つような技術的な力が発現する場合もあるらしい。俺はおそらく魔術や……精霊に関することなんだろうな。
「あ、着きましたよ。さっそく入りましょうか!」
話を聞いたり、考えていたりしたらあっという間に到着したようだ。今後に関することだ、楽しみに思いつつも若干緊張しながら俺はギルドへと入っていった。
街へは到着したけど、ギルドは次回。チート具合が明らかに?