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精霊王の加護を受けし者  作者: 柊馨
異常事態
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第二十二話 対スライム軍団

「うわ、ほんとに大量」


「……面倒」


 食料と飲み水を買ってポーチに入れてから街を出て少し、森に入っていつも通り精霊を感じ取れてほっとしたのもつかの間、目の前には大量のスライムがいた。


「本当に妙ですよね。大量にいるのは確認できても今のところこっちには襲い掛かってきてません。攻撃すればその限りではないのでしょうが……」


「だねぇ。ま、これだったら先に遠距離から攻めたほうがいいね。私たちの戦い方を知ってもらうためにも……まずはノエル、行けるよね?」


「……任せて」


 俺が知ってるのはライラの水属性の魔術が少しだけ。クリスが短剣使い。ノエルちゃんが弓使いだってことは聞いていたけど、どういう戦い方なのかはわかんない。相変わらずノエルちゃんは弓を持っていても矢はないみたいだし。


「矢がないけど、どうやって戦うの?」


 だからこそ、思わず聞いてしまう。


「……それを今から見せる。慌てずに待つべき」


 しかし答えは返ってこなかった。そんなにもったいぶらなくてもいいのになぁ。


「あはは……ノエルちゃんは驚かせたいんだと思いますよ。実際見たら驚くとは思いますしね」


「……そんなことない。話はここまで。いく」


 そう言ってノエルちゃんは弓を構える。矢を持っているかのように手をかけ。


「……風の精よ、集え」


 手を開いたかと思ったらスライムに向かって風が放たれた。


「……ヒット」


 スライムが数匹、吹き飛ぶ。弓矢での攻撃だけど、貫くための攻撃というよりは。


「魔術?」


「……その通り。ボクの矢は魔力でできてる。この世には目に見えない精霊がいる。精霊の力を借りた矢がボクの矢。ここは風の精霊がいっぱいいるからやりやすい」


 精霊。その言葉を聞いたときちょっとドキリとした。だけどノエルちゃんは目に見えない・・・・・・と言った。ということはシディアの姿が見えたりするわけじゃなさそうだ。俺の中にいる間は大丈夫とはいえ、無視はできないからなぁ。


「それよりも。今の攻撃でスライムもこっちを敵視したみたい。んじゃ次はあたしの番だね! というわけでライラ、よろしく!」


「うん! 【エンチャント・アクアソード】!」


 これはわかりやすい。打撃も斬撃も効果が薄い相手だからライラがクリスの持つナイフに水の魔力を付加させたんだ。というかそっか、こういった魔術の使い方もあるんだ。


「それじゃ、行くよ! 本当はあたしの戦いを見てほしかったけど、やっぱり数が多くて大変そうだから役割分担! ライラはあたしと! ノエルはリョクと一緒に戦って! リョクは近づいてくるスライムが居たら無理に戦わず後ろに下がって。ノエルはそこをカバーよろしく!」


「……了解。リョク、ボクたちはこっち側」


「あ、うん。わかったよ」


 クリスはスライムの群れに突っ込んでいった。良く見えなかったけど、水の魔力で斬られたスライムはそのまま溶けていくかのようにいなくなっていくみたいだった。


 ライラはきっとその援護なんだろうな。あとはエンチャントの追加が必要になるだろうからってことかな?


「……リョクは好きに動いていい。ボクがしっかりカバーするから安心して」


「うん、お願いね? でも問題があったら教えてね。さて、と」


 ノエルちゃんが言っていた通り、ここら一帯には風の精霊たちがたくさんいる。でも無理に戦わせるつもりはないんだけど……


『主様、大丈夫ですよ。僕は闇属性なので、全くその通りとはいきませんけど、皆、主様の力になりたいと思っているはずですから』


 シディア?


『あ、他の方もいるわけですので僕には話しかけなくて大丈夫です。ただ知ってほしかったんです。遠慮されてしまう方が皆、嫌でしょうから』


 そっか。それは本当にありがたい。


「力、借りるね?」


 ノエルちゃんには聞こえないくらいの声で語りかける。あぁ、皆協力してくれるんだね? じゃあ行こうか!


「風よ、舞え!」


「……!」


 前方にいたスライムの群れが爆ぜる。爆発したわけではなくて、風で吹き飛んだだけだけど、それは確かなダメージとなっているようだ。どんどん消えていってる。


「……リョク、すごい。でも威力高すぎ、もっと抑えて」


「あ、ごめん」


 確かに威力高すぎたかもしれない。でもどのくらいの威力が必要なのかわかんないのが……


「えっと、このくらい、かなぁ?」


 さっきのはある程度の範囲を吹き飛ばすイメージで放った。今度は風の塊をスライムに向かって放つイメージ。


「うん、いいかな?」


 さっきよりはだいぶ威力を抑えられたと思う。スライムがモーゼの如く割れたけど。


「……さっきよりはマシ、だけど。でもいい、そのままよろしく。ボクは近づいてくるスライムを倒すから」


「わかった!」


 なんか呆れ声みたいだったのが気になるけど……正直、皆が張り切りすぎてて威力の調整ができない。でも皆の楽しそうな、嬉しそうな声を聞くと、抑えてとは言えないし……俺のイメージでどうにかしよう。


 そのまま二十分くらいだろうか? 魔術を使い続けていたけど、何匹倒してもどんどん湧いて出てくる。やっぱりエルが言っていたように数自体は減らないんだろうか? 弱っていくと考えれば決して無駄ではないんだろうけど。


「……キリない。魔力が厳しくなる前に撤退すべき」


「だけどどうする? クリスもライラもまだ戦ってるけど」


「……撤退を合図する矢がある。それを上に放つからそれで」


「了解! 俺はそのカバーに入ればいいね?」


「……よろしく」


 今までとは違って上に弓を構えるノエルちゃんにスライムが近づかないように、俺たちの周りに風を広げるイメージ。


「っし、成功!」


 威力は今までとは違ってかなり低くなっちゃったみたいだけど。吹き飛んだけど、消えてないスライムも結構いるみたい。だけど近づいてこなければとりあえずはいいしね。


「……合図は放った。下がる」


 ノエルちゃんが放った矢は数メートルくらい飛んでいって、花火のような音を出した。すぐさまそれに気付いたのか、クリスとライラもスライムから離れているのが見えた。


「こっちに来るスライムはどうする!?」


「……周りを吹き飛ばさない程度の威力で一掃して」


「む、難しいなぁ!」


 とはいえ精霊たちに協力しっているわけだし、精霊たちの住処を必要以上に荒らすわけにはいかないもんな。皆、できる? よし、任せるよ!


「よし、成功した!」


「……すぐ撤退!」


 そのままクリスとライラの二人と合流して、スライムの動きを確認しつつ森の入り口まで戻る。ゴブリンと同様、追ってこなくなった。


「ふーっ! 何あれ! 倒しても倒しても、次から次へとっ!」


「いくらスライムとはいえ厳しいですね……全然数が減っているように思えませんでした」


「……こっちも同様。リョクが倒した数は確実に三桁。だけど減ってなかった」


 安心できるところまで戻ってきたと感じた俺たちは一度腰を下ろして、話し合う。といっても結局キリがないということしかわからない。エルたちから聞いたことは言うべきなんだろうか?


「あー、見えてた見えてた。渡り人って本当にすごいんだね。スライムが消えてく姿がよく見えたよ。ギルドカード見てみれば何体撃破してるかわかるから見てみてよ」


 ……そういえば魔物を倒すとギルドカードに記載されるんだっけ? それ見れば影の魔物だかわかったりするかな? と、思ったけどゴブリンの依頼の時の報告でギルドカード見せたけど、わかんなかったんだからダメか。


「あたしは七十二体。ライラが三十一体。二人は?」


「……ボクは五十六体。カバーに回った結果。恥じる数じゃない」


「いや、誰も責めないから」


 俺もギルドカードを見てみる。えっと、スライム討伐数……


「六百四十五体?」


「……は?」


「……さすがに予想外」


「す、すごいですリョクさん!」


 三人の数から比べたらありえない数だった。なんでこうなってるんだ?


『あの子たち、相当張り切っていたみたいですね。主様が見ているところ以外でも魔術が発動していたみたいです』


 ……そ、そんなこともあるんだ? 正直カードが壊れたと思われてもおかしくないんじゃないだろうか。


「ギルドカードの故障? 聞いたことないけど……とにかく、カードの確認もそうだけど、あまりにハイペースでの戦いだったから一度街に戻ろうか。本当はもっと長く戦っているはずだったけど、消耗が激しい。ライラとノエルは魔力が持たなくなっちゃうよ」


「そうですね……いざという時のために傷を癒せるだけの魔力は確保しておきたいですし、賛成です」


「……ボクも賛成。もう一回あの群れに突っ込むのはちょっと嫌」


「三人がそう言うのであれば俺も問題ないよ」


 正直魔力自体は余裕がありそうな感じがするけど……多分エルとシディアの名前を付けた時の方が魔力使ってる気がするし。


「それじゃ一回戻るってことで! 帰るまでが冒険だからね? 油断はしないように!」


「了解」


 クリスは笑いながら俺に対してそう言ってきた。そうだよな、これで終わったと思って油断しているとなにがあるかわからないからな。三人は慣れていても、俺はそうではないんだし。


 結局そのまま何事もなく街に戻ることができたわけだけど。さて、あまり時間は経ってないけど、ファングさんにも報告していかないとな。光太郎はどうしてるんだろうなぁ。

光太郎の目線は挟みません。

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