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精霊王の加護を受けし者  作者: 柊馨
異常事態
20/25

第十七話 大量発生

前回の続き。異常発生。

「おらぁっ!」


 光太郎がゴブリンを吹き飛ばす。持っているのは剣なのに、斬るよりも殴ることに使っているようだ。というか、そのパワーが出鱈目だ。自分よりも小さい魔物だからって、片手で剣を振って、吹き飛ばすって……


「よっ、と」


 俺は俺で精霊たちに使っていた身体強化の魔術と吹き飛ばしの魔術を併用して攻撃している。ライラが使っていたような名前のある術はまだ使えないので魔力を解放して吹き飛ばしているだけ。やっぱり早急に教えてもらわないとダメだな。


「はははっ! 楽勝だなぁっ! 緑!」


「俺は光太郎ほどの余裕はないぞー」


 と軽口を言い合いながらもゴブリンを倒していく。さて、なんで二人でゴブリン退治なんかを始めたんだっけ?


 一時間と少し前にファングさんとの話を終えて、ライラを探してみたけど、もうすでに依頼を受けて出かけてしまった後だった。


 まぁそれはそれで仕方ないので受付で簡単な依頼でもないかと探そうと思ったら、光太郎がぜひ討伐系の依頼にしようぜ! などと言い出して、ランクに見合ったものはないかと確認してみると、ゴブリンの討伐がよさそうだ、という話になり、受けた次第だった。


 内容は五匹の撃退でよかったのに、周りにはゴブリンだらけ。光太郎はもう十匹以上倒してるし、俺も五匹くらいは倒してる。なんでこんなに多いんだろう?


 ちなみにここは街から少し離れた平原だ。ゴブリン以外の魔物はいないみたいだけど、近くに巣でもあるんだろうか? ほかの冒険者がいてくれたらよかったのに、周りをどれだけ見てみても俺たち二人とゴブリンたちしかいない。


「あー! こいつら何匹いんだろうなぁっ! 雑魚いくせに数だけは多い!」


「確かに。なんでこんなに数が多いんだろうな。無事に戻ったらファングさんに報告したほうがよさそうだ」


「無事ってか! 楽勝だろっ! こんな雑魚ども何匹いようが楽勝だぜ!」


 しかし倒しても倒してもキリがない。これは一度引いたほうがいいかもしれない。俺たちは渡り人でも最低ランクの冒険者でしかない。圧倒的に経験が足りないのに、無理をするのは……


「光太郎! 一度引こう! 二人でやり続けるのは無謀だ!」


「あぁっ!? ちっ、先輩が言うなら従うぜ、仕方ねぇ……」


 だから先輩と呼ぶなと言うのに。まぁ今回従ってくれるならむしろありがたいか。


「とりあえず大きいのを放つから離れてくれ!」


「りょーかい!」


 光太郎がゴブリンから離れたのを確認してから、火の魔力と風の魔力を解き放つ。前の練習で暴発した時のようなイメージで、ただし暴発じゃなく確かな攻撃として。ゴブリンたちを数匹巻き込んだ爆発を起こした。


「よし、成功!」


「おおー。魔術ってやつはすげぇのな!」


 ある種ぶっつけだったけど成功してよかった。光太郎も驚いたように笑っている。とりあえず今のうちに離脱。


「よし、街へ戻ろう」


「おーう。しかし若干物足りねぇぜ」


「俺は疲れたよ……」


 倒しても倒しても、次のゴブリンが襲い掛かってくる。今回は無事逃げられたからいいけど、ゴブリンなら楽勝だから、と思って挑むと危険な感じだ。


「とりあえずギルドへ行こう。報告しなくちゃ」


「了解了解ー」


 街へ戻ってきても、ゴブリンは追いかけてくる様子はなかった。巣があって、そこからは離れるつもりがなかったのか。それとも街には数多くの人がいるから襲いに来ないか。それだとすると知能があるってことになるけど、魔物ってそういうものなのか?


 ギルドへ入ってみるといつもより慌ただしい。こっちと同じでなにかあったか?


「あ、リョクさん! リョクさんは大丈夫でしたか?」


「ライラ? いったい何があったんだ? こっちはゴブリンの討伐依頼を受けたんだけど、その数が異常で戻ってきたんだけど」


 ちなみに隣のこいつは同じ渡り人の光太郎だ、と紹介しておく。ライラは二人も渡り人がこの街に来たことに驚いていたが、素直に喜んでもいた。


 光太郎も適当にあいさつしていた。あんまり興味はなさそうだなぁ。


「えっとですね。今日は森へ薬草の採取に行っていたんですけど、大量のウルフに襲われまして……幸いクリスとノエルちゃんも一緒だったので逃げられたんですけど」


 そっか。俺と初めて会った時のように一人だったらやばかったわけだ。そういえばその二人はどこにいるんだ?


「二人ですか? 二人は今ギルドマスターさんへ今回の件を話に行っています。今回の件で魔物の大量発生が各地で起こっているみたいで、わたしは怪我をした人の回復をしてました。今はちょっと落ち着いてきてますけど……」


 大量に発生している魔物についてはもともとランクの低いものだけが今は確認されているらしく、大きな問題にはなっていないみたいだけど、今後どうなるかわからないからその大量発生に出会ったパーティーはファングさんへの報告をしているらしい。


 エイミさんに俺たちも大量発生にあったことを伝えてみたところ、順番にファングさんに会ってもらってるからちょっと待っていてほしいと言われた。


「お、リョク、やっほー。あれ、知らない人もいるね?」


「……疲れた」


 待っているとクリスとノエルちゃんが戻ってきた。結構長く話してたみたいだな。


「お疲れ様。なんか大変だったみたいだね」


 軽くねぎらいの言葉をかけて、ライラ同様光太郎のことを紹介しておく。光太郎はまたも適当なあいさつだけを返す。なんか待っている状態が嫌みたいで少しイライラしているようだ。


「いやーほんとに大変だったんだよ? 薬草採取してたらウルフが五匹くらい襲ってきたから撃退したんだけど、そのあとすぐに倍以上のウルフが襲って来てさぁ」


「……ボクの弓で足止めしつつ逃げた。追ってはこなかった」


 エルたちは大丈夫だろうか? 昨日は特に森に異常はなかったように感じられたけど、本当に何があったんだろうか? シディアに小声で聞いてみると、やっぱりわからないという返答だった。エルはおそらく無事だろうけど、魔物の大量発生の原因は予想がつかないらしい。


「とりあえず三人とも無事でよかったよ」


「そっちもねー。やっぱ渡り人ってのはすごいもんだねー」


「あんな雑魚何匹いようと楽勝だったぜ」


 光太郎がしゃべったけど、やっぱり不機嫌な様子だ。いったいどうしたんだろうか?


「リョクさんー、コウタロウさんー、順番でーす。ファングさんの部屋に行ってくださーい」


 おっと順番が回ってきたようだ。


 俺たちは軽く挨拶してファングさんの部屋に向かった。一体今回の件は何が起こっているんだろうか?

やっぱり短くなってしまうなぁ。

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