第十四話 恋する乙女と闇の精霊
買い物後の話。今回も短いです。
三人と一緒にギルドへ戻ってくる。結局戻ってくるまで、ライラは二人にからかわれ続けていた。ときどきこっちへも矛先が向かっていたようだったが、ライラはかわいいよね? とか、いいお嫁さんになると思わない? とか聞かれても困る。とりあえずかわいいのは確かなので、そう言ったらライラは顔を赤くして照れていた。
「さてと、三人ともありがとう。おかげでいろいろと買い物ができたし、楽しかったよ」
なんかこの三人のやり取りを見ているのが、すごく面白い。
「いえ、リョクさんのお役に立てたなら嬉しいです!」
まだ少し顔の赤いライラそう言ってくれる。ずっと赤いままだけど大丈夫だろうか? でも確かに、ずっとからかわれていたら恥ずかしいか。
「あたしも楽しかったし、父さんの店から呪いのナイフがなくなったし。むしろこっちがお礼をいいたいくらいだよー」
クリスはそう言う。確かに呪われているものが店にあるなんて、店としてはそうとうまずいよな。俺にとっては呪いじゃなくても、他の人には呪いだったんだろうし。
「……回復アイテムは、活用すること」
ノエルちゃんは結局ずっと回復アイテムの重要性を説いていた。なんでも小さい頃、大けがをした際にアイテムで回復したことがあり、それ以来ずっと持ち歩いているんだとか。
今も小さいとかは言ってはいけない。きっと。
「あたしたちはこの後簡単な討伐依頼を受けるつもりだけど、リョクも行く?」
「……一緒に行くなら、ボクの弓を見せてあげる」
「リョクさんも一緒に行きましょうよっ! リョクさんなら大歓迎ですから!」
討伐依頼かー。ほんとなら一緒に行きたいところだけど、この子のこともあるし。
……ライラはそういうこと言うからからかわれるんだと思うんだけど、自覚はないのかな。
「三人には悪いけど、このナイフのこともあるし、今回はちょっと遠慮させてもらうな。こっちの都合にだけ付き合わせて、本当に申し訳ないんだけど……」
「そんなに気にするもんじゃないよ? こっちだって楽しかったんだしさ。それに今回はってことは次回があるんでしょ? だったら今度は時間のあるときにしようってことで!」
俺が謝ると、クリスがそう言ってくれる。確かに今日は結構時間を使ったからな。この後に依頼を受けるよりは、また別の日のほうがいいと思う。
この三人はこれから依頼を受けに行くみたいなのは、変わらないようだけど。
「それじゃリョクさん! 今日は本当に楽しかったです! また一緒に出掛けましょうね!」
「あぁこっちも楽しかったよ。今度は依頼を一緒に受けたいと思うからよろしく頼むよ」
笑い合いながらこの場はわかれる。うん、今後も楽しみだな。
「ライラってばほんとに、惚れてる?」
「……たぶん。自覚があるかはわからないけど」
クリスとノエルちゃんがそんなことを言っていたのが聞こえたけど、あえて聞こえないふりをした。恋愛とか、俺にはよくわかんないしな……
宿へ戻り、軽く昼食を済ませた後部屋へ戻ってくる。
「やっぱり君にも名前はないのか?」
ナイフを手に取り、鞘から抜いてみる。刀身も見事に黒い。
――うん。僕は所詮中位精霊だし……――
やっぱりそうか。閉じ込められているから確かなものはわからないけど、感じられる力はエルよりも低いみたいだし。
名前を付けてあげたいけど、またエルに怒られそうだから、とりあえず君と呼ぶことにしておこう。
「君は何の精霊? 俺は闇だと思ったんだけど」
別にナイフの刀身が黒いからとかそう思ったわけじゃなく、なんとなく感じられる力がそうだと思っただけだ。
――正解。僕は闇の中位精霊だよ――
「やっぱり闇か。俺には闇属性の適性もあるみたいだから、そっちのほうで考えていけば、解放できるか……?」
――あわてなくてもいいよ? お兄さんが話し相手になってくれるだけでも、今までとは全然違うもん!――
「そう言ってもらえると、君と出会えてよかったって思えるよ。俺も一人でいるよりも誰かといるほうが楽しいしな」
この子はずっと孤独に耐えていたんだろうな。俺には家族がいたから孤独ではなかったけど、病室で一人でいるときはすごく寂しかった。
「とはいえ、助けると約束したからにはどうにかするから。一応当てもあるから、明日はそっちをあたってみよう」
――うん! ありがとう!――
もちろん当てとはエルのことだ。精霊のことは精霊に聞いてみれば何かわかるかもしれない。元の世界でも、こっちの世界でも、誰かを頼りっぱなしだけど、何もできないよりはずっといい。
この子と話していたらいつの間にか二時間近く経っていた。とりあえず軽く談笑しながら、俺は手紙を書き始める。茜や両親宛の手紙だ。
俺は今までのことを書いていく。神様のこと。森で精霊たちと出会ったこと。ライラっていう女の子が助けてくれたこと。事故みたいなものだったけど、エルという精霊と契約してしまったこと。呪われているというナイフ……この子のこと。
「ふぅ。あとはこれを神様の孫っていう人に渡せばいいのか」
手紙を書き終え、一息つく。書いている間に三時間くらい経っていて、この子は疲れたみたいで寝てしまった。精霊も寝るのか?
「全身黒尽くめの人らしいけど、それっぽい人は今まで見てないしなぁ」
神様の孫っていうだけあって忙しいんだろうか? 近いうちに渡せるといいんだけど。あと手紙と一緒に写真を撮って入れることとかはできないんだろうか? もし可能なら、俺が生きているっていう証明もしやすくなると思うんだけど……
「でも、やっぱり無理な気はするんだよな……」
まずこっちにそんな技術があるのかもわからないし、茜が写真等をなにも入れていないから、そういったことはダメなのかもしれない。
「ま、それは会ってから聞いてみればいっか」
結局考えてもわからないしな。俺は手紙を仕舞い、置いておくのも心配なのでナイフを手に取り、夕飯を食べに行くことにした。
明日はまたエルに会いに行くわけだし、はやめに寝ておこう。
なんだろう。エルに会いに行くと思うと、すごく楽しみになってくる。うん、早く明日にならないかな。
やっぱり精霊が場にいると、書いてて楽しいです。




