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精霊王の加護を受けし者  作者: 柊馨
渡り人 リョク ヤクモ
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第十三話 呪われたナイフ

主人公が見つけたものについての話。

 見つけたのナイフは黒い鞘の中に仕舞われているようだが、ぽつんとこのナイフだけ置いてあり、近くにはほかの装備品なんかはない。これだけ異質だ。


「すいません、このナイフなんですけど……」


「っ! 待ちな坊主! そいつはダメだ!」


 そのナイフを手に取ろうとした瞬間、店主さんに止められてしまった。


「あー、それはダメなんだよリョク。父さん曰く、それは呪われた武器なんだって」


「その通りだ。こいつは呪われていてな。手に取った奴を切り刻むのさ。死者が出たって話は聞いてねぇが、冒険者生命を絶たれたって奴はいる」


 うーん……俺にはそう危険なものには見えないんだけどな。というか呼ばれているというか、求められているというか。これは精霊、か?


「リョクさん、やめておきましょうよ。すごい怖い感じがしますから! ほら、この杖とかどうですか?」


 ライラは何かを感じるのか、必死に俺をそのナイフから遠ざけようとしている。クリスもやめたほうがいいと言っている。ノエルちゃんは……


「……リョクが、手に取りたいのならば取ってみたらいい。きっと、大丈夫」


 なんと、肯定してくれていた。ノエルちゃんにはなにか大丈夫だと言えるものがあるんだろうか? なんにせよ、俺はこのナイフがいいと思う。


「ノエルちゃん! ダメだよ、呪いのナイフなんて!」


「やめといたほーがいいよ? あたしが生まれる前からこれここにあるけど、呪いが怖くて捨てることすらできないんだし」


 というか手に取ると切り刻むのに、この店にあるのはおかしくないか? それを聞いてみると。


「そいつは俺の師匠が持ってきたもんだ。といっても師匠がつくったもんじゃないらしいがよ。なんで、こんなもんを持ってきたんだかはわからんが……」


 ということらしい。


「もしダメでも自分の責任ですから。手に取らせていただけませんか?」


 俺は引かない。だってこいつからは……声が聞こえる気がするから。精霊の声が。


「…………わぁったよ。だったら試しに取ってみな。ライラちゃんはいざという時の回復の準備をしておいてくれよ」


「わ、わかりました……だ、大丈夫なんですよね?」


「俺が知るか。渡り人ならもしかしたら、ってのはあるがよ」


 店主の許可は得た。ライラはいざの時のために近くに来ている。危険なものならむしろ離れていたほうがいいとも思うけど、仕方ないか。


「では、お借りしますね」


 俺はそのナイフを手に取る。そしてその瞬間。


「っ!」


「リョクさん!?」


「ちっ! やっぱ無理か! すぐにそれから手を放せ!」


 斬られた。おそらく魔力によるものなのだろうが、数か所に痛みが走る。


「いえ、大丈夫です。ライラ、回復もいらないから、今はちょっと待って」


 慌てて回復魔術をかけてくれようとするライラを止め、聞こえてくる“声”に集中する。


 ――助けて、ここから、出して、もう、暗いのは、嫌だ!――


 やっぱり、だ。このナイフには精霊が、閉じ込められている! おそらく手に取った瞬間に斬られるのはその叫びが魔力による攻撃になっているからだ。


「大丈夫、落ち着いて。助けるから、絶対に助けてあげるから……まずは落ち着いてくれ」


 小さく呟くような声で、俺は呼びかける。近くでライラたちが何かを言っているようだけど、聞こえない。今はこの子の声しか聞こえない。


 ――お兄さん、誰? 助けてくれるの? 僕の声が、聞こえるの?――


「あぁ、聞こえる。俺ならきっと、助けてあげられるから。俺についてきてもらってもいいかな?」


 実際に助けられる力が俺にあるのかはわからないけど、助けてあげたいと思う。なんで閉じ込められているかは知らない。でもこの子はいい子だ。優しい子だ。俺はそう思うから、絶対に助けたいと思う。


 ――うん、ついてく! お兄さんならきっと僕を助けてくれるから!――


「あぁ、よろしくな」


 ふぅ……と一息つく。今更ながらライラに肩をつかまれていることに気づいた。


「あれ、ライラ。どうした?」


「どうしたじゃありませんよ! リョクさんがそのナイフを持ってから三十分もまったく動かなかったんですよ!? わたし、心配だったんですからね!」


 見ると、ライラは泣いていた。俺はちょっとだけしか精霊と話していなかったと思ったんだけど、まさか三十分も経っていたなんて。


「そっか……ごめん、心配かけて。でも大丈夫だから」


 泣いているライラの頭を優しく撫でる。そうするとちょっと落ち着いたようだ、よかった。


「いやー! 本当に見せつけてくれますな、お二人は!」


「……らぶらぶ?」


 ……あ。二人もいたんだったよ。なんか忘れてた。


「うぅ……そんなんじゃ、ないってば」


 泣いていたところだったからか、二人への言葉にも力がない。そんなライラの頭をもう少し撫でてあげる。


 これじゃ冷やかされても仕方ないのかなぁ。


「しかし驚いたぞ。まさか呪いのナイフを手に取ってほとんど無事とは。しかも持ったままにも関わらずだ」


「えぇ。もう問題はありませんよ。このナイフ、いくらですか?」


 精霊にはついてきてもらうことで了承を得たけど、よく考えてみたらこのナイフは店の売り物だった。そのまま持って行ったらまずいよな。


「あー、金なんかいらねぇよ。それの対処をどうしようかとすら思っていたんだからな。持って行ってくれるならむしろ歓迎するさ」


「いいんですか? もしそうならありがたくいただいてしまいますけど……」


 いいのか? 素人目から見てもこのナイフ、結構高そうな感じがするんだけど。


「いいさ。もともと仕入れたものですらねぇんだ。なくても変わらねぇんだよ、その辺はな。ま、そういうなら杖も見て行ってくれよ」


 そうだった。杖を見ていたのを忘れていた。とりあえず見て回ろう。


 結局、手に馴染んだ木の杖を一つ購入し、店を後にした。ちなみに銀貨二枚と、木の杖にしては割高らしい金額だった。でも手に馴染んだのがこれしかなかったので仕方がない。


 ついでに、とりあえずの買い物が終わったのでギルドに戻ることにしたのだが、ライラは二人にからかわれっぱなしで、終始顔を赤くしていた。


 そんな三人を見て、やっぱり俺は楽しく思うのだった。

文字数が安定しない……今回はかなり少なくなってしまいました。

なんかライラがヒロイン化していくなぁ。

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