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精霊王の加護を受けし者  作者: 柊馨
渡り人 リョク ヤクモ
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第十二話 装備を整えよう

三人娘との話はまだ続きます。

「まずは何を買いに行きますか?」


 ギルドを出てライラにそう聞かれる。とりあえず買うことが決定してるものはあるので、それを……


「まずはやっぱり装備品でしょ! 魔術タイプらしいから武器はあとでもいいかもしれないけど、防具は必須だよ!」


「……それよりも先にアイテムポーチと消耗品。回復アイテムは必要」


 ……伝えようと思ったけど、二人に遮られた。俺が聞かれたんだよな? 二人に聞いたのとは違ったよな?


「もう! 二人とも! わたしはリョクさんに聞いたの! お金だって際限があるんだからまずは買いたいものから買うべきだとわたしは思うんだけど!」


「だからこそでしょー。これから依頼を受けるなら魔物とも戦うんだから、生き残れる可能性をあげるべきでしょ」


「……その意見には同意。でもそれならやっぱり回復が必要」


 結局三人が言い合いを始めてしまった。うーむ、話が進まない……


「リョクさんはどう思いますか!」


「やっぱ装備品買いに行くよね、まずは」


「……雑貨屋」


 と、数分言い合いが続いたと思ったらやっとこっちに話が振られた。とりあえず俺がまず買いたいものは……


「まずそれだったら雑貨屋に行きたいんだけど、いいかな?」


 雑貨屋になら売っているだろう。まず買いたいものは紙とペン。茜に手紙を書くために必須なものだし。


「……勝利」


「ちぇー、なんかくやしいなー」


「二人とも、そういう話じゃないでしょ……はぁ……」


 ノエルちゃんは俺の言葉を聞いたらなぜか誇らしそうにしているし、クリスは笑いながら舌打ちしてる。ライラは、なんというかお疲れさまって感じだな……うん。


「あー、ノエルちゃん? 雑貨屋とは言ったけど、別に回復アイテムとかが欲しくて言ったわけじゃないよ? あとアイテムポーチって何?」


 まぁ名前の通りアイテムを入れるポーチってのはわかるんだけどさ。


「……なんと」


「えっと、アイテムポーチっていうのはですね、その名の通りアイテムを入れるポーチなんですが、小さい見た目に反してたくさんアイテムが入るポーチなんです」


「中がどうなってるのかはよくわかんないんだけどさ、使用者の魔力を微量消費してその容量を増やす仕組みみたいなんだよね。もちろん限度はあるけど、結構入るよ?」


 ノエルちゃんは無表情なのにがっかりしてるのがわかる雰囲気を出して、答えを教えてくれなかった。そんなにショックだったの?


 ライラとクリスがどういうものか教えてくれた。なるほど、それさえ持っていれば冒険に必要なアイテムなんかを沢山持ち運べるわけか。それは確かに必要そうだな。


「うん、だいたいわかったよ。ありがとう。とりあえず雑貨屋に行くってことでいい?」


 その俺の言葉に三人は了承してくれたので、雑貨屋に向かう。と言っても歩いて結構すぐのところにあったんだけど。


「ここが雑貨屋になりますね。そういえば何を買うつもりだったんですか?」


 っと、そういえば言ってなかった。


「あぁ、紙となにか書くものが欲しくってね。雑貨屋ならあるよな?」


 なかったら困る。とても困る。茜は怒るだろうし、泣くかもしれない。


「あるけど、それがまず欲しかったもの? 何に使うつもりなのか知らないけど、あたしが取ってきてあげるよ」


「……ボクは消耗品を見繕ってくる」


 それを伝えたらクリスが取ってきてくれるとのこと。あと、ノエルちゃんはどれだけ俺に回復アイテムとかを買ってほしいの?


「二人とも行っちゃいましたね……まったく自由なんだから」


「はは、まぁ俺は付き合ってもらってる立場だし、助かってるよ」


 俺一人じゃわからないことだらけだからなー。


「リョクさんはほかにここで何か買うつもりのものはありますか?」


「んー、そうだなぁ」


 そう聞かれたので、何となく店内を見てみる。


「お、なんか綺麗な石だな、これ」


 そうして目についたのは綺麗な石だった。真っ白い、透き通っている石。


「“ポルト石”ですね。お守りの石ですね。今は白いですけど、これに魔力を籠めることによってそれぞれの色に変わるんです」


「へー……」


 一つ手に取ってみる。なるほど、なんかちょっとした力を感じる気がする。


「うん、これ買おうかな」


 なんとなく見ているうちに買ってもいいかな、と思えたので購入を決める。


 そうこうしているうちに二人とも戻ってきたので清算を済ませる。銀貨三枚がなくなった。やっぱりポーチが高かったようだ。ポーチは腰につけることのできるタイプのようで、動きを阻害しない、使いやすいものだった。


 あとはそれにノエルちゃんが持ってきてくれたポーション等を入れておく。おお、本当にすんなり入った。不思議なものだな……


「じゃ、次こそは装備品だね! だよね!」


「うん、それで頼むよ」


「よしっ! じゃあ行こうか!」


 今度は装備品ということで、なぜかクリスが張り切りだした。なんなんだろうか……


「クリスの実家が武器や防具を売っているお店なんですよ。だからそこで買うことになると思います」


 俺が不思議に思っているとライラからそう言われた。なるほど、じゃあしっかりと売上に貢献しないとな。


「あ、ライラ」


「はい、なんでしょうリョクさん?」


「これ、あげるよ」


 俺は水属性の魔力を籠めたポルト石を渡す。


「え! い、いいんですか!?」


「ああ。まぁ安物で悪いんだけどさ、お礼、かな?」


 ライラにはこの世界に来てからお世話になっているから、ちょっとしたものだけどお返しができたらな、と思っていた。


「わ、わ、わたし嬉しいです! 大切にします!」


「ははは、喜んでもらえたなら俺も嬉しいよ」


 ライラの笑顔を見ると、買ってよかったと思える。


「ちょっと二人ともー? はやく来ないとおいてくよー?」


「……見せつけるならボクたちは消えるけど」


「見せつけてないよ! 行きましょうか! リョクさん!」


 ライラに手を引かれ、二人を追いかける。楽しい時間だなぁ。次は装備品か。お金が足りるといいけど。











「おういらっしゃい。ってクリスじゃねーか。今日はどうしたよ」


 出迎えてくれたのは髭をたっぷり生やしたおじさんだった。


「あ、父さん。この人渡り人なんだけどさ、今日は装備品を買ってくんだって!」


 あぁ、この人が父親なんだ。全然似てない……


「あん? 渡り人ねぇ。まぁなんでもいいが、何を使うんだ?」


 渡り人でも気にしない人なのか。いやありがたいと言えばありがたいか。しかし何を使うかと聞かれても、武器にしては何も使った経験がないし……防具も何にしたらいいものか。


「リョクは魔術師タイプだからね。まずは防具だけど、軽めのもので整えたらいいと思うんだよ」


「そうか。たしかに見た感じ強そうには見えねぇしな。だったら革製のもんで一式整えてみるか。金があればもっといいもんもあるが、無理だろ?」


「そうですね、それでお願いします」


 重いものだと動けなくなりそうだし、実際お金はそんなにない。いくらくらいするものかは知らないけど、雑貨屋でも結構かかっちゃったし。


「んじゃ、これらだな。大きさを確認するからこっちに来てくれ」


 店内の小さいスペース。おそらくここが着替える場所なんだろうけど、そこで渡されたのはまさしく革、なものたちだった。


「革の胸当てと革手甲、革脚甲だ。軽いが結構丈夫ないいもんだぜ。一式で銀貨三枚だ、いいか?」


 それぞれつけてみると大きさはぴったりだった。見ただけで大きさがわかったんだろうか、すごいな。料金は相場がわからないけど、大丈夫だと思う。


「はい、これでお願いします」


 とりあえずお金を渡して、三人の元へ戻る。


「一気に冒険者らしくなりましたね! かっこいいです!」


「ま、父さんの店の品物だから当たり前でしょ」


「……普通、だね」


 三人からの言葉はそれぞれらしいなーと思えるものだけど、ノエルちゃん、普通って何さ……


「さてあとは武器か? 坊主は魔術師だってなら杖だな。杖に関しちゃこっちじゃ決められないから、店の中のものでこれだ! ってもんを探してくれ」


 なんでも杖は魔術を使う際にそれを補助してくれるものらしいのだが、自分の魔力に合わないものを使ってしまうと逆に阻害されてしまうらしい。普通は見てみたり、実際に手に取ってみれば自分に合うものはなんとなくわかるらしいので店内をちょっと見てみる。


「……ん?」


 その中で俺は一つ、気になるものを見つけた。杖じゃなくてナイフのようだが、これだけ何かが違う、そう思えた。何かを訴えている。そう、感じた。

ちょっと変なところで切ってしまいました。

しかし場の人数が増えると難しいですね。

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